2006年08月29日

「コンスタンティノープルの陥落」塩野 七生 新潮社

konstatin.jpg読んでいるうちは、それなりに読めるのだが、読み終わった後にはなんにも残っていないのも事実。歴史小説であるが、小説以上の域には至っていないのが正直惜しい感じがする。

舞台は、『あの』ローマの伝統を引き継ぎながら何百年間も永らえてきた東ローマ帝国の都であり、その後もトルコ帝国の首都として名前こそイスタンブールに変えたものの更に現代にまでつながっていく大都市。

交通の要衝であり、文化の結節地点としての重要さもさることながら歴史的にも大きく名を残すコンスタンティノープル。キリスト教対イスラム教、という図式と共に西洋文明の古き良き伝統の息の根を止めたまさに歴史的な瞬間を描き出している。

しかし、この小説には珍しく英雄がいない。皇帝とスルタンはいても、本書の描き方では、せいぜいが優れた支配者程度の表現であり、むしろ地道にその時代を生きている商人や居留民などの動向などがより史実っぽくて関心をそそる。

でもね、ある種の突き放した感のある冷静さは、観察者のようで歴史を眺める姿勢としては悪くは無いが、小説として読むとずばり面白みや情熱に欠ける。感情移入ができない小説をどう読むのかは微妙なところだと思う。

嫌いではないが、歴史好きの人にあえて薦めようとも思わない。小説好きの人なら、むしろ止めた方がいいとさえ思う。そういう小説です。

もうちょっと意外な史実とか、小説なら一工夫が欲しいところでしょう。そうでなければ、より一層淡々とした歴史の説明の方が個人的には好きだったりします。でも、イスタンブール、改めて行ってみたくなりました(笑顔)。

コンスタンティノープルの陥落(amazonリンク)
posted by alice-room at 23:13| 埼玉 🌁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
つい最近塩野さんのローマ人シリーズ
“ハンニバル戦記”を読み終わりました。
あの・・・あれも小説なんですかね??(苦笑)
知識のない分野で知らないことも多かったので
(子供の頃読んだ“ハンニバルの象使い”以来の
ローマVSカルタゴ物語)面白く読めましたが、
小説として読んではいませんでした。
戦時記録物??ってわけでもないですけれど。
管理人さんのコメント読んでちょっと考えてるOZです。
今は“ユダの福音書を追え”の最終章読んでます。
基本的にフィクションが好きなのですが、最近
ノン・フィクションも多いですね。
こちらのサイトで読みたい本が色々出来てしまい
日本から取り寄せることになりました。
うーん、散財。
誰かに責任をなすりつけたいか・・?!(笑)
Posted by OZ at 2006年08月30日 05:51
こんばんは、私もローマ人の物語シリーズは大好きでかなりの冊数読んでますよ~(笑顔)。私も詳しくはないのですが、あそこに書かれている大部分は歴史的な事実を踏まえて、そのうえで書かれているのではないかと思います。もうカエサル様は大ファンですから(ニヤニヤ)。

事実を踏まえてそれを料理していくのが、塩野氏流の小説なのかなあ~と思います。でも、本当にローマ人の物語は面白いですよね! アッピア街道をたどり、カタコンベにもぐってみると、古代ローマを実に身近に感じたことを思い出しました。

散財の責任は、誰かさんになすりつけて頂いて・・・、少しでも読書の参考になれば嬉しいです♪
Posted by alice-room at 2006年08月31日 00:07
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