としか、書きようがない。タイトルの聖杯には、端的に言うと意味はない。聖遺物でもあれば、十字架でもなんでもいいのでしょう。今回は、イギリスだし、聖杯伝説に絡めれば読者の注意を引くかなあ~というレベル。
聖杯自体に関心を持って読むと、ストレスが溜まります。先日は聖遺物が十字架だったものを読んだが、まあ、シビアに言うと同類かな?
失われた聖杯探求伝説を現代に置き換え、国家の思惑などを絡めてちょっと思わせぶりにしたものが本書。
シンプルに小説としての感想だと、地方のお金持ちで世間知らずに育ったお嬢様が父の死をきっかけに、自ら考え、行動し、歴史の闇に隠された真実を暴く人間成長ドラマ(この時点で引くなあ~)。
しかも、今まで蝶よ花よと育てられた無知な女性が、国家の駆使するプロ中のプロと互角に渡り合うというのだから、冷静に見るとかなり滑稽でさえある。確かに小説ではあるが、個人が国家に敵対して無事にいられるとは思えない。あのランボーでさえ、あれだけの武器が必要なのに、主人公の女性は、本人の努力と知性だけでそれを可能にしたというのだから、失笑を禁じえない。
批判的なことばかりで恐縮なのだが、この小説の中の主人公がかなり嫌い。自分が善良で無知であることを、己を守る武器として使い、個人的な正義を貫く為に、周りの人にいくら迷惑をかけてもかまわない(結果的にそう見える)という姿勢が大嫌い!! 自分が正義を貫きたいという個人的な欲望を満たす為に、小悪党や小市民的にささやかな悪徳と偽善に生きている人々を切り捨てる傲慢さには、某国の外交姿勢にもなぞらえてしまいそう・・・。
人は完全じゃないし、正義や努力をすること自体は素晴らしいが、その価値観を他人に強要するような(人間理解の)無知には、非常に反感を覚える。つ~か、読んでいて何故すぐこの主人公の女性を殺さないのか不思議でならなかった。一番殺し易いし、生きていてもらっては困る存在なのに・・・。
まあ、小説だからと言っても不快感が残る感じでした。綺麗な画集でもみよっ♪
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