2005年03月12日

「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り)

イエズス会ローマ神学大学内博物館図版(左はイエズス会ローマ神学大学内博物館)がたくさん入っていて、アート系の採算を無視したようなリブロポートから出てる本って結構好きなんだけど、西武グループだもんね。みんな絶版になってるのかな?悲しいかも・・・。

と、それはさておき、荒俣氏らしいいつもの作りの本です。いつもは平凡社さんから出すようなタイプの、個人で買うより図書館で一括購入されるタイプの本。でもこれは一冊2060円だから安いね。しっかりした作りで個人的にはこういう本好き!但し、欠点はかさばって部屋に置けないこと。

うちにある本も去年だけで6箱くらいブックオフに売り飛ばしたが、まだ20箱近くある。戦前の黒本(?)やら、海外で買い求めた怪しい本とか、国会図書館にも無い本も少しはあるから、売るわけにもいかないし・・・。場所だけ取って困るなあ~。ああ、広い本置き場が欲しい。本棚は本が日に焼けるからパス。と、愚痴をもらしつつ。。。

この本では、荒俣氏いわく'バロックの恐竜'キルヒャーの書いた種々の本のうち、荒俣氏が趣味で集めた本の中から、気に入った図版をバサバサ取り上げて、荒俣ワールド風にしたもの。氏のお得意のパターンですが、この図版がなかなかいいんですよ。ホント。個人的にもこういうの好きだし、今の時代にはかえって、この不可思議な挿絵が新奇で斬新でもあり、いかにもマニア向けってカンジがいいです。でも、金にはならないんだろうなあ~きっと。

で、キルヒャーについても説明もされているのでちょっとだけ、要約すると。17世紀のイエズス会士で叡智の万人ともいうべき役割を果たした人物。カトリックに対する科学の攻撃(ガリレオ等)が始まりつつあり、それに対する防戦側の立場に立ったうえで、ありとあらゆる知識をキリスト教的価値観の下で、合理的に再構成していこうとした、まさに博覧強記の偉人とのことです。天文学、物理学はいうに及ばずエジプト学に至るまでありとあらゆる学問的領域にキリスト教的論理の下で統合していく学問的幅広さは驚嘆に値します。本当に、凄そうですね。まるでかのアリストテレスのようです。

そんな当時の超一流の知識人が書いた本の中から、さらに興味深い図版がたくさ~ん引用され、解説されているんですから、ホント見て楽しめますね。暇な時にゴロゴロしながら、眺めるのは至福の時でしょう。で、具体的には「ノアの箱舟」とか、GOOD!
だって、箱舟の構造図がついているんだよね。よくあるような、船の構造図みたいなカンジで。妙にリアルに。しかも念の入ったことに、その船の船室の配置図まであり、どこにどの生き物を入れるか、えさや人はここに、とか詳しく書かれている。ど・どうしてそんなことまで分かるのか?いくら合理的に推論した結果、きっとこうでしょうと言われても・・・???しかし、それをイエズス会が教育を担当していたハプスブルク家のカルロス2世に教えていたというんだから、帝王教育もここに極まれりですね!!アレキサンダー大王を教育したアリストテレスにも負けてないですなあ~。素晴らしいです。

パラダイス世界地図には、アトランティスがしっかりあるし・・・。パラダイス(左、挿絵)の想像図は、私、目からウロコが落ちるかと思いました。だって、アダムとイブは楽園から追放されたでしょ。この図では、柵で楽園が囲われていて入れないようになってる! オイオイ~、まんまジャン!?でも、それを大真面目に本にしているあたりが大先生たる所以なのでしょうか、一度講義を聴きたかったなあ~。でも、ラテン語だから無理か(残念、涙)。

そうそう、支那図説には「大秦景教流行中国碑」がしっかり描かれています。A.D.781年に既にネストリウス派キリスト教が中国に広まっていてことを示す有名な資料。先日、読んだ「大モンゴル」にも出てきた資料で、定番ですが押えておくべきでしょう。

ストラホフ修道院図書館 あとキルヒャーが生み出したイエズス会ローマ神学大学内博物館(左上、挿絵)。これは涎ものでしょう。キルヒャーが趣味に走って(綺麗にいうと、学問的好奇心から)作った博物館。ありとあらゆる資料が集められたようです。アルファベットが描かれた化石(?)、まともな動植物、怪物(=畸形)の標本(タイのあの博物館を思い出す・・・)、ノミの拡大図、虫入り琥珀、聖母像が現われた岩や石等々。なんか、私の中ではプラハのストラホフ修道院図書館(左上、写真)が、まさにこういったたぐいのものがあって、それを延々とデジカメで撮りながら見た記憶があり。ゾクゾクするほどそそられたりする。やっぱ、これでしょ、コレ!これと禁書があればPerfect!! 

そしてそして、このイエズス会ローマ神学大学内博物館には、あの澁澤龍彦大・大・大先生(物心ついてから澁澤氏の本でヨーロッパを理解した人なんで)がいらしたというのだから、もう行くしかないね。今は、ここにあった所蔵品はチリジリになってしまって散逸してるらしいのですが、一部は現存してあるそうですから。機会があれば行ってみたいリストの一つですね。

荒俣氏よりも先んじてキルヒャーに注目してたのも澁澤氏らしいです。まあ、澁澤さんそういうの大好きですからね。プリニウス同様に。おかげでその影響下の私ときたら・・・・(不問にして)。とにかく、見て楽しい本です。大人の絵本ってとこでしょうか。最初の数ページ以外は図版ばかりですし。うん、とても楽しめた本です。このシリーズのいくつか読もうかな。好きなものと興味ないものも結構あるけど。
posted by alice-room at 01:06| Comment(0) | TrackBack(1) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
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