2005年03月16日

「日本妖怪巡礼団」荒俣宏 集英社文庫

youkai
【目次】
序 日本妖怪巡礼団縁起
第1部 東京怪異探策
第2部 崇りの発掘
第3部 関東妖怪探索
第4部 冥界との交信

~麻布七不思議、本所七不思議、稲荷のキツネ、魔都の闇、江戸のゴーストバスター、首塚の悲しみ、亡霊をもとめて、伊豆の暗夜、湘南の血みどろ、筑波のふもとの恐怖、イタコ話、霊魂の行方~
荒俣さんがお得意の俗っぽさを全面に出しながら、これでもか~と芝居がかった調子で自称「妖怪巡礼団」の名の下にミステリースポットを巡る旅。あの名著「帝都物語」で平将門の首塚を絶妙に生かしたあのセンスが再び輝きだしますと言えば、ピンとくるかなあ~。でも、これも雑誌に連載されていたものだから、読み易い反面、いささかおふざけが過ぎるキライがあるものの、トリビア的なものには事欠かないので一読の価値有り。街歩きが好きな方は、読んでおくと散歩が単なる散歩以上の楽しみになりますね!私もお休みの時にはあてどもなく、街中を散策してる人なんで。おお~、あそこのことかと思うことも多かったです。いくつか抜書きすると…。

その一つは麻布の蝦蟇(ガマ)。麻布十番祭りで各国大使館が出す屋台のエスニック料理を食べつつ、ぶらぶらするとここにぶつかりますね、麻布十番神社。この近辺に蝦蟇池という池があり、以前はガマがたくさんいてその中には化物となって人を殺す事さえあった。殺された人は江戸末期の旗本、山崎主税助治正の家臣で治正がガマ退治を命じると、ガマの精が現われ、罪を詫びて今後は当家の防火に尽くすと誓う。その後、大火が起きた際もガマが水を吹き付けて火災から守ったという伝説があるらしい。それ以降、山崎家は蝦蟇のお守りを出して今も実際にこの神社で扱ってたりする。私も数年前に行った時、連れが可愛いからと意味も分からず、カエルのストラップを購入していたのでよく覚えていたりする(お金がカエルとか安易なよくあるものだと思ったので)。しっかりした由緒ある蝦蟇様だったんですね。今年行くときは、もっと注意してみよっと。

あと、メモすべきは松浦静山著の「甲子夜話」。江戸の化物や怪事件の調査記録だそうです。松浦藩は海賊行為と海外貿易で財を為し、この静山は明治天皇の曾祖父さんにあたるんだって。しかも、鬼退治で有名な源頼光の部下、渡辺綱その人がその祖先というのですから、こちらの本も読んでおこうっと。井上円了の本とはどう違うかな???

遊女が死ぬと投げ込まれたという「投込寺(なげこみでら)」こと浄閑寺。あの吉原が近くにあることから、たくさんの遊女が死ぬとみなここに運ばれていた。「生まれては苦界、死んでは浄閑寺」という言葉が切なくなる。この本では書かれていないが、北海道ススキノにも、同様に浄閑寺のような寺があったのを私は覚えている。どこの世界に行っても、公秩序の中に納まり切らない必要悪な社会的な暗部は、ヨシやススキといったものが生えるような隔絶された土地に押し込まれ、更にそこには、底辺に近い人々を受け入れる存在としての寺がつきものらしい。それによって、怨嗟の声をあげる存在は浄化されるのやら? 

ちなみに萱場町も同様です。今も株屋さん(表現的に失礼かな?)が集まっていますが、社会的な扱いが一段低かった為に、ああいう地名(カヤ)の場所だったりします。まあ、金融それ自体もユダヤ人居留区ゲットーから始まっているという、歴史的なものがオーバーラップしますなあ~(偏見っぽい)。ちょっと元に戻すと、ここには書かれていませんが俗に吉原は「男の極楽、女の地獄」というのも有名です。初会、裏を返す、馴染み等々、日本語の基本でしょう、教養ある皆様方はご存知ですね!(う~む、私は何歳なんだ?廓言葉の辞典買うか悩んだ事もあるが…)落語とかは、そういう意味でも面白いです。本所の七不思議なんて、まさにソレ(!)ですし。

そうそう、この本の中で首塚についての解説中で特にエッ~!? と思ったのが、恩賞の為の首検分に先立ち、首が腐らないように処理をしたんだけど、その方法に塩漬けもさることながら味噌漬けも多かったそうです。腐り易い脳を取り出し、代わりに味噌を詰める。そこから脳みそなる言葉が生まれたとか。本当なんでしょうか?あまりにうまいんですけど、落語じゃないんですから???

で、谷中の全生庵における幽霊画。これは私も見たことあるし、なんども谷中の墓地巡りして有名人のお墓を見つけたりしてるのであれのことね、っと頷いてしまうことしきり。怪談で有名な落語家圓朝をしのぶ怪談も聞きに行ったしね。谷中には七福神巡りでも行ったし、デートで行ったこともあったなあ~(物好きな人もいたね)。これは確かに見ておかないといけないようなあ~と荒俣さんの選択センスに共感しちゃいますね。だから、ついついモノによっては不満もあるけど、買ってしまったりする。

あとお散歩にも最適で桜も美しく咲いちゃう隅田川沿いの牛島神社。元々は牛御前社。黒光りする撫で牛の像で有名。私も当然、撫でた経験有り。でもここも将門よろしく関東独立国家を樹立せんとした反乱分子だったとは知りませんでした。そのことを知ったのは、この本ではなく、別な荒俣さんの本から。だいぶ、影響をされていたりする。まあ、私のいるところ自体が、江戸時代の庚申塔やら鎌倉時代の石碑に不自由せず、坂上田村麻呂がやってきたので地名に「将軍沢」なんてのがあるような土地柄だけに江戸なんて歴史の浅い所は、そんなに驚いたりしませんけどね。(凄い田舎だという証明でしかないけど)

他にも興味深い話題がぎっしり。ローマを巡るなら聖人のことを知っておいた方が楽しめるのと一緒かな?東京で街歩きする前に読んどくと楽しいです。上野公園の清水寺は京都の清水寺を勧請しており、京都の清水寺で蝦夷征伐の武運を願ったのが先ほどの坂上田村麻呂(征夷大将軍)。歴史は有機的に絡みあってますね。また、東京赤坂の日枝神社は埼玉長瀞の登宝山の日枝神社から勧請しており、さらに長瀞のものは京都から勧請しているはず(?)。江戸は浅いんだよねぇ~歴史が。でも浅草のとこにある駒形どじょうとかは好きなんだけどね。今月中にまた食べに行こっと。神谷バーもここ数ヶ月行ってないしね。今日、仙台から帰ってきたけど、来月は花見で京都だ。妖しい桜の花に魅惑され、またまた旅路にと出向くか…。

とまあ、ダラダラと書き連ねてますが、基本的には妖怪系が好きなら持っておいていい本ですね。京極さんのように、くどいウンチクと違い、これは非常に浅く(意図的にね)触れていますのでお散歩のお供に。王子の狐も出ていたなあ~。花見で以前よく行ってた飛鳥山もあそこだし、誰かさんと別な用事で2・3年前は本当によく行ってかも?懐かしい場所がいっぱい出てきて為になります。もっとも、いささか低俗に過ぎるのがマイナスですが。と生意気な感想でした。

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ラベル:妖怪 荒俣宏
posted by alice-room at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
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