2006年08月30日

「赤線物語」清水 一行 角川書店

「赤線」と言われても誰も知らないだろう。私が生まれるはるかかなたの時代にあった売春などの行われていた区域の名称である。昭和30年代の売春防止法によって赤線という言葉自体は、消滅したそうであるが、人類の歴史上、最古の職業の部類に属する売春がなくなるはずもなく、より一層の無秩序と混乱の中で存続し、ますます氾濫しているのは現状の通りである。

まあ、そんなお堅い話はさておき、本書はその売春防止法の施工直前の時代に赤線として有名であった『玉ノ井』の女性達を描いている。今も昔のこの手の話に変わりはありません。

封建的な男尊女卑に対抗して女性の性的自立と自由を求める・・・とかしょうもない権利・主義主張などもなく、格別、悲惨でもない淡々と生きている人間が描かれている。

何も考えずに、日々生きているだけの人もいれば、計算高く生き抜いている人もいたり、いろんな生き方が人それぞれあるわけだが、それもまた人生。「良き哉(かな)、良き哉(かな)」とか思ってしまいます。本能的な欲望である性がテーマになっている分だけ、人間らしさが生々しく描かれているかも?

実はこの手の本もだいぶ読んでいて、一応子供時代から、早熟で耳年増傾向の強かった私には、特に目新しいものでもないのですが、時代的な情緒はあるかもしれません。

でも、やっぱり玉ノ井というと永井荷風の「墨東綺譚」なんだけどね。あれは名作でしょう♪ 映画も余韻があって結構好き。残念ながら、本書は比べ物になりません。これも悪くはないんだけどね。役不足ってところでしょうか。

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posted by alice-room at 23:51| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「墨東綺譚」で気に入っているのは、荷風の小説じゃなくて、墨田ユキのほうなんじゃないの?と言ってみるテスト。
Posted by oldbookseller at 2006年08月31日 21:07
まあ、結構好きでしたよ、彼女も。でも、緒川たまき嬢以上の美女ではありませんでしたね。
最近、モデル系の美女とデートした覚えがありません・・・年くったかな?(苦笑)
Posted by alice-room at 2006年08月31日 23:27
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