昭和48年に出た本で当時の稀覯本マニア連中(?)とおぼしき人達が集まって、ヨーロッパ中の稀覯本を扱う専門古書店を訪問したレポや各種研究機関等にある稀覯本を訪れた感想等を文章にまとめて、紹介した稀覯本マニア向けの本。
実際には古書店の店主とか、好事家の集まりみたい?
あちこちの公的機関でそれなりに丁重に扱われていることから見ても、元々書籍に関連してなんらかの繋がりがあった人々なんでしょう。日本の古書籍について造詣があり、海外に流出している日本の古典籍についてもかなり語っているところから、その筋の人なんでしょうね。
ただ・・・私は日本の古い書籍についてはほとんど関心が無いのでその辺の説明は正直不要でした。
逆に、海外の稀覯本についての説明は通り一辺倒で、そんなに詳しい感じはしません。まあ、今は稀覯本に関する本もいろいろあるし、ネットで情報も得られますからね!日本にいながらにして、稀覯本を見る機会も増えたし、海外旅行で以前よりはいろんなものが気軽に見られるようになりましたから(笑顔)。
当時の時代的状況を考えると、本書はその先駆けとして価値があったと思われます。
本書の冒頭にも書かれていますが、ヨーロッパの稀覯本として、古写本(manuscripts)、彩色古写本(illuminated manuscripts)、揺籃期刊本(incunabula)などが上げられ、それを堂々と本の取り扱い対象としているだけでも珍しかったんではないかと思います。
冒頭の挿絵として数枚のカラー口絵があり、私の大好きな時祷書などの彩色写本が選ばれている。基本だね、基本♪
最初は大英図書館から始まり、公的機関の有する稀覯本&施設の説明があり、次に西欧各地の著名な稀覯本専門店(総合書店も含む)を紹介しています。
実際に訪れて、その在庫の豊富さや取り扱い商品の質、店の雰囲気なども語っているのですが、たった数十年前の話なのに、今では全く違っていることが容易に想像され、いささかノスタルジックな想いと共に楽しく読みました。
著者たちとしては、本書を参考に実際に書店を訪れる人の役に立つように実用性も重視しているようですが、それがかえっていい感じになっています。実際に行けなかった書店や行っても閉まっていた書店でも、有名なお店は、簡単に紹介されています。
パリのセーヌ河畔のブッキスト通りとか、私も冷やかしましたが、楽しく描かれています。もっとも、その仕入先も含めて説明し、安いが掘り出し物がほとんどない。そんな記述は、いかにも本を買う人らしい発想というか、視点でふむふむと思っちゃいます。
あとオークションは、私がよく知らないだけに記述が興味深いです。オークションハウス毎に、絵画が強いところ、写本等書籍が強いところなど、実用的。
著者の一人は、実際にサザビーズのオークションで落札し、本をしっかり買ってたようですし。業者だね、これは。
あと、稀覯本の専門書店は、日本人の大学教授等のお客さんがしっかりついていることなどにも触れられています。科研費で購入するんでしょうね。そういやあ~うちにも年に1、2回ロンドンの稀覯本専門店からカタログ送られてきたりする。
欲しいものはあるものの、ざらに数百万円単位で小市民の私には買えなかったりする。カタログを眺めているだけでもうっとりしてしまう本が多いが、株で儲けたら、数十万円ぐらいの本だったら、是非、そこのお店で購入したいと常日頃思っていたりする。
だって・・・実に立派なカタログをわざわざ海外が送ってもらっていて、一度も購入していないってのは、さすがに心苦しい。実際、欲しいものはあるしね。カード支払いなら、いつでも買えてしまうのだけれど・・・。写本の一葉でも買っちゃいたいなあ~。
本書はもう時代が古く、買って今、役に立つ本ではありませんが、古書好きの方なら、読んでいて十分に楽しめる本だと思います。あ~、海外行って、また古書買ってきたい。英語しか読めないって、どんな文盲なんだ私は。フランス語やラテン語ぐらい読めるように勉強したいなあ~。
とにかく稀覯本好きなら、買ってもいいかと。
古書好きのマニアが関わっているだけあって、本の装丁も含めてしっかりとしたいい造りですしね。個人的にはお薦めします。ただ、内容は西洋稀覯本という点では、まだまだ不満足ですが、そういった未熟な部分も含めて、いいような気がします(今回は、評価あまあまです)。
こういう本がもっとたくさん出てくるといいな~。
【目次】ヨーロッパ古書紀行 (1973年)(amazonリンク)
ヨーロッパの稀覯本
ヨーロッパの稀覯本を尋ねて
ヨーロッパ古書店案内
世界一のオークショナー、サゼビー
日本の古書の在外秘宝
別丁地図―ロンドン古書店地図、パリ古書店地図
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