2005年03月11日

「悪魔の話」 講談社現代新書

正直言ってここまで内容の無い本だとは思わなかった。生まれて初めて悪魔に関する本を読む人ならそれでも目新しいことがあるのかもしれないが、それにしてもヒドイ本だ。何故ここまで使えない本としての烙印を押すかというと、端的に言うとこの本の中身は他の本からの引用に過ぎず、しかも元ネタの本はほとんど日本語訳のあるものであり、元ネタを既に読んでいる私には、薄っぺらなメモ?としか感じられない。更に悪い事に、きちんと一定のテーマごとにまとめてあるのわけでもなく、章はおざなりにあるだけで、内容が悪魔に関係のない事項に飛ぶだけで、それが一向に有機的に結びつくこともない。

新書という量的な制約と、入門書という出版側の意図を好意的に解釈してもゴミ本の仲間でしょう。澁澤龍彦氏の「黒魔術の手帳」とかで思春期を過ごした私には、軽いエッセイ的な位置付けにしてもあまりに下手な文章力に驚愕を隠せない。仮に文章力は無くても、学者出身ならもう少し真摯な姿勢で書けばいいのに、いかにも片手間に書きましたというレベルで酷過ぎる。

具体的にいくつかどうしょうもないと強く感じた点を挙げると、「錬金術師と魔女の街」とまで言われたプラハを採り上げるのは当然としても、完全に重点の置き方がおかしい?私自身、直接行ってプラハに残る錬金術の道具や、中世の修道会付属図書館、ゴーレムが土の塊になったまま未だに残っているというシナゴーグ(ユダヤ人公会堂)を見ているので断言するが、その辺りに触れずに表面的なことばかり書いている。著者は恐らく、中世の手彩色写本等の文献についても見たことが無いのではないかと思う。
他にも、マンドレークについて本で触れているが、恋の秘薬としてだけではなく、財宝をもたらす護符のような扱いをされていたうえに、聖書にまで登場するのに解説がほとんどない。澁澤氏や種村氏の爪の垢でも煎じて飲んで欲しい、全く呆れるばかり。

よせばいいのに、浅はかな知識と本人の勝手な思い込みでついには、悪魔と河童についてまで論じる始末。まさに、悪魔の所業・・・。その論旨が、勝手に柳田国男氏とハイネを結びつけてしまうんだから・・・一切、自分は考えずに同様だと言うのは、お前はジャーナリストかと言いたくなる。本当に元学者なのだろうか???少なくとも私の大学院の時には、そこまで低レベルな先生がいなかったのは幸いでした(合掌)。著者は以前いた大学の先輩みたいですが、あそこは中退して正解だったかな(笑)。

ご本人も専門ではないがと書かれていたが、だったらこんな駄本書くべきではなかったですね。資料の孫引きか、やしゃご引きばかりで、時間の無駄です。初学者が悪魔について日本語で知るなら、やはり澁澤氏か種村氏の本でしょう。そちらをお薦めします。

悪魔の話 講談社現代新書(amazonリンク)

ラベル:悪魔
posted by alice-room at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
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