
大いに期待外れだったと言わねばならないと思う。暇さえあれば、死体の絵画や写真集を見て過ごす、かなり危ない趣味の持ち主の著者が書く以上、内容にもそれなりのものを期待して当然だと思う。

世界中で死者を描いた図版を集めているとご自身がおっしゃられる割に本書の中で紹介される図版はかなりヒドイ!!

私は絶版のハードカバーで読んだが、本書は普通では見られない図版を紹介しつつ解説するところに意義があると思うだが、図版が小さいうえに白黒で何が描かれているのか全く分からない。この図版では、何のために載っているのか不明だし、エッセイゆえの軽い口調はどうでもいいが、個々の図版に関する説明も旅行パンフの説明に毛が生えた程度。およそ説明らしい説明にもなっていない。大変失望した。著者は自分の本の図版の校正さえせずに編集者に丸投げているのだろうか???
【目次】
ラグランジュ枢機卿のトランジ
名の知れぬ男と見知らぬ女
世の終わり、陽気な踊り
頭のなか、たとえばバルドゥンク・グリーン
残酷の報酬、ホガースの場合
老いと時
蛇とカエルと蛆虫と
墓場の安らぎ
チティパティ
牛に乗った死〔ほか〕

私は死体などは美しくないし、死体解剖なども見たいと思うこともない、至極ありきたりの感性の持ち主で他人の趣味嗜好にとやかくいう筋合いはないが、著者の語る口調はいかにも日本人的で下世話な自己卑下っぽいものを感じてしまうのは、私の偏見だろうか?
素直に自分が好きなら、好きで他の人には分からないだろうけどこれがいいんだよなあ~と熱く語るところがなくて興醒めである。自分でオタクというが、正直苦笑ものである。
タイのシリラート死体博物館やローマの骸骨寺、カタコンベ、ロンドン・ダンジョン(これはちょっと違うか?)等々でもいいじゃん。一応、私も一通りは観てきたもの。あるいは美術的な説明をするならば、もっと役に立つ話をしてくれい~。どっか他の本で読んだことのある話を表面的にさらっと話してもねぇ、しかもエッセイとしてもつまんない。こういうの嫌い。
京都博物館にある地獄絵図や九相図とかの方がはるかに面白いし、心惹かれる。だてや酔狂で道楽をやっている人をなめて欲しくないなあ~(笑)。
まあ、私自身がエッセイが好きでないのが一番の理由かもしれないが、本当に情熱と知識のあるオタクなら、私はお友達になりたいが世捨て人のうだうだ話に付き合う無駄な時間はない。
タイトル的に気になっていたので、一年以上無視していて税込み100円だったので買ってしまった。安かったのでまだ許すが、やっぱこの著者の本は合わない。私の購入リストから著者の名前は永遠に外そうっと。
※関係ないんですけど、本書の中の図版はあんまりいいのがなかったから、ローマの骸骨寺で買った絵葉書の写真を載せておきます。後でスキャンしなおそうっと。もっと綺麗だよ~(笑顔)。全部人の骨でデザインが出来ています。
屍体狩り(amazonリンク)
関連ブログ
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「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
最澄と天台の国宝 東京国立博物館
「絵金 ArT RANDOM CLASSICS」デザインエクスチェンジ
あっ、bonejiveさんも骸骨寺行かれました? 私は初めて観た時はカルチャーショックを受けました。死者の骨で子供が遊んで作り上げたような、装飾を作るという価値観が日本的な死生観の私には、大いなる衝撃でした。ほんと!
幽霊が生きていけない土地柄だなあ~と思います。
私が訪れた際には、おどろおどろしい雰囲気だと思っていましたが、それよりも宗教的な静謐さの漂う場所で、ちょっと意外でした。
価値観というのは、改めて人がその環境毎に身に付ける相対的なものだと学ばされました。