2012年01月16日

「売春の社会学」ジャン・ガブリエル・マンシニ 白水社

人類最古の職業の一つとも言われる『売春』(俗っぽい噂ですけどね)ですが、非常に古い時代からあったことは有名です。日本における巫女とかでもそうですが、神の花嫁とか、神殿で参詣者に身を委ねる神聖娼婦等枚挙にいとまがありません。

本書が書かれたのは1960年代ですが、今のパリを見てもそりゃコールガール等の宣伝は賑やかですもんね。元々、その手のことに寛容というかお好きな国柄ではありますが、本書はそういった状況に対し、なんらかの改善が出来、また何らかの行動を起こすべきとする積極的な意思を持って、調査研究し、書かれた本です。

著者はソロボンヌ大学を出て、フランスとアメリカで弁護士をし、その後、国連の高級職員として働いた人物で、本書もきちんとした調査を元に書かれています。

ただ、そうは言っても結論としては、どうしても類書と同じ箇所で止まってしまうですが・・・・。

自発的意思で売春を行おうとする人達は、好ましくないにしても一定以内の害悪として許容するのはやぶさかでないものの、詐取・偽計によりそういった境遇に陥ることを防ぎ、陥った後は抜け出すことを支援する方向を示唆してその法制度等の整備を進めたりするのは、首肯しますが、その背景が問題なんでしょうね。

本書では、売春という形で利益を得るひもや売春組織の方に、注目しているのが目新しいです。

莫大な利益を上げる売春ビジネスに群がるその背景部分こそが、一番の諸悪とも見なしています。

まあ、実際、ビジネスとしては美味しいんだろうけどね。各種の参入障壁があるだけ、超過利潤が生じ易くなるのは勿論だし、人間の根本的な欲求に基づく需要だけに、市場が大きく永続性があり、デジタル化し得ない故に労働集約的でさえあるが、工場のような生産管理は無理だしね。

もっともかつての娼館では、トヨタ生産方式のような『カイゼン』が図られ、手練手管に磨きをかける方向で顧客満足度を高める努力は行われていたんだけどね。この関係は、本書ではあまり触れられていません。

本書では、ひもや売春組織への規制や禁止により、社会構造化する売春の仕組みを断ち切ろうとするわけですが・・・、実情を知らない理念だけで語る人達の存在でなかなか困難であることも語られています。

本書はまともな資料ではあるものの、既存の問題点を明確化し、再確認するに留まっているようにも見えます。実際、行動に移しても成果が限定される他、既存の利益を享受する人々からの妨害も多いようです。

社会政策論としても、正直、実現の難しいさを感じるばかりでした。

そうそう、男娼とかに触れていたのは、当時としては進んでいたように思います。もっともその歴史から言えば、ローマ時代には、男娼の方がより洗練されていたのだと思いますけどね。

以上、面白い本ではないし、知らなかったことはあまりありませんでした。昔、結構、この手の文献を読んでいたので、今更ねって感じ。

卒論に売春や猥褻、賭博とかの法規制をやろうと思っていたぐらいですしね。
【目次】
第1章 売春の定義
第2章 売春の沿革
第3章 売春の地理学
第4章 売春婦の募集と売春の実際
第5章 売春仲介組織
第6章 社会の側の反応
結論
売春の社会学 (文庫クセジュ 357)(amazonリンク)

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ラベル:書評 社会学 売春
posted by alice-room at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類B】 | 更新情報をチェックする
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