でもね、本書は福助や大黒様なども出てくるのですが、それはあくまでも本書の一部。主題は、古今東西のありとあらゆるところで目にする図像の意味を芸術性とか付加価値的部分をとっぱらって、その図像(意匠含む)が描かれた社会的・地域的・歴史的文脈の中でナニを意味しているのか?―――それを明らかにしようという荒俣氏お得意のパターンです。
それこそ博物学関係の本に始まり、驚異的な収集癖と関心を示し、並々ならぬ博識を誇る氏らしく、読んでいてう~む、と驚かされること間違い無し。知的好奇心をそそる内容です。ただ、ラングドン教授よりも荒俣先生の方がはるかに物知りのような気がしますが、微妙なことに本書で解き明かされる対象自体がマイナー過ぎ、一般受けはしないんだろうなあ~とも思います。
すごいんだけど、売れる本か売れない本かと言えば、売れないんじゃないかと・・・(すみません、失礼なこと言って)。
ただ、この本を読むと絵画だけではなく、ポスターなども含めてありとありゆる図像を見た時、表面的な図像だけでなく、それが背後に指し示す作者の意図を明確に感じるかも? 西洋絵画のアトリビュートなどもそれに含まれますが、それよりももっと広汎で奥行きのある物の見方ができるかもしれません。そういった意味で感性の錬磨には向いています。
まあ、精神的に余裕があって人生を楽しめる方向きの本です。薄っぺらな現代的合理性などの美名のもとに、感性の摩滅したような方には、理解できないし、されない本かと思いました。
本書で採り上げられていた引札とかは私も好きで、いくつかは綺麗なの持っていますから、そういう方にはいいかも?私も改めて自分の持っている引札の絵柄を確認してみよかと思いました(笑顔)。
【目次】帯をとくフクスケ―複製・偽物図像解読術(amazonリンク)
楽園への誘い
エロティックになる勉強
美人の恥ずかしい姿
忘れられた最高技芸―紙幣の印刷
シュール魚かリアル魚か
潜水マスクがない頃の海中事情
額縁の裏がわの見かた
別世界の軒先―エジプト画の意味
蛇は図像の王様だい!―足のない動物の謎
〈金のなる木〉は商芸の傑作!
〈宝づくし〉の進化論
帯をとくフクスケ
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