2011年12月15日

サン・ドニ修道院長シュジェール~読書メモ

「サン・ドニ修道院長シュジェール」シュジェール 中央公論美術出版からの抜き書きメモ。
13装飾類

こうして我々は、この母なる教会(修道院)への愛情から、これらの古く且つ新しい装飾の多様性について頻繁に思いを馳せた。

その間にも我々は、あるいは聖エロワの驚嘆すべき十字架が他の小十字架とともに、あるいは俗語でクリスタと呼ばれる比類なき装飾が金の祭壇の上に置かれているのを心の底から歎息して眺め、そして私は云った。

「全ての宝石は汝の覆いである。紅玉髄、トパーズ、碧玉、カンラン石、縞瑪瑙、そして緑柱石、サファイア、紅玉及びエメラルド」。

これらの数のうちで紅玉を除けば欠けるものはなく、かえって極めて豊かに満ち溢れていることは、宝石の財産につき知識を持つものによって、最高の歎賞をもって明かにされた。

こうして私は、神の家の飾りへの愛から、時として多彩な宝石の美が、私を外界への配慮から引き離し、さらに真摯な観想が物質的なものから非物質的なものに移行させつつ、多様な聖なる諸徳を追求するように説得した時に、私は私があたかも何処かこの地の外の空間にいる思いがした。

この空間は、ことごとく地の汚泥の中にあるでもなく、ことごとく天の清浄の中に存在するでもなく、この下の世からかの上の世へと、神が與え給うて、上昇の方法によって移行させられ得るのである。
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それら財宝の評価し難く比類なき価値については多くの人々の判断に委ねられねばならない。各人はその心の中で決めればよい(「ローマ信徒への手紙」)が、私にとっては次のことが至極気に入っていることを告白する。

即ち何であれより高価なもの、何であれ最も高価なものは至高の御聖体の授与に何よりも役立つに相違ないということである。

若しも金の献酒瓶や金の小瓶や金の乳鉢が神の口から出た言葉や預言者の命令に従って雄山羊の血や子牛や赤毛の牝牛の血を集めるために使われたすれば、イエズス・クリストの御血を受けるためにはそれだけ立派な金の器や宝石や、何であれ全被造物のうちで最も高価なものが、継続的な服従と全き信仰のうちに使用されねばならない。

たしかに我々も、我々の財物もこのことには充分ではない。若しも新しい創造によって我々の本質が聖ケルビムと聖セラフィムとのそれに変化するとしても、我々はかくも大いにして余りにも云い表しがたい御聖体に対しては、不十分で相応しくない奉仕を捧げることであろう。

しかも我々は我々の罪の、余りにも大いなる赦しを得るのである。しかして誹謗する者達は、この務めには聖なる心と清い魂と、忠誠な志しがあれば充分である筈だと反論する。

そして我々は特に、このことが不可欠にして適切な条件であることを承認する。

さらに聖器類の外面の装飾に加えて我々は聖なる供儀の儀式においては、内側をことごとく清らかにし、外側をことごとく高貴にして仕えまつらねばならぬという以上の義務は絶対に無い、と言い表すものである。

何となれば我々は、すべてにわたって一般的に、我々の救世主に最も正しく仕えまつらねばならぬからである。

救世主は、すべてにわたって一般的に、例外なく、何かを我々に提供するを拒み給わなかった。

救世主は、その性質に我々の性質を結び付けて驚くべき一体となし給い、又我々はその右側に置いて、我々が彼の王国を真実に所有することを約束し給うた。(「マタイ福音書」)

我々の主は、世々限りなく生きて、統治し給う(「黙示録」)。
こんだけ宝石集めて、キンキラキンで凄いぜ!っと(超・俗物的とも思われる)絶世の美を語った後、でも、それは現世から天上の世界へと繋がることが大切で、物質的なものから非物質的なものへ移行できると確信しています。

勿論、これこそが『光の形而上学』って訳ですね。偽ディオニシオスの。

汚泥から清浄へ・・・というのは、仏教でいうところの蓮の花を思い出してしまうのだけれど・・・。厭離穢土、の俗界から離れようとする割に、坊さん達がキンキラキンの仏像や伽藍を作るのと似たような感じも受けるのだけれどね。

そういやあ~シトー派のシンプルな建築は、禅宗の洗練されたシンプルさにも通じるような・・・。まあ、余談です。

以上、前半部分で以後、後半部分について。

クレルヴォーのベルナールだっけ?
贅沢し過ぎとか批判しまくりのうるさがたで、クリュニーとかここサン・ドニ修道院とかも贅沢で華美に過ぎると厳しいこと言われてたはず。

それに対する弁明ですよね、後半は。
神の世界の完璧さには、この世の最高のものでも色褪せるぐらいで大したことないんだけど・・・、それでも罪深い私達を大いなる赦しを頂くんだから、可能な限り、最高のものでお仕えしなくては・・・というお話でした。

確信犯ですからね。恐らく心底信じていたんだと思いますよ。
類い稀な政治手腕と、それを支える強い信念。超一流の指導者の性質を備えていたことが分かりますね。だからこそ、彼の元でゴシック建築は、実現化した(具現化した)んだと思います。
4青銅で鋳造し塗金した諸門について

ところで我々は、鋳造家を集め、彫刻家を選んで主扉口を建てた。それらの扉には、救世主の御受難と御復活とさらに、御昇天が描かれているが、これらは多くの費えをかけて作られ、高貴な入口に相応しくあるために、それらの塗金に多くの費用をかけた。

さらに又我々は、右側には新しい扉を、しかして左側には古い扉を、モザイクの下、即ち門のアーチ(タンパン)の下に取り付けさせるように努力したが、このことは新しく、慣行に反してさせてことである。

さらに我々は、塔と正面の上部を銃眼に作り替えるように計画したが、これは教会堂の装飾のためであり、又万が一の場合がそれを強いた際の便宜の為でもある。かくして我々は、献堂の年を、金文字で銅板に、それが忘却に委ねられないように、次の通りに刻み込むように命じた。

シュジェールは、彼を養い育てた教会堂の誉れのために努力した。
殉教者ドニよ、彼は汝のものは汝に帰して、彼が汝の祈りによって天国を分かち合うものたらんことを祈る。教会堂が奉献されたる御言葉の年は、千百年四十年。

さらに扉の詞は次の通りである。

 誰であれ汝が扉の誉れを高めんと欲すれば、黄金や費えではなく、技の苦労を讃えよ。
 技は高貴に輝くが、それは高貴に輝く技が心を輝かせて、心が真の光を経てクリストゥスこそその真の扉たる真の光に至らんがためである。
 その中が如何なるものたるかを、黄金の門は明かにする。
 鈍き心は物質を経て真実へと上昇し、先ずは沈んで、この光を見て蘇る。

そしてまぐさ石には、恐るべき裁判官よ、汝のシュジェールの請願を受け容れよ。汝の飼う家畜の群に我を英明に受け容れしめよ。
私がサン・ドニに行った時に撮った写真にしっかり写っているあの門ですよ!

モザイクは現在、失われていると解説には書かれてましたが、当時としては慣例に反する相当大胆な試みだったようです。そういわれると、ますます見たかったですね。

扉の詞にもありますが、ここにもあれだけ宝石を集めて飾り立てたもののそれ以上に『技』(=技術)の冴えを訴えています。そして、その辺のくだりがまさに『光の形而上学』を現していると解釈される訳だったりします。

いやあ~楽しい♪
【本書内での説明】

829年9月に、ビザンティン皇帝ミカエル2世はフランクのルイ敬虔王に、5世紀の哲学者ディオニシウス・アレオパギータが著したとされる「天の位階について」(De Hierarchia celesti)の一写本を贈り、同帝は同年10月8日(聖ドニの祝名日の前日)に、これをサン・ドニ修道院に贈った。

サン・ドニ修道院長ヒルドゥイヌス(Hilduinus)は、そのラテン語訳を作らせたが、これと同時にこの哲学者、通称 Psedo-Dionysius とパリの初代司教にして、デキウス帝(Decius)の大迫害で殉教したとされるディオニシウスと「使徒言行録」17章34節に記載されている、改宗者にして後のアテネ司教、アレオパゴスの議員ディオニシオの三者を意識的に混同して、殉教者ディオニシウスとガリアの使途とする使徒伝承を作り上げた。

この書はその後、シャルル禿頭帝の命令で、ジャン・スコット・エリジェーヌの手でより良いラテン語訳が作られて、サン・ドニ修道院のみならず、全ヨーロッパ的に思考の底流となった。

シュジェール自身も若い修道士時代にサン・ドニ修道院の図書館でこの書に触れると同時に、恰度その頃、この書の改訳と註解を完成したサン・ヴィクトル修道院のフーゴ(Hugo)の影響を受けた。
原典の翻訳ではない、本書の説明部分です。目次の序1とか序2の部分。

「天上位階論」の伝播経路が紹介されています。あれっ?エウリゲナじゃなかったっけ?(時代が違うか?)まあ、いいや、今度注意して調べてみよう。

ディオニイシウスがあれこれ混ざって混同されている件、ここでは故意によるものと書かれていますね。まあ、ありがちですけどね。故意と希望と願望と要望が入り混じった結果かと。

宗教的情熱と経済的利益が両立し得た条件下、それらはたやすく飛躍しがちなもんですから。

ここでは載せてませんが、他にもなかなか興味深く有用な資料があるので読んどくべきでしょうね。1日を費やしただけの価値はありました(笑顔)。


posted by alice-room at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 【備忘録C】 | 更新情報をチェックする
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