
本書はゴシック建築を思想的・建築学的に深化して捉えた記述(フォン・ジムソン「ゴシックの大聖堂」、ゼーデルマイヤ「大聖堂の生成」、パノフスキー「ゴシック建築とスコラ学」etc.)に対して、相互的影響という観点からゴシック建築全般について記述した包括的且つ詳細な歴史書である(訳者あとがきより)。
目次を見ても明らかなように、まずはゴシック建築の定義から始まり、その定義を構造的定義・空間的定義・歴史的定義・図像学的定義の4つの観点から位置づけようと試みる。「ゴート人による、ゴート人様式の」と当初言われた由来とは別に、現在においてもその定義には種々の説があり、明確な定義をなしえていない事が述べられる。それと共に現在においてそれぞれの立場からの定義が明らかにしてきた研究の成果を踏まえて、よりゴシック建築の実像に迫るべく概観する。
その後、具体的に個々のゴシック建築を比較しながら、地方ごとに微妙に異なる部分と明らかに影響を受けている部分、影響を与えている部分を見ていく。
また、その比較はフランスを中心にスタートしながらも西欧各国に広がっていき、それがどのような国際的色彩を帯びるのかについても解説をしている。
これもゴシック建築を考えるときに目を通しておくべき資料なんだろうね、やはり。そこそこいい感じですが、値段がねぇ~高い(涙)。どうしてこんなに高いかなあ~。大判の本で場所をとるうえに値段も高くて踏んだり蹴ったり、図書館で借りてみてますが、手元に置いておきたい基本書なんじゃないかなあ~? う~ん、買ってしまうか悩んでいる最中です。
そうそう、個人的にメモ。
今、SD選書でアンリ・フォションのゴシック(上下)を読んでいるんだけど、アンリ・フォションの弟子が本書の著者ルイ・グロデッキなんだそうです。しかもグロデッキはアメリカに渡ってパノフスキーのもとにいたそうだし、狭い世界だなあ~。ちなみに本書を訳された前川道郎氏はルイ・グロデッキの元にいたそうで、みんな弟子と師匠の関係なんですね。う~む。
グロデッキはロマネスクとゴシック芸術、ステンドグラスの権威なんだそうです。こういった関係を頭に入れてから、本を読んでいくと役に立ちそうです。
そういえば、ゴシックの図像学的定義でエミール・マールのことが出ていましたが、中世図像学の大家であるエミール・マールはこの場合、どういう位置付けになるんでしょう? お弟子さんとかで有名な学者とかいれば、そういう人の著作も読んでみたいなあ~。
私の場合、その辺の情報が入らないから適当に面白そうなものでゴシック関連の本を読んでいるけど、こう考えるとみんな相互に影響しあっているんですね。ふむふむ。
【目次】
第1章 定義と学説―歴史的・物的状況
第2章 12世紀のゴシック建築
第3章 ゴシック建築の古典期
第4章 地方的様式―イギリス
第5章 ドイツと神聖ローマ帝国のゴシック
第6章 イタリアとイベリア半島のゴシック
第7章 むすび
図説世界建築史(8)ゴシック建築(amazonリンク)
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ゴシックと現代/吉川逸治~「SD4」1965年4月より抜粋
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
ゴシック建築の成立/堀内清治~「SD4」1965年4月より抜粋
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
ゴシック空間の象徴性/高階秀爾~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
デモンズ3(1988) ダリオ・アルジェント製作