私の中では、漫画を書かれていた時の白倉氏と今の白倉氏は別物とみていたりする。知り合いの間ではこういう意見が結構あるけど、まあ、それは人それぞれで違うから・・・。
少なくともこの作品は、私が大好きな頃の白倉氏の代表的な作品の一つ。雨降って温泉に行く気がなくなったので、ダラダラと漫画を段ボールの底からひっくり返して読んでます。
でもって、ようやく作品について。
華奢でまるで折れてしまいそうにか弱い少女と現実の中で自分の姿を見つけられない少年が主人公。二人は家族でありながら、お互いに一番近過ぎる存在を愛の対象にしてしまうのだった・・・。
やがて、発覚する事実「二人は血がつながっていない」、また、彼らを取り巻く環境が次第に変化していく。何物にも捉われず、自分達が相手を一番大切にしたいと思う気持ちとは裏腹に、彼らは『選ばれた存在』であった故に、汚れた大人の世界に翻弄される。
純粋で正直で、美しいままでいることを許さない。否、許せない歪んだ人々の欲望があまりに世相を映し過ぎていて、寒々しさを感じざるを得ない。あえて事件名は挙げないまでも白倉氏が描く世界は、現実の日本の縮図であり、また、日本が向かいつつある救いようのない『穢れた病んだ世界』であることを感じる。
「セーラー服」などという俗な言葉をあえてタイトルにする一方で、微妙な時期の少女や少年が有する非常に不安定な心理状態をこれほど適切に表現しえた作品も珍しい。だが、この人の作品は暗いんだよね。救いようがなく、実際、最後まで救われないストーリーも多い。この作品もかろうじてbad eindingではないが、微妙なところだし。(ちょっと前に紹介した奥瀬サキ氏の作品と表面上は全く違うんだけど、底流に流れるものは同類かと思われる。)
でもね、中高生の時について漠然とただ生きていくことについて、真剣に悩んだことのある人には、共感を覚えること間違いなしでしょう。それなりに歳をとって、結婚して子供がいたりすると、とてもじゃないがこんな感覚や感性を維持していけませんけどね。
そして、この感覚のままで大人になると引き篭もるか、「社会人」とか「ビジネスマン」という仮面を被って二重生活を送るしかないでしょう。いるんだよねぇ~、実際に。
でも、そういう人に惹かれてしまう私もなあ~。もういい加減、理性を持って相手を選ばないと、自滅するばかりなのに・・・。だ・け・ど、そういう女性好きなんだよねぇ~(苦笑)。あっ、どこかにそういう人いましたら、御連絡下さい(って、オイオイ)。
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