偶然といえば、偶然なのですが、今日(2月2日)は「キャンドルマス(聖燭節,聖母マリアの清めの日)。 聖母マリアが天使ガブリエルから受胎告知を受けた日。 教会でミサの始めに蝋燭を持った行列を行うため、 「キャンドルマス」と呼ばれている。」そうです。ネットで見てて初めて気付いた!この本にもそんなこと書かれていたような???
さて本の内容ですが、実に多種多様なマリア様が出てきて、キリスト教におけるマリアの存在感の大きさに改めて驚かされました。ラファエロの聖母子画が何より好きでも、非キリスト教徒故の悲しさか、マリアそのものについては殆ど何も知らなかったことを改めて気付かされたね。
ローマ教会が土着の宗教を信じる民衆を教化していくうえで、シンプルな大地の豊穣神・大地母神をマリアと意図的(?)に混交していくことを有効な手段として用いた事は何度か聞いていましたが、元来、男性原理を強く働くキリスト教で地獄の恐怖を救う「慈悲」としての存在感やマリア自体が無原罪で受胎したという論理には、正直意外の念を禁じえなかった。
ムリーリョの「無原罪の御宿り」の絵もプラド美術館に行った際に見てはいるのだが、そういった背景を理解しないまま見ていたので、宗教画の暗示する命題の奥深さにはつくづく驚かされる。やっぱりお勉強して下調べしないと、楽しみが半減しちゃいますね。う~む。
でもね、それだけではないんです。マリアはコーランの中でも人気者だそうです。マホメットの娘ファティマと肩を並べるほどの人気だとは、全く知りませんでした。これも今度調べてみようっと。この本には、他にもマリアの聖遺物についての話や、あのスティグマータ(聖痕) に関するエピソードもあって、なかなか飽きさせません。黒い聖母や薔薇娘なんかの話も、断片的に聞いていましたがほお~と頷くことも多かったです。今でも血を流すマリア像といった奇跡は起きているそうですし。
以前にルルドの泉に関する本も読みましたが、感慨深いです。そうそう、バタイユだったっけ? 「腐乱の華」というルルドの泉を扱った小説がありましたが、これももう一度、そういった背景を念頭に置いたうえで読み直すべきだなあ~って思いました。昔(高校生くらいの時)、読んだのでもよく分からないまま印象に残ってましたが、たぶん今読むと当時とは全く違った印象を受けそうです。なんか楽しみだなあ~。
とまあ、概して良かった本なのですが、読者に対して親しみ易くする為か、言葉使いというか文体が好意的に言うとこなれ過ぎていて(悪く言うと、安っぽい表現で)書かれていて、かえって読みにくい。そのうえ、出典がきちんと明記されないまま、あちらこちらのエピソードを漫然とまとめ、そこに通説的な解釈と著者独自の解釈がはっきりと分けることなく書かれているので、資料としての価値は正直言って低いと感じた。
入門書としてはいいのかもしれないが、著者の見解なのか一般的に支持される見解なのかがはっきりしないのは、かなり痛い本だった。情報量は、見た目よりはるかに多いが、端的に言うとジャーナリズムっぽいね。俗っぽいのが、ウリなのかな?但し、一読の価値有り。
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謎の聖母マリア出現事件
2005年03月12日
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