2012年01月03日

「西洋挿絵見聞録」気谷誠 アーツアンドクラフツ

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私が一番好きな中世の装飾写本とは異なる、比較的新しい時代に至る豪華印刷本系の本を扱った内容です。
製本や装丁、蔵書票までも含めた『モノ』としての本を愛する愛書家向けの本になります。

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思想や知識を伝達する、という書かれた内容自体の希少性・重要性ではなく、アクセサリーというか技術工芸品的な美術品としての側面に着目し、読むものではなく、所有する、挿絵を愛でる、そういう用途での解説になります。

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モノとしての本には、それほどこだわりの無い私には知らない事が多く、大変勉強になりました。

おそらく使わない知識だとは思いますが・・・本書には、ふんだんに美しい挿絵が多く、それらを眺めて文書を読むだけでも十分に楽しい本です。

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その他に、中世以来の大型本から小型本、現在の文庫につながるアルドゥス文庫の話などは、大変興味深かったです。

小さく携帯性を考慮しただけでなく、読み易く、何よりもテキスト・クリティークを徹底することで内容の正確性を確保したという点などは、何よりもきっと強いセ-ルス・ポイントになったことでしょう!

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それ以来の流れを組むのが岩波文庫とかというのは、なるほどねぇ~。成功する王道的ビジネス・モデルって訳です。納得。

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本書は、書誌学的な知識と同時に、個別具体的な個別の本のエピソードが多く、著者自身が愛書家として実体験に基づいて、自分の本について語る部分が大変多い。

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よく知らないけど、ご自身でブログ等もやられていたようで、そこに書いた文書をそのまま載せていたりするようです。あるいはあちこちのメディアでコラムとかとして書き連ねたものものを、エッセイみたいにしてまとめた本でもあります。

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一応、関連したものをまとめて章立てらしくしていますが、基本は、独立したコラム、エッセイを集めたものなので、一話完結って感じですね。どっから読んでもOK。 

気楽に関心のあるところを拾い読みしても問題無いです。

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一度くらい軽く読んでおいてもいいかな~。
あえて、お薦めはしないし、万人向きではないかも?
特定のオタク向けってぐらい。

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個人的には、確かにその情熱は凄いと思うんだけど、所詮印刷本だし・・・と思ってしまうのは、モノを知らないから言えることかもしれません。

でも、装丁に合わせて内容を豪華にする・・・・分かるんだけど、なんだかねぇ~。
いささか野暮って感じがしないでもない。

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私的には、やっぱり本の内容、そこに書かれた知識、叡智こそが全てのような・・・・。

勿論、内容が特別であれば、装丁もそれなりに特別であって欲しい!全てが特別であって欲しい、という願いも当然あることはあるのですけれど・・・・。

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まあ、庶民の私としては、装丁に凝った高い本を買うお金で一冊でも多くの知りたい知識を与えてくれる本を買いたいです。図書館で読めるなら、買うことさえ必須条件でもないですしね。

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今は、とにかく本を置く場所を獲得しなければ、置き場所が無くて本が買えない(涙)。それが悲しくて仕方ありませんもん!

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まずは積んでる本を読まねば・・・。

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最後に、本社はモノクロですが、挿絵をたくさん紹介しています。悪くないです。

でも、うちに送られてくる稀覯本専門の古書店さんからのカラーカタログの本の方が綺麗です。値段も本書で紹介されているほど安くないですし・・・当たり前かもしれませんけど。

あと、以前にどっかで入手したフランス語のオークションカタログの装丁も本書以上に凝っていました。

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申し訳ないけど、購入してまで読むに値する本では無いかと。図書館で借りて読めれば、十分な気がします。カラーでの図版にして欲しかった・・・それなりに面白くはあるのですが、何か物足りない・・・・・。
【目次】
西洋挿絵見聞録
ルネサンス編
ロココ編
ロマン派編
擬古典編
ベル・エポック編
西洋と日本編
番外編
蔵書票の誘惑
西洋挿絵見聞録―製本・挿絵・蔵書票(amazonリンク)

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posted by alice-room at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする
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