2011年12月31日

「全貌ウィキリークス」マルセル・ローゼンバッハ、ホルガー・シュタルク 早川書房

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【本家サイト】http://wikileaks.org/

もう2週間前になるかな?読了してから。

今年最後である意味、本当に目から鱗で、絶対に読んでおくべき本として筆頭に挙げても良いでしょう!全力でお薦めします。

今年一年の中では一押しですね。

iPhoneは世界を変えたと思いますが、wikileaksは、現実の世界を本当に生で一般大衆が見れるようにしたノーベル平和賞ものの大革命だと思います。
(但し、決して綺麗事の行儀の良い組織、存在ではない。関わったものを全て不幸にしかねない『パンドラの箱』であり、世界を良くするのか、悪くするのか、一概に判断出来かねない代物です)

今の時代だからこそ出来、世界各国がまさに情報を管理統制しようとしている今だからこそ存在出来ているかもしれないまさに稀有な組織だと思います。

しかし、出るは出るは国際政治がいかに狐と狸の化かし合いで、情報と軍事力がモノを言う世界であることを痛感させられます。いやあ~冗談抜きに、魂が涙を流すくらい、虚構に満ち満ちているよ。

本書を読んでいろいろな意味で胸がいっぱいになります。

アメリカが自国民のみならず、ネットに流れる世界中のありとあらゆる情報を収集し、解読し、分析しようとしていることは、周知の事実ですが(先日もE-MAILが政府の安全保障上の理由で読まれてたことがニュースで流れてたけど)、まさに『検閲』、表現の自由なんてナニソレおいしいの?状態。

アメリカである意味、建国の思想であり、何よりも尊重されることを憲法でうたっている『表現の自由』が本当に建前だけであることをこれほど露骨に且つ、徹底的に晒したのも衝撃的です。

そりゃ、一民間団体を潰すためにありとあらゆることで圧力をかけてる姿は世界中のまさに晒し者以外の何物でもないもんね。まあ、国連内部のあちことに盗聴器しかけるは、外交官に思いっきりスパイしろと強要したりの公電がまんま生で公開されたら・・・そりゃ、外交的な体面は地に落ちたわけで・・・ネ。

あの超やり手のヒラリーさんが、無能なオバマさんの下で苦労に苦労をさせられたあげくのまさにトドメでしょう。あっというまに20歳以上老け込んだあの姿、あのやつれかたは、その背後の苦労も想像に難くないです。

もっとも、日本人の政治家なら、逃げ出すか投げ出すだけで踏み止まって、それでも最大限の弥縫策に奔走しているのは、やっぱり凄い政治家だと思います。

でも、本当にアメリカって酷い。
まあ、そのアメリカの片棒をついで、子分よろしく尻尾を振っている日本国民としては、恥ずかしい限りだし、相変わらずの大本営発表の報道しかしない日本のメディアは、更に最低ではあるものの・・・・、それを存続させている日本人は、う~ん、年末なのに悲しさ半端無いです。

まあ、ここ数年基本自分の部屋にはTVを置かず、極力見ないようにはしてますが・・・まだBBCの方がまし。

そういえば、何年か前にBBCの番組でも見たけど、一般人を何でもないのに、アメリカ人兵士が勝手に誤解して打ち殺してたの報道してましたね。

本書の中では、イラク戦争時のことなども書かれています。

ロイターのカメラマンが乗っている車をあろうことか軍用ヘリのアパッチで銃撃する内容も紹介されてます。銃撃を逃れて生きていたのをご丁寧にも再度打ち殺したりね。負傷者を収容する為に来た車に子供達が乗っていても、おかまいなしにまた銃撃。

それが全部記録されていて軍内部の資料となっていたのを、軍関係者がまさにリークして既に世界中に公開されているわけですが、そういう資料が山ほどあるわけです。

さすがはアメリカ軍、強いっす!
天安門事件で民主化運動してた学生らを戦車で轢き殺すような非人道国に教え諭す、民主主義の鏡のような国の軍隊さんです。

もっとも戦争だったら、どこでもこういうのあるんだけどね。
さんざん、日本人も戦争中やったし、戦争でそういうこと無いなんて方が例外でしょう。

それでも政府が記録でしっかりと分かっており、それを隠して知らぬふりしていた事実をあえて、暴露しちゃった訳ですから・・・そりゃ、テロリストと同等以上の危険と看做されるのも止む無いでしょう。

国粋主義者がさっさと殺せと、大真面目に語ってるのは、本気だと思います。ましてアメリカだもん。そういうのがお得意の人達山ほど抱えてるだろうし・・・・。

大義名分の好きなアメリカさんでも、体面かなぐり捨てて、別件逮捕よろしく合意の性交渉をレイプとか捏造したり、銀行口座を拘束したり、サーバーを置かせないとか、まあ、当然か。

とにかくいろんな意味で衝撃です!!
と同時に、あれほど世界で話題になっていたのに本書を読むまでサイトを訪れていなかった私の愚かさも呪いたくなりますね、ホント。

【本家サイト】 http://wikileaks.org/


さて、そもそも本書はウィキリークスを立ち上げたジュリアン・アサンジ公認の本ではありません。

ウィキリークスは、元々投稿された文書の内容の真正さだけを判断し、それ以外の価値判断を含めずに生ソースを公開するというのが基本だったそうです。

ただ、その文章や記録に記された内容のあまりの影響力から、関係者の命にも関わる事態も相当の確度で予想され、内容を精査して必要に応じて一部をマスクする必要があること。その為の判断と作業を行えるだけのノウハウを有するもの。

同時に大衆がいくら事実を公表されても理解し、判断するだけの能力を持たない事から、大衆へ伝える為の媒介としての伝統的メディア(TVや新聞等)の必要性もあり、ウィキリークスは従来メディアと結び付くようになったそうです。

その際、ドイツのニュース週刊誌「シュピーゲル」の記者及び編集者として関わった関係者が本書を書いてます。相当詳しい内部事情についても書かれていると当時に、客観性を保とうと一定の距離感を置く姿勢も出ていて、アサンジについては、非凡な長所と同時に、人間としてかなり欠落があり、反体制的な短所があることもしっかり書かれています。

本書だけでも全てを信用するのは、危険ではありますが、複数の情報源から判断するにしろ、本書はきっと読む価値がある本だと思います。しかし、本書(翻訳版)が何故、早川出版からなのかは・・・いろいろと裏がありそうな気がしないでもない。

大概の新聞社やTV関係は、子会社に出版社持っているのにそいつらは、放置するわけですよ。一番、その衝撃を知っているはずなのにね。ダンマリを決め込むというのは、うがった見方かとは思いますが、日本での報道姿勢や報道の内容を見ていても、どうかと思いますね。

まあ、NHKスペシャルでもおおぴらに嘘を報道しちゃうぐらいだしね。
ワールドビジネスサテライトで、注目の躍進IT企業として紹介されていた会社の中の人としては、裏とかやらせ見過ぎて、どれも信用できません。実際、消滅した会社もあるし・・・。

どこの会社も一緒ではありますけどね。

本書の内容に戻ります。

最初の頃の大きなリーク情報元は、中国の国家的なハッキングの過程で、ネット上に放置され、漂っていた膨大なデータだったそうです。中国はその辺凄いもんね!

しかし、それがネット上に漂っているとは・・・・。
私がネット上で見つけられるのは、○○○○のデータぐらいだし・・・orz。

10年以上前かな?
IBMやら何やらの中国出身プログラマーが中国政府に脅されて、企業内の機密情報を流し、それらがバレて大騒ぎしていた頃があったけど(日経とかでもよく記事になってたね)、そういった頃からの伝統ですね。

今の中国政府の国内の情報統制(ネット等)なんかの凄さも凄いらしいし。
うちのブログも中国からは見れないって、誰か教えてくれて、試してみたら、本当に見れなくて笑ったことがあったけど・・・・。まあ、それおいといて。

それからは、今もアメリカで大きく話題になってますが、アフガン戦争の日誌を暴露した同性愛者の元兵士マニング。抑圧された中での孤独感もあり、本来あってはならない情報分析官がリークしちゃったそうです。

本人が自分がやったことを暴露してたら、そりゃ捕まるって!
知能指数が高い事と、人としてバカかは別物ですからね。

仕事関連で知った情報を、外部に漏らすってのは、社会人として以前にましてこの場合は社会的影響から見てもアウトでしょ。どれほどの人に迷惑をかけるか分かっていない。

また、どんなに防止しようとしてもやる奴はやる訳です。
大概、その抜け穴を考えれば出来ないことなんてないでしょう。まして部外者ではなく、内部関係者なら。

その辺は人としての生き方だよね。
どんなに不満や不平があっても、自分で納得がいかない不誠実な生き方や人生は歩みたくないもんね。
このマニングは、もっとも確信犯らしいから、国家的利益を考慮したら、見せしめとして死刑にでもするしかないんでしょうが・・・・。

う~ん、それ以前に日本のイージス艦情報の漏洩は、あれこそ死刑だと思うし、アメリカだったら、あのフパイの乗った飛行機ごと打ち落としかねないでしょう。必要があれば、やると思う。

しっかし、本書は本当に考えさせられることが多いです。
アメリカが解読できない暗号化を必死になって阻止し、自分達の知らない情報があることに我慢ならないというあの姿勢は、ホント大国のエゴだね。私的には、中国とアメリカって紙一重の双子に映るんだけど・・・・。

本書では、本来自由であったはずのネットの世界が大国の管理下、統制下におかれることをヨシとしない人達があつまっていく姿も描いています。元々アサンジもそちらの人だしね。

善悪の価値判断を含まない元々の単語としての『ハッカー』だったわけだし。

物欲もなく、ネットにつながる環境さえあれば、寝るところは、ソファだろうが、どこだろうがおかいまいなし。ひたすらPCで猛烈に作業をしまくる。

友人達が情報リークをされた側からの反撃で殺された経験もあり、極度に猜疑心が強く、知り合いの家に泊まり歩き、住所不定のまさに現代版のヒッピー系の人だそうです。

無から有を作り出し、個人が本当に国家と対決しているのは、まさにこの非凡の人物の存在無しには有り得なかったんだと思います。PAYPALで私も寄付しようかと思ったよ。Tシャツ買うかな?

まさにアメリカ政府から、国家の敵としてのお墨付きをもらったぐらいだし。政府の内部文書も公開されてるそうです。

でも・・・友人にはなりたくないかも・・・・?
とにかくいろんな意味で、勉強になることが多数書かれています。
正月番組や紅白なんて見るぐらいなら、本書を読みましょうね。

日本のTVで見る価値のあるものなんて、ほとんどないから・・・・。

今のユーロ通貨の危機に直結するアイスランドの銀行の問題もここが絡んでたんですね。同時に、何故あの国が非常に国家的IT化の進んだ国だったのか・・・どっぷりアサンジ他、ハックティビスト達の知恵を活用していたとは・・・知らなかったことばかりです。

私が無知なだけなのでしょうが、日経ではそんな記事読んだことなかったような・・・。
気がついてないだけかもしれませんが?

とにかく、くだらない勝間氏等のビジネス書や日本のメディアを見たり読んだりするんだったら、本書で目を開くべきかと・・・・。『事実は小説より奇なり』この言葉は生きていることを実感できます。

うちのブログを読んだ方には、強くお薦めします。(但し、本書の内容が正しいかは自分で判断して下さいね)

【追記】
私は、全く知らなかったのですが・・・・朝日新聞がwikileaksをソースにして独自の報道をやっているようです。迂闊すぎな私。情報弱者ですね。反省。

情報の信憑性確認、厳選し公開〈米公電分析〉朝日新聞社
【目次】
プロローグ

第1章「国家の敵」ウィキリークス
逮捕前日のジュリアン・アサンジ
ウィキリークスの登場が投げかける問い
情報は権力である
憤怒に狂うアメリカ政府
無視された米軍のウィキリークス・レポート
「僕は、大物たちのもくろみを台なしにするのが大好きなんだ」

第2章ジュリアン・アサンジとは誰か
「あの頃はトム・ソーヤーみたいだった」──オーストラリアでの子供時代
幼年期の終わり──継父との闘い、カルト教団との闘い
天才ハッカー誕生
NASAをハッキングした少年
結婚、逮捕、裁判
ウィキリークス構想の芽ばえ
暗号戦争──アメリカに勝利したハックティビストたち
「政治活動1 ・ 0」では世界は変わらない

第3章ウィキリークス誕生
発足──拠点もなく仕組みもなく
アサンジがひた隠す、 「中国パッケージ」の秘密
本格オープン前の焦り
ケニア──初めての成功にして汚点
スティーブ・ジョブズはHIV陽性?─リークの真偽と提供者の秘匿
ユリウス・ベア銀行の失敗─隠すほどに広まる秘密
ダニエル・ドムシャイト゠ベルク──ナンバー2になる男
つきまとう資金問題
ウィキリークスは右派か左派か?

第4章「コラテラル・マーダー」ビデオの公開、マニング上等兵の背信
超弩 ど級の素材、破られた鉄則
ジャーナリズムの聖地、アイスランドへ
プロジェクトB」──イラク民間人爆撃ビデオ公開への道」
アサンジの猜疑心
ワシントンでの記者会見
反響
ブラッドリー・マニング上等兵の孤独
米国史上最大のデータ窃盗
「こんなふうに何でもしゃべっちゃって、自分が信じられない」
ウィキリークスの情報源が初めて割れる

第5章大手メディアとの協働、アフガン戦争記録のリーク
マニング逮捕の衝撃
ロンドン──報道機関とタッグを組む
素顔のジュリアン・アサンジ
進行する極秘プロジェクト
アフガン戦争日誌、一斉公開
オバマの反応
アフガン文書のリークは何を意味するか

第6章内部崩壊の危機、イラク戦争日誌四〇万件公開の衝撃
アサンジ告発──スウェーデンの二人の女性
ウィキリークス内部に走る動揺
ドムシャイト゠ベルクの失望
相次ぐ主要メンバーの脱退
「ウィキリークス、イラク戦争日誌四〇万件を一挙公開」
世界が驚愕したイラクの真実
「私にとってウィキリークスは内部告発の未来です」

第7章世界が震えたアメリカ外交
公電流出
ヒラリー・クリントンが戦慄した日
「ニューヨークタイムズ抜きで行こう」
「ウィキリークス自体がリークされたということだ」
紳士協定成立、 「プロジェクト8」始動
公電が物語る米国政府の真意
国連をスパイせよ──ヒラリーの極秘指令
各国の反応

第8章包囲されたウィキリークス
ブラッドリー・マニングの逮捕
強まるウィキリークス支持者への圧力
アサンジに迫る当局の手
サイバー包囲網
サーバー遮断──圧力に屈したアマゾン
送金ストップ、アクセス
遮断
インターネットの支配者は誰か──蜂起する支持者たち
アサンジ、国際指名手配へ
逮捕


第9章ウィキリークスの未来、世界の未来
権力、メディア、ウィキリークス
ジャーナリストのジレンマ
機密文書の公開は民主主義をおびやかす?
すべての情報を公開すべきか─ウィキリークスと伝統的ジャーナリズム
アサンジの反論
ウィキリークスの誤算
「国境なき危機の時代」における、ウィキリークスとメディアの課題

エピローグ
謝辞
原注
全貌ウィキリークス(amazonリンク)

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posted by alice-room at 19:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
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