2006年06月24日

「ゲルマーニア」コルネーリウス・タキトゥス 岩波書店

そういえば、amazonの書評にもあったが「ガリア戦記」とか読んでいくといつかは辿り着くであろう本の一つであることに間違いない。私も「ガリア戦記」を読んで以来、いつかは読もうと思っていた本でもある。

ただ、簡潔な表現の中に多くの含意があり、素晴らしいと言えばそうなのかも?と思えるのだが、期待していたほどではなかったというのも正直な感想である。

ガリア戦記に描かれる普遍の法則、人対人との関係で生じる『政治』や『組織管理』といった社会の縮図的なものや、それがやがて皇帝カエサルにつながる予兆など非常に多面的な楽しみがあるのと比べると、私的には本書にももうちょい何か欲しかった。

別につまらない本などではない。未だにゲルマニアに関しての基本書として、必ず挙がる本だけにあの当時の状況を考慮しても一級の資料であることは間違いない。ローマから見れば遠く離れた辺境にしては、水準以上の正確さも担保していると思うし、あまり知ることのできないゲルマン人の社会体制・風俗も興味深い。

男は戦時以外は、無為無職でふらふらしているだけなのに戦時における勇猛果敢さは、その対比において驚愕すべきものとして描かれている。また、彼らは金銀に対して、格別の価値を見出すことがないこと。普通に働いて農作別を収穫するよりも、既にあるならそれを他から奪うことの方が大切だと考えていたり、根本的な考え方の違いが記されている。

賭け事においては平気で自分自身をも対象にするほど熱中し、賭けに負ければ、闘えば勝てる相手でも約束を守って奴隷にさえなるなど、彼らの名誉やプライドなどはローマ人とは(現代人の我々とも)違うことを強く感じる。

その他諸々のことも書かれているが、あまりに異質過ぎて一時的に武力で制圧することができても継続的にその支配を維持することが、本質的にできない存在と認識している点は、やはり鋭い指摘と言わざるを得ない。

事実、傭兵や服属民として徐々にローマ帝国との関わりを深めつつも最後まで彼らは(本質的な点で)ローマ化せずにいた特異な存在であり、ローマ帝国崩壊に導く恐れが漠然と予見されている本書は、その意味では警世の書でもある。

まあ、そんな堅いことを言わずとも、短文で読み易く一見しただけでも理解し易いので読んどいてもいいかもしれない。おそらく本当はもっと深い味わいのある本みたいなのですが、私にはそこまで理解できませんでした。

そうそう、訳注が非常に多いのも本書の特徴。これは日本人の訳者が入れたもの。研究やより良い理解には、素晴らしいのかもしれないが、結構読み難いのも事実。どうせなら、巻末にまとめて欲しかった。

こういう本を題材に、熱意のある先生に講義で解釈してもらうと楽しいかも。放送大学とかもやってみたい気がする。そういえば、e-learningってどこまで実用化されてるのかな? ふとそんなことを思ってしまいました。ゲルマーニア(amazonリンク)

ガリア戦記(amazonリンク)
posted by alice-room at 01:34| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
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