2011年07月24日

「事業仕分け」の力 枝野幸男 集英社

「何故2番じゃ駄目なんですか?」の迷言で有名なスパコンの予算を削ろうとしたり、原発のメンテ費用の10%カットだったかな? 他にも「はやぶさ」等の宇宙開発予算の削減など、まあ、この事業仕分けについては、あちこちらで耳目の注目を集めておりましたので、私自身も大変関心は持っていました。

たまたま見つけた本書も、その関心の延長線上で読みました。

本書を読んだ第一印象は、一読した限りでは、民主党って想像以上に正しいことをきちんと秩序立って行っていた正義の味方のような感じです。もっとも、うがって考えなくても自分達の政治的手法の正しさを喧伝する為に書かれた本だと思われますから、そう受け取られられなかったら、出版自体を中止したと思いますけどね。

私も読んでいて素直に首肯できる点は多々あったので、ざっと列挙してみると・・・。
・国民が見える公開の場で行うことで外部視点の導入
・予算編成の政治主導の実現
・事業の必要性の立証責任を削減する側から、要求する側への転換
等々。

お得意の具体例(メールでの職業相談等)も幾つか挙がられていますが、それはそれで評価すべきことでしょうが、個々の事例は参考程度ですね。自民党時代でもいくらでもそんなのあったでしょうし。列挙してたら、キリがありません。

勿論、新しい政権として、予算決定に対して予算決定のプロセスの透明化を試みた。それ自体は、本当に評価に値することではあるし、むしろ、進めてしかるべきだとは思うが、本書でも書かれているが、仕分け人の明確な法的な位置付けがなく、ただやってみました。

それをどこまで採り入れるかは、お役所さんの方の問題で、この評価過程を繰り返すことで徐々にその事業仕分けが反映されていく、な~んていうのは、あまりにも理想論ではないでしょうか?

政権を取って、予算作成時期まで時間的猶予が無かったからというのは、言い訳でしかありません!
民主党の政策は、全てにおいてど素人が理想論を語っているだけと思うのは私だけでしょうか?

何も知らず、何も勉強せず、一切の準備もしないまま、その発言の影響さえも考慮せず、党内での調整すらしない? できないまま、やるとか言っちゃうのは、いい加減やめて頂きたい(切なる願い)。

自分達の政治手法を弁護すべき本書でも、その辺のボロボロさが散見してしまうのは悲し過ぎる。
この事業仕分けも、個々の事業の必要性、正当性、金額の妥当性等を判断するに足るだけの勉強は一切していないことが本書を読んだだけでも丸分かりなんだもん。

準備期間が無さ過ぎるのは重々承知のうえだけど、かつての自民党が代議士になった若手のうちから、官僚との勉強会(酒飲んで税金を無駄使いしてるだけなのもあるのだろうけど)で何年もかけて、その仕組みやノウハウを習得し、実際に個々の立法等の政策決定に関与する経験を経てから、大臣等になっていたのと比べたら、どうやっても無知過ぎるでしょ。

いくら自分達の専門でない部分は、民間の専門家を入れて活用し、補ったと言っても、絶対に政策ブレーンになりうるような人材では無さそうですが・・・そのメンツ見ても。

自民党は、周知のように日本最大のシンクタンクでもある官僚組織を利用し、一時は、その官僚を抑える為に、学者などを諮問委員として使いつつ、官僚を牽制しながら、政治を行ってきたわけですが、民主党は、それらに変わるものを作り出したようには見えない。

友人、知人などに聞いても各種機構などの動きをみても、民主党政権になってから、混乱と業務の停滞が著しい限りらしい。方針が変わるのはいいが明確な指針がなく、場当たり的であり、事前に良く検討し、実施可能性を踏まえたうえでの指示ではないので全てにおいて、自民党政権より業務効率が劣化しているのは、心ある人なら、誰でもが知っている。

日経新聞の社説や1面の特集を見れば、これ以上ないぐらいに徹底して政権批判をしているのも珍しいと思われる。しかし、それが実際に日本で仕事をしている社会人の気持ちだと思う。

一般人の無知や無能は許されても、為政者の無知や無能は極刑ものだと思う。
失われた10年、20年ではすまないし、日本はてっぺんから奈落の底に転げ落ちる、まさにその瞬間でそれを政権担当能力に欠けた人々によって政治が担われている怖さ。・・・・夏の怪談も真っ青だろう。

衆愚政治もここに極まれり!

いささか感情がこもってしまったけど、事業仕分けは、結果的に壮大な政治的パフォーマンス以上では無かったでしょう。どんなものでも強制力を有しないものに価値はない。

まして、はぐらかすのが何よりも得意な官僚組織において、何らかの新しい改革を本当に実施する気概があるならば、まずは事業仕分けの立法根拠を明確に位置づけるべき必要な立法措置をすべきで、法的な仕組みさえできれば、言葉は悪いが民主党が消えても、今後の日本にとって意義ある政権交代だったと思うが・・・。

むしろ、無知で無能な政治主導ほど、国家にとって害悪とかえって官僚優位にさえ、なりかねないことを危惧してしまう。

まあ、事業仕分けは、個々の妥当性は別にしても素人から見ても、明らかに予算使い方がおかしいものだけ、止めましょう。そのスタンスは分かるものの、あまりにも手抜きではないでしょうか???

医療関係の電子カルテ推進とかは、自分達の支持者である医師会に配慮して、なし崩し的に自民党時代より、劣化させてるし、各種手当てはあくまでも対処療法で、将来を見越した戦略的な投資としての予算配分はほとんどなされていませんよね。

結果として、移動できない米軍基地絡みで、だれだけ無駄に予算と時間と外交的ポイントを損失してます?

結果を残せるなら、ある程度のムチャも予算の浪費もまだ許容される場合はありえますが、結果の出せない指導者は、責任を取るべきだし、取らせるべきかと。

株式会社だったら、株主訴訟を起こしても良いレベルですね。
民主党に投票した人は、押し付けられた(今度、押し付けられる)国債に対して、黙って甘受するんだろうか?

本書は民主党が行った事業仕分けの意図を明確に理解する手助けになります。と同時に、心ある人が見れば、そもそもこのやり方が内包する問題点と実施側の甘さに気付く事でしょう。

表面的な文章に踊らされなければ、得る所はあるかと思います。
【目次】
第1章 「政治文化」の革命としての事業仕分け
第2章 事業仕分けとは何か
第3章 事業仕分け最前線
第4章 事業仕分けに対する批判に答える
第5章 有権者の意識改革としての事業仕分け
補章 事業仕分けの歴史
「事業仕分け」の力 (集英社新書 540A)(amazonリンク)
ラベル:政治 書評 民主党
posted by alice-room at 19:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類B】 | 更新情報をチェックする
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