2011年06月05日

「反哲学入門」木田元 新潮社

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率直な話、哲学自体にはほとんど興味が無い私です。

でも、著者の本は一度読んでみようと思っていて、購読リストに入れていた気がする。たまたまこないだ書店で平積みになっていて、手に取り、た著者名を見てそういえばあの著者じゃんと、あまり考えずに購入した本です。

結果は大正解!

私的には、ずっと疑問に思っていた謎が本書のおかげで一つ解けました(満面の笑み)。それだけで購入金額以上の価値有り♪

そもそも去年かおととし頃、著者が日経の「私の履歴書」に連載されており、それを読んでいてその生き方や学究的な姿勢に大いにそそられ、是非、何か著書を読もうと考えたのがきっかけでした。

「私の履歴書」がかなり面白かったんですが、やはり私の面白い本を探す嗅覚もなかなかのもんだと一人悦に入っていたりする。

さて中身ですが、この世に存在するものを自然として、あるがままに受容してそれを出発点に考える日本人には、自然を超越した超自然的思考方法である西洋哲学は異質であるが故に、かつて「哲学」が存在しなかった、ということを初っ端から、述べたうえで、ずばずば切り込んでいく感があります。

「哲学」や「形而上学」という単語自体が、良く分かっていない奴が分からないまま使い始めちゃったり、定着したりした経緯などにも触れて、常識というか形式にこだわらず、より本質的な原義に遡って説明していくのは、なかなか他では見られないように思う。

タイトルには『反』というものの、うがった解釈や視点ではなく、個々の細部の説明にこだわらずに、より大きな流れで哲学の流れを捉えており、正統部分はきっちり抑えられているように感じた(私自身が、哲学自体の素養が無いので、この評価が正しいのかは不明)。

何よりも私が哲学に関して、一番関心のあるキリスト教との関わりが大変分かり易く、明快に書かれていて大変勉強になった!!

要は、私がゴシック建築と思想的背景として、中世哲学の「光の形而上学」を理解しようとして、どうにも腑に落ちなかった欠落部分を本書は埋めてくれました。

というのは、「光の形而上学」は、新プラトン主義の偽ディオニシオスを踏まえ、人は現実世界の美しいものを通して神の世界の完璧な姿を感じ取れる、としていますが、それを感じ取れるのは、人間が神により作り出されたことにより、生来備えている『理性』があるからとなっています。

この『理性』がいわゆる、通常語として使用される「合理性」や「論理性」ではなく、神が被造物に与えた神の完全性の一部、「神の理性の派生物」として理解されていることを知りました。

実は、ゴシック建築関係の書籍を読んでいたり、中世哲学の本を読んでいて、いつもここがしっくりこなくて、違和感を覚えていたんだよね。本書を読んで、ここのつっかえがようやく解消されました(笑顔)。

他にも、キリスト教の清貧に絡む動きとそれに対応する、プラトン哲学とアリストテレス哲学の教義への取り込みなど、実に、気付かされることの多い本でした。

ちゃんと「薔薇の名前」の話も出てたしね。

一読しただけでは、私の頭では十分に消化し切れていないので、今は2回目読みつつ、抜き書きメモを作成中。メモしながら読み返すと、更に勉強になることも多く、実に楽しいです。

改めて、中世哲学はもう少し勉強しなければと思いました。

じゃないと、あのシャルトル大聖堂の美しさを完全に理解できないもんね!

勉強意欲を書き立てられる一冊です。
いろいろと悩む為に哲学をやられるような人はさておき、中世美術(建築)を理解したい人ならば、その目的には、大変有意義な価値ある本だと思います。

一般の哲学好きの人には、どうなんでしょうね? 私は、思考実験的なものにはあまり興味がありませんのでなんともいえませんが、中世興味あるなら、読んどいて間違いないでしょう。
(まあ、それでも法哲学とかは好きだったりするが・・・オイ)

現物の絵やモノを観るのもいいですが、背景を知らずして、目の前のものの価値を分かることは難しい、個人的には思ったりする。

いやあ~とにかく本書は一部の人は強くお薦めします。 近代以降はどうでもいいので読み飛ばしましたが・・・・。

以下、抜き書きメモ。
反哲学入門~読書メモ
【目次】
第1章 哲学は欧米人だけの思考法である
第2章 古代ギリシアで起こったこと
第3章 哲学とキリスト教の深い関係
第4章 近代哲学の展開
第5章 「反哲学」の誕生
第6章 ハイデガーの二十世紀
反哲学入門 (新潮文庫)(amazonリンク)

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ラベル:哲学 書評 中世
posted by alice-room at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類B】 | 更新情報をチェックする
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