この本は、図版がこれでもかと大きく豊富に入っているので実にイメージしやすいうえに、執筆陣がその分野の第一人者と思われる複数の人物によって執筆されている。正直言ってこれだけの人物によく依頼できたものだと思う。
うがった見方をすると、学研が現在のように斜陽になる前に子供相手の教材でぼろ儲けができていた時代に豊富な資金をつぎ込んで、作り上げた美術全集物なのだと思う。今では絶対に採算があわないはずだし、これだけのものを作り上げる気概も執筆陣を集める事はできないのでは?などと思ってしまうが、それぐらい内容的には素晴らしいと思う。
ただね、あまりに・・・あまりに大判過ぎて正直邪魔になりそうな気がする、っていうか確実に邪魔。大きさ的にはまさに百科事典並み。こんなの買ったら、部屋の床がまた危なくなりそうだもん(涙)。
でも内容的には、いいんんだよねぇ~。
ちょっとだけ内容をメモ。
大聖堂の装飾は「文盲の人々のための聖書」であったには違いないが、だからといって全てが一般の人々に分かり易い伝説や物語の絵解きであったわけではない。ルイ・レオーが正当に指摘しているとおり、「大聖堂というこの壮大な書物の中で、聖職者のための高度に専門的な章と一般の人々の教育のためのの章とを区別しなければならない」。
←これって、私的には目からうろこ状態です。まさか専門家向けの図像があるとは・・・。今後、心して彫刻やステンドグラスを見なければ!!
旧約と新約の一致:聖アウグスティヌス「神の国」
旧約の中に新約が隠されており、新約の中で旧約は顕(あらわ)になる
=エミール・マールの文章でも読んだ覚えがありますが、これを知らずしてゴシック建築の図像は理解できませんね。また、この考え自体は以前からあったものだそうですが、ゴシック時代に劇的な熱心さで表現されるようになったそうです。しかもこの熱心な表現を最初に始めたのが、あのシュジェールだったとは。いやあ~やっぱりやり手は違います。
番外のメモ:
2世紀 アレクサンドリアで編纂された本「フィジオロゴス」は別名、動物の黄金伝説と呼ばれる。
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「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
ゴシックと現代/吉川逸治~「SD4」1965年4月より抜粋
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
ゴシック建築の成立/堀内清治~「SD4」1965年4月より抜粋
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
ゴシック空間の象徴性/高階秀爾~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
デモンズ3(1988) ダリオ・アルジェント製作
2006年09月18日
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