
小学館だから、スピリッツだったかな? 思春期の性を扱った作品ですが、印象としては全然エロくないです。最近、巷で言われる『エロカワ』などという野卑なノリとは一線を画してます。
これって同じように経験を踏んでいっても、意識しないでいつのまにか単なる記号としての『大人』になってしまっている人と、そうでない人の個人差がとても大きいような気がします。
かつてであれば、大人になる為の通過儀礼として社会に存在したものが、現代では全てが個人に帰せられる故、ますます個人差が大きくなります。逆に言えば、人によってはいつまでもその段階を通過できずにいる者が多々いるのでしょう・・・。そんなことを漠然と考えてしまいました。
本書は基本的に一話完結で短編が集まっています。そのどれもが思春期のほんの一瞬を瞬間的に切り取ったような場面です。しかも、その当人でさえ、時間の経過と共に失い、二度と感じ取れなくなるようなテンポラリーな感性・感覚を実に鮮やかに描き出します。
愛もないし、夢もない。諦めもないし、卑屈さも無い。自分で自分を掴み切れないでいる不安定な時期、他者に反射して映る自分を見ることでしか、自分を捕えられない―――そんな感じを強く受けました。
もう自分には感じられない感性を、遠い異国の話のようにおぼろげに浮かび上がらせてくれる、そんな本です。この本には、感性はあっても快楽がないのです。
余談だが・・・かつての森山塔(山本直樹)に感じたものと似たものを覚えた。
【目次】センチメントの季節 (3)(amazonリンク)
第1話/海ガメのプール
第2話/夏服の少年少女
第3話/蝉たちの恋
第4話/沼の底で
第5話/教室の幽霊
第6話/クラゲの海
第7話/落ちていた男
第8話/飛ぶ夢
第9話/さなぎ
第10話/汚れた悲しみ