内容は99%共感を覚えます。
資源やら何やら、ないない尽くしの日本が国家として世界に伍していくには、各種産業の根幹を支える大切な分野であり、知識集約型産業であるソフトウェアが勝ちうる可能性のある分野であり、ソフトウェアをもっと大切にしなければいけない!
そして今も刻一刻と、日本の優位性は失われ、もうすぐ日本市場という特殊性に守られたぬくぬく環境は世界競争の中に投げ込まれ、日本のなんちゃってSEなんか淘汰されちゃうぞーという血の叫びが書かれていたりします。
技術オタクは要らないとか、実はたいした能力がないのがほとんどで営業もできない、自分の給与分相当の経済的価値を生み出せない、と言ったのは、まあ、どこでも見られるお話です。
私が何社か経験したITベンチャーで、システム屋さんで仕事らしい仕事ができる人なんて、ごく一部を除き、まあほとんどいなかったですから。本書でも挙がっているような自分の知っている狭い知識や嗜好にこだわり、大局的な会社の利益に貢献するか否かの判断尺度を理解せず、逆に会社的にはマイナスになりかねないことをしようとする人も結構いたりするのがシステム担当者としていたりします。
それもあって、システム担当者に必要以上に警戒感を抱いている経営陣も結構、いたりする。まあ、聞いてみると高価なシステム購入して全然使わなかったり、かえって業務効率を落としてしまって、現場から総スカンくらったりね。その手の話もよく聞きます。
まあ、現場は新しいものに対する拒否反応が大きいのが常なので、どうしてそれが必要なのか、その辺の事情を周知徹底し、理解してもらって、協力を取り付けるまでの根回しも相当の精力を要するところなんですが、その辺を嫌う人多いですからねぇ~。
本書の場合は、客先常駐型(?)らしいので社内SE系の話とは別ですが、現場にどこまで溶け込んで、必要な情報を得られるか、また協力を得られるかってのは、一緒ですね。
ずいぶん前から、コンサル営業、ソリューションビジネスなんて言葉が出回ってますが、そんなもの、はるか昔から仕事の基本で、SEやプルグラマーは業務知識やコスト感覚など知らなくていい、な~んて寝ぼけたこと言っていられたのは、高度経済成長期の余韻ならぬ、バブルの余韻を引きずった頃限定の話でしょう。
顧客の欲しいものを提供する事で業務効率を改善し、その付加価値によって、妥当な代価を獲得する。これ以上の王道はないんですけどね。
それはどんな仕事でも当然至極なわけで、その付加価値を生み出す手段としての技術には、価値があるけど、それに妥当しないものは、企業が評価する必要はないでしょうね。
実際、本当に勉強している技術者もたくさんいるんでしょうが、それが売上に繋がらなければ、企業的には無駄な努力なわけで・・・・。とは言いつつも、どれが無駄でどれが価値を生み出すか、試行錯誤を経て、多くの無駄を経なければ、本当に有用なものを見出せない、身に付けられないというのもまた、一面の真理であったりする。
その辺も本書の中で、上司が部下に権限委譲し、ルーティンで回る仕事を振る一方で、上司自身は新しいものを生み出していく必要も触れられていましたね。
基本、本書で書かれているようなものは、どこまで出来ているかは別にして、自分なりに心がけ、実践しているつもりではありますが、本書の中で一点、違和感も感じました。
強制ではないし、自腹と言いつつも、日曜日に会社での勉強会等を自慢げに書いている点。
それって、おかしくないか?
個人として、勤務時間外に努力して勉強するのは、(プロならば)ある意味当然のような気もしますが、会社で日曜日に勉強会というのには、非常におかしい感じがする。強制ではないといいつつ、それは実質強制なのでは?
勤務時間外の点について、まして講習会や研修のような感じで個人に負担を押し付けているのなら、それは2流以下の会社だと思いますが・・・。
社員としてではなく、個人個人が自分のスキル向上の為にやるのなら、分かりますが、いささか時代錯誤的なものを感じてなりません。正当な報酬を払わず、努力と結果を求めるのは企業としていかがなものでしょうか? 小さいベンチャーでは許されても、大企業では通らぬ、独り善がりな論理として私には映るのですが・・・???
ベンチャー企業なんて、大企業のプロジェクトチームほどの規模ですし、それが一心不乱に特定の目的に向かって突き進むのは、納得行きますが、多種多様な人材と周辺組織、性質の異なる多様な目的を同時進行で達成していくある程度以上の規模を持った会社には、本書の論理では、人がついていけないでしょう。
その辺がすっごい違和感を感じました。
ただ、個人の意思以上に、会社の経営的判断に基づく意思の強制というのは、私ももっともだと思います。一個人の意思を必要以上に尊重する会社に、戦略的経営判断なんてありえませんから!
組織にあわない個人を切り捨てるのも間違っていないと思いますし、従業員も合わなければ、嫌ならば、そこを離れるしかないでしょう。
お互いの自由意志に基づくことが何事も基本ですからね。
(生活の為に働かなければ・・・とか、個々の事情は、あくまでも当事者の話ですのでそれはここでの趣旨と外れるのであえて触れません)
私にとって本書は当たり前のことを述べている、あえて読むほどの価値のない本でしたが、自分が思っていることをうまくまとめていた点があったので以下メモ。
【強い組織について】著者がアメリカ海兵隊の本を読んで、気付かされたと書いている箇所です。
1)隊員同士に「共通の原点」をもたせる
2)「組織を勝たせる」のが究極的な目的
3)「仲間を助ける」ことが自分の利益
そういえば、前いたベンチャーで富士五湖の近くで、1週間ほど合宿訓練受けさせられたな。管理者養成学校とかあの系のグループでの共同課題クリアする奴。一緒に参加した管理職の人達がほとんど今、退社しちゃってるのを今、考えてみると複雑な気もします・・・・。
【目次】生き残るSE(amazonリンク)
第1章 ITサバイバル時代を生き抜くための7つの力
第2章 エントリー・マネジメントの失敗が組織を腐らせる
第3章 システム・エンジニアを「ビジネス・エンジニア」に進化させる方法
第4章 SEが命がけで仕事に取り組む組織のつくり方
第5章 コミュニケーション下手なSEでは生き残れない!
第6章 あなたに「ビジネス・エンジニア」を育てる覚悟はあるか?
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