大変有名な短編である。ある朝起きてみると、何故か虫になっていた。そしてその虫の身体で人間としての思考をしているという不条理且つ不可解な設定でいながら、何故か段々と違和感がなくなり、主人公の思考と行動が自然に思えてしまう。『外見』が変わっただけで、態度が変わってしまう家族が普通に描かれており、主人公との関係がある意味、『見てくれ』だけで既定されていたことにあらためて気付かされるのも妙にリアルだ。決してひどい親や妹ではないのだが、やっぱりこんなふうになるのが普通なのだろう・・・。
この話は以前も読んだことがあるが、全く話を覚えていなかった。今回の記憶もすぐ忘れてしまいそうな気がする。逆に言うと、それぐらい日常的な感覚に溢れているので、状況設定の特殊性と対称的な割に自然に感じられてしまうのがまた不思議でもある。
本書を読んでどうこういうような本でもないが、ちょっとだけ気にかかるかもしれない。カフカの著書「城」には、もっと濃厚にプラハという都市独特の存在感が反映されているが、本書もやはりプラハの感覚がつきまとう、ような気がする。錬金術師や魔女が跋扈するあの都市では、気付いたら虫に変じているくらいんよくあることなのだろう(そんな訳ないんだが・・・)。
私が実感したプラハの印象が、どことはなしにカフカの小説には感じられてならなかったりする。
私にとっての「変身」は実はカフカではない。幼少の頃、見た漫画でカフカの変身を題材にしたものがあった。そして未だに、私はこの漫画で覚えた印象を通してカフカの変身を捉えてしまったいる。しかもこの漫画では、虫に変身したザムザ(主人公)が、残飯を食べて成長して蛹(さなぎ)になり、やがて一匹の虫として羽ばたいていくのが非常に強列的だった。彼は人間という殻を破り、殻を捨て超越した存在になったことを描いていた。
カフカに触発された作品としては、なかなかに秀逸と言えよう。どこを探してもその本は見つかっていない。
変身 他一篇(amazonリンク)
alice-roomさんが仰っているマンガは、犯罪者は動物に改造されるという未来を舞台にした短編でしょうか?
それなら、たぶん手塚治虫の「ザムザ復活」だと思います。これは『メタモルフォーゼ』という変身をテーマにした短編集に収められています。
僕は手塚治虫漫画全集版で持っていますが、おなじ本が、Amazonに一点だけ在庫があるようです。
>alice-roomさんが仰っているマンガは、犯罪者は動物に改造されるという未来を舞台にした短編でしょうか?
あっ、確かそんな内容だった気がします。よく私の言葉足らずの説明でお分かりでしたね。すごい!! 本当に情報有り難うございます。強烈な印象でずいぶん昔に読んだはずですが、未だにところどころを断片的に覚えています。amazon早速覗いてみます。