2005年03月12日

「クムラン」エリエット・アベカシス著 角川文庫 

しかし、凄いとはこういうことを言うのかと、久しぶりに文章といわず、書物の「力」について気付かされた一冊。事前にこの本を読み、キリスト教全体に関心を持っていたから、「ダ・ヴィンチ・コード」につながったいったのも、不思議な書物の連鎖を感じる。

まあ、個人的な感慨は置いといて。これはあの有名な死海文書にまつわるお話である(エヴァンゲリオンではない、はまった人物としては苦笑)。要は、失われた死海文書を集める為に、波乱万丈の事件を経験していくうちに、そもそもの死海文書に秘められた謎に近づいていくという設定になっている。

小説といえば、小説なのだが、ここに出てくる知識量(情報量)は半端なものではなく、しかもそれが断片的に用いられているのではなく、有機的に絡み合いながら、謎を益々深くし、一方で読者をその特異な世界に引き込むのである。なんせ、著者がうら若き女性ながら、ラビの一族の出身でしかも20代で大学教授なのだから、そのユダヤ的教養水準の高さは並たいていのものではない。ただ、未知の用語や概念が多数出てくるが、しっかりした解説が違和感なくなせれているので、決して著者の独りよがりなストーリーにならず、しっかり読者が共有し、あまつさえ、その独特の(宗教的)世界観に溶け込んでしまうのが筆力も侮れない。

また、小説である以上、ストーリーは虚構であってもそれを支える事柄は、まさしく歴史的事実をたぶんに踏まえており、ちょっと調べればすぐにそれらが明々白々の事実であることが分かる為、一層、ストーリーのリアリティーがましてくるのだ(もっともこれは後日、思い返して他の資料を見た時に分かったことであるが・・・)。

とにかく、これを読むだけで貴方の死海文書に関する知識や、ユダヤ教に関する理解は恐ろしいまでに深まるでしょう。タルムードという言葉さえ、知らなかった私には(ほとんどの人に当てはまると思うが)感動の本でした。この本を読んで、キリスト教に関する関心が湧き上がり、イエスや死海文書関係の本へと走っていったのも納得の一冊です。

いやあ〜、本当に勉強になりますよ!! イスラエル建国の背後で、死海文書を巡って各種の団体・国家・宗教勢力の駆け引き。その後の徹底した秘密主義や血なまぐさい事件の数々。現在、大部分をイスラエルが所有し、「本の聖殿」という特別室で展示しているなんて、これを読むまで全く知らないまま人生を生きておりましたから・・・・ハイ、うかつにも。

とにかく目からうろこが落ちる一冊です。およそ宗教に否定的な立場で人生を生きてきた私が、それほどまでに信じられるというのは、素晴らしい人生なのではないかと考えるようにさえ、なった一冊でした。

クムラン 角川文庫(amazonリンク)
posted by alice−room at 00:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバックありがとうございました。
叡智の禁書図書館のこの特異な分野における貴重なお話は傾聴にあたいしますね。びっくりしました。
宗教とは縁のなかった私もキリスト教に関心を持ったのは「クムラン」からでした。その前は遠藤周作の「沈黙」その後なにやかやとマクッス・ヴェーバーから「イエスのミステリー」と。さすがおくが深いですね一神教の宗教は。
Posted by よっちゃん at 2005年04月03日 01:09
よっちゃんさん、こんにちは。コメント有り難うございます。趣味嗜好に走った内容が多いブログですが、ご覧頂ければ幸いです。

そうそう、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(?)でしたっけ?あれもすごい名著ですよね。大学のサークルであれを読まされて、うむむ。ってうなってしまった覚えがあります。

本当に奥が深いです。
Posted by alice-room at 2005年04月03日 14:37
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