2006年08月13日

「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房

相変わらず、ステンドグラスやゴシック建築関係の本が読みたくて購入したもの一冊。寝る前に少しづつ読んでいたから読了まで一週間もかかってしまった。

パリのノートル・ダムってフランス革命時にステンドグラスはほとんど割られ、彫刻もだいぶ壊されてしまって、現在のものはたかだか19世紀に修復されたものでしかない、そんなことが念頭にあり、どうしても素直に好きになれないパリのノートル・ダムでした。

それとあまりにも多い観光客の集まる観光スポットという点でも正直私の中では大聖堂としての評価はかなり低い場所でした。勿論、初めてパリに行って見た時は、そんなこと知らないし、単純に初めてみたステンドグラスにうわあ~綺麗だなあって感動していたんですが、去年シャルトル大聖堂のステンドグラス見るまでは、ゴシック建築そのものへの関心もいまひとつでした。表面的な関心以上のものを私には及ぼさなかったのです。

そんな、いささかさめた私の感性を根底からゆすぶってくれたのがシャルトル大聖堂のステンドグラス。ユイスマンスが、はまってしまうのは当然といえば、当然でしょう♪ それ以来、私も折に触れてはシャルトルやステンドグラス、ゴシック建築をキーワードに関連する本を読み漁っている日々です。そして、本書もその流れであまり買う気はなかったのですが、シャルトル大聖堂の解説本を書かれている著者の馬杉氏の本なんでようやくためらいつつ、買ったものだったりします。

最初に感想を言ってしまうと、やっぱりシャルトル大聖堂にはかないませんね。他のを差し置いてでも一気に読破しきるほどの面白さはなかったです。ただ、パリのノートル・ダムもゴシック建築史上においては、十分に意義のある存在だったことが分かりました。

最初のゴシック建築とされるサン・ドニから、パリのノートル・ダムを経てシャルトルにつながる図像学的な変遷や人像彫刻やゴシック建築としての推移など、中世のとある時代に突如としてシャルトル大聖堂が現われるのではなく、ロマネスク様式から徐々に推移して後期ゴシックへとつながるその過程も、他の大聖堂との比較を通じてより鮮明に認識できることを知りました。

個々の具体的な建築物を見ながら、帰納的にゴシック建築というものの姿を捉えることができたように感じます。

建築の平面図からは、そこに表現されるゴシックに特徴的な垂直な方向性と水平的な方向性との調和が見てとれることや、タンパン(正面の彫刻)に描かれる図像的な表現形式や表現対象の推移なども非常に勉強になります。

扉の柱にしばしば刻まれる人像彫刻も、シャルトルで私は初めてその流麗な表現に強い印象を受けましたが、それはあくまでも柱としての空間に合わせて彫刻を行うロマネスク式の影響下にあったものであることもこの本で再確認できました。ノートル・ダムの方は、逆にゴシック的でその空間に収まらずに抜け出そうと志向している点も大変面白いです。

それと私もパリの本屋で購入したガーゴイルのポストカード集ですが、それらは全てノートル・ダムのガーゴイル達ですが、この本ではそのガーゴイル達にも詳しい説明をしています。た・だ・し・・・。
その説明、どっかで見たなあ~と思ったら、著者の他の本でも触れていた話で記述内容はほとんど同じ。う~ん、それはちょっと興醒めでした。
喉を意味するラテン語のgurgulioから派生し、動 詞gargariser うがいをするを語源と考えられている。石と石を接着する漆喰を雨で溶かしてしまうのを防 ぐ為、雨樋の必要からゴシック建築とともに表れてきた。

伝説では、セーヌ河畔の洞窟にガルグイユ(フランス語のガーゴイル)という名の竜が住んでいた。竜 は舟人達を飲み込み、口から出す炎で全て焼き尽し、洪水を引き起こすほどの水を吐き出した。ルーア ンの町の住人達は竜をなだめる為に毎年生きたままの人間を生贄に差し出していた。竜は処女を好ん だが、罪人で済む場合もあった。520年頃ロマヌスという司祭がルーアンにやって来て、町の住人が洗 礼を受けて教会堂を建てる約束をすれば怪獣を追い払うと言った。ロマヌスは重い罪人を伴い、竜と対 決して捕え、薪で燃やしたが頑強な頭と首だけは燃え残った。そこで人々はそれを町の城壁にさらした 。これを基にしてガーゴイルが作られたとも言われる。

なお、ガーゴイルには様々の意味が付されているが、中心となるのは悪霊から大聖堂を守護し、水を 吐き出すという行為により、そこから悪霊を追い出し、人々に罪を犯すことの恐ろしさを警告することである。
これは、同じ著者による「黒い聖母と悪魔の謎」に書かれたもの。

本書だけ読んでも、それほど面白いと思いませんが、ゴシック建築全般に関心を持っていて、その中でパリのノートル・ダムに関心を持つのならば、とっても勉強になるし、いい本だと思います。でも他の本を合わせて読まないと、それほど楽しめないかも?
【目次】
Ⅰ歴史としてのノートル・ダム
 1歴史としてのパリ
 2歴史としてのノートル・ダム大聖堂
 3ノートル・ダムとは
 4ノートル・ダ(聖母)崇拝の高まり
 5大聖堂(カテドラル)とは
Ⅱ大聖堂としてのノートル・ダム
 1ノートル・ダムとゴシック建築
 2プラン(平面図)から見たノートル・ダム大聖堂
 3「神の国」の実現、壁面構成と天井構造
 4ステンドグラスの輝き
Ⅲ彫刻としてのノートル・ダム
 1一二世紀の扉口彫刻
 2一三世紀の扉口彫刻
 3《最後の審判》
 4ノートル・ダム大聖堂内部の彫刻
Ⅳ図像としてのノートル・ダム
 1中世美術における「悪徳」の表現
 2「王ギャラリー」
 3ノート・ダムの怪物群とガルグイユ
Ⅴユゴーの見たノートル・ダム
パリのノートル・ダム(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
posted by alice-room at 14:58| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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