イタリアは確かに素晴らしい国だし、誰がいつ行っても印象に残る国ではあるが、この本を読んでも私はイタリアの魅力を感じられない。私は2回しか行ったことがないし、イタリア語の通訳をしていた友人と比べてさえ、それほどイタリアを知っているわけではないが、少なくても私が感じたイタリアの魅力を本書からは再現できなかった。
そもそもイタリアの風土的なものを著者個人の記憶から再構成するのは自由だが、それが本当に個人的な取るに足らない感想でしかないというのはいかがなものだろうか?
正直言ってかなり失望した。イタリアに対する情熱も美術に対する情熱も少なくとも本書からは、感じられなかった。端的に言うと、パッションが感じられない!
と同時に、その代わりに美術の専門家としての視点があるかと言えば、それらしい素振りは見せるものの、薄っぺらなトリビアにもならないようなことばかりで甚だ興醒めでした。
有名な作品だからといって、あえて自分の感想はここでは書かないというその考えが理解できない。有名な作品だろうと無名な作品だろうと、自分が素晴らしいと思えばそれはそれでいいだろうに・・・。
論文書くわけでもないのに、変なことを意識して素直な感性をセーブしつつ、結果的には適当な書きなぐりの文を書いているようでその矛盾にもストレスを感じた。
ラファエロの聖母は、他の誰が書いてもかないっこないし、絶対に最高だと私は確信しているが、そういう気持ちがこもらない空虚で無意味な文章の羅列は、悲しかった。
イタリア好きや絵画好きには、絶対にお薦めしません。もっとパッションのある人の本を読みましょう。
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