2011年09月11日

「建築学」の教科書 彰国社

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教科書とタイトルに入っているが、単なるエッセイ集です。
建築に関わるテーマで、いろんな建築家が語ったものをまとめたものになります。

一応、だいたい全てに目を通しましたが、興味ないテーマは読まなくても・・・というか興味あるものだけど読めば十分な本です。

ほとんどはつまらないし、価値を見出せませんでしたが、幾つかは面白いのがあったのでそれだけで読んで無駄では無かったかと思いました。

拾い読みすると、建築に関心のある方には良いかも?

以下、私が面白かったもの。

謎のお雇い建築家。Thomas James Waters ウォートルス。
日本の近代建築の流れの幕開けの人物らしく、ウォートルス→ジョサイア・コンドル→辰野金吾 へと続くらしい。

コンドルや辰野の作品は、幾つか実物見てるし、このブログ内でも写真載せて紹介してましたが、ウォートルスは知らなかったなあ~(まあ、建築は門外漢ではあるので当然かもしれませんが)。

薩摩藩紡績所、大阪造幣寮、竹橋陣営、銀座煉瓦街、等を設計した人物らしい。

著者はその足跡を丹念に調査したらしく、奄美大島での白糖工場を実地で検分・調査した話やその後、上海での足跡を追い、それからアメリカのコロラドでシルバーラッシュで一山当てて、大成功したそうです。

コロラド(デンバー)では、鉱山技師、鉱山経営者として記録されているとのこと。

確か荒俣さんの明治産業遺産(?)とかの本、読んでことありますが、あの系の話です。個人的にはこういうの好きなんだよねぇ~。大変興味深く読みました。

その辺の本も出てるらしいし、機会があれば読んでみたいかも?
ーーーーー
技術と芸術の融合。
ガウディが出てくるんだけど・・・私もスペインでサクラダ・ファミリアやカサ・ミラとか見てるんだけど、確かに悪くないんだけど、私の趣味には合わないってのが実物を見た感想です。
私には、ちっとも美しく見えないんですよ、これが・・・。

まあ、晩年のガウディのストイックなまでの執念にはそそられるものがあるのですが、う~ん、何故あれほどまでに世界で賞賛され、評価されるのか個人的には謎です!ハイ!

ガウディはゴシック建築を十分に研究し、その問題点(推力の均衡を取る為にフライグ・パットレス等を必要とする点)を克服しようとして、あのサクラダ・ファミリアを設計したというのですが・・・・。

サクラダ・ファミリアにゴシック建築の崇高さ、明晰な合理性、絶対的な『上』への上昇志向等々を感じることはできなかったんですが・・・私にはね。

違うんだよね。
特にシャルトルとかとは。

元々が聖地であり、未だに地下奥深いところに、水が湧き出るその場所を覆い隠すかのようにしてひたすら天へ、天上のエルサレムへと人々を誘うゴシックの大聖堂。

正直、格が違うと思うんだけどなあ~。
両者に行ってみれば、分かるはずだけど、その労を惜しむ人が多いのか・・・。

まあ、余談は置いといて、ガウディがゴシック建築を念頭に置いていたことを知れたのは収穫でした。まあ、スペインだったら、アルハンブラ宮殿の方がはるかに素敵ですけどね。

コルビジェのシンプルさよりも、シンプルでいながら、繊細さを伺わせる意匠にこそ、価値を見出しうる私ですから。お金儲けたら、自分で設計した家に住みたいなあ~。

自分で勉強して資格取っちゃってもいいもんね。
そこまで、金と暇が確保できるかがまず問題ですけど・・・(苦笑)。

建築は、形になり、目に見えるのでいいよね。楽しいです。
その代わり、自分一人では何もできないってのもあるけれど・・・・難しいものです。
【目次】
はじめに 教科書にないもうひとつのドラマ 鈴木博之

Lesson1 朝の授業
建築と出会う―揺れ動く心(安藤忠雄)
建築は美しい―技術と芸術の融合(佐々木睦朗)
建築を結ぶ―人間のもつ豊かさの多様な発露としての建築(松村秀一)
建築は広い―密林の奥には何がある(内藤廣)

Lesson2 昼の授業
建築はしぶとい―建築の強さについて(鈴木博之)
建築を感じる―小さき場のために(松山巖)
建築は大変だ―建築家という職業(妹島和世)
建築はかよわい―自然の力は偉大なり(水津牧子)
建築が毒になる―シックハウス問題(田辺新一)

Lesson3 夜の授業
建築を探る―謎のお雇い建築家(藤森照信)
建築に刃向かう―歴史を見直す、歴史から見直す(山岸常人)
建築は直せる―技と心と心意気(西沢英和)
建築はあやしい―お城も給電も原爆ドームも(木下直之)
建築と闘う―巣のビスとに毒だみ茶を(石山修武)
「建築学」の教科書(amazonリンク)
ラベル:書評 建築
posted by alice-room at 11:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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