いやあ~ほんとずいぶんと前に見た覚えがあり、その時も傑作だと思いましたが、改めて今見ると素晴らしい出来だなあ~と感動します。(DVDはおまけの解説が秀逸!エーコ本人のインタビューも良かったが、製作の苦労話にも驚いた。)
まあ、なんと言っても原作が当時世界で大注目されていたウンベルト・エーコの本だし、最近はまっているダ・ヴィンチ・コードにも負けない骨太のストーリーにはいやはや脱帽ですな。ダ・ヴィンチ・コードを読んで思わず、この映画をまた見たくなりました。
映画単独でも歴史的な舞台背景や独特の雰囲気は楽しめるでしょうが、ある程度は中世キリスト教的な知識があると、本当に100倍以上より味わい深く楽しめる作品。
当時の教会では、聖書をはじめ各種の書籍を蔵書し、まだ印刷術が発明されていなかったので腕のいい写字生を何人も抱え、地域における学問(最先端知識)の中心地であったこと。アリストテレスの学説を進めたスコラ哲学の隆盛や、アラブより流入した医学書等々さりげなくこの作品にも散りばめられてます。また、異端審問官は魔女裁判の手引書「魔女の鉄槌(witch’s hammer)」に従い、疑わしきは全て魔女として教会権力の拡大・徹底に腐心していた時代でもありました。
王権以上にキリスト教が世俗の権力を握り、教皇が王を破門にする時代。
そういった時代をリアルに描いています。その時代背景があって、初めて不可解な殺人事件の動機がいかに切実で止むを得ない理由であったのかも納得がいきます。
ダラダラと説明が冗長になりましたが、実にいい雰囲気を持った作品です。犯人を追うというのは、むしろオマケでその当時の時代背景と人々の心の動きを追う方が楽しいです。そういう観点でしっかり腰をすえてじっくり観ないといけない作品です。娯楽的なものを期待するとガッカリするかもしれませんが・・・。
好きな人には、おおいにはまりまくりの作品でしょう。ちなみに、原作の解説本もまだ市販されてるはずですが、非常に勉強になります。学ぶ事が好きな方にお薦めします。知的好奇心を求める方なら是非!
実は、この映画を見た後で原作も再度読み直しました。すっごく勉強になりました。異端審問官のベルナール=ギーが実在の人物というのもスゴイし、教会が私有財産を有するか否かを巡る争いの背景も詳しく書かれていて感動した。特に、今では当たり前の慣習である「コンクラーベ」(=ローマ法王選出にあたり、候補者を一同に集めて鍵をかけて閉じ込め、全員一致で法王が決まるまで誰も外に出さないしきたり)が始まった経緯も書かれていて、驚かせれる事ばかりでした。原作の感想は、また別のとこに書こうか。
とにかく、映画見てからだと、原作がとっても理解しやすいです。邪道かもしれないけど、原作を先に読むと難しくてストーリー展開の把握が少々辛いです。逆だと、このうえなくGOODです!!
薔薇の名前 特別版Name of the Rose(amazonリンク)
関連ブログ
「バラの名前 百科」クラウス イッケルト,ウルズラ シック 而立書房
2005年01月20日
この記事へのトラックバック
<em>『薔薇の名前』(『THE NAME OF THE ROSE』1986)</em>
Excerpt: 製作国: フランス/イタリア/西ドイツ/ 公開情報: ヘラルド・エース/ 初公
Weblog: Yocolog
Tracked: 2005-03-30 01:13
「薔薇の名前」
Excerpt: ジャン=ジャック=アノー監督「薔薇の名前」を昨日(4日深夜)NHK BSで久々
Weblog: Passing Strangers
Tracked: 2005-04-07 02:21
薔薇の名前
Excerpt: 薔薇の名前 特別版 監督 : ジャン=ジャック・アノー 発売日 : 2004-09-10 価格 : 3,129 円========= 関連商品 ========= ◇ヒドゥン ENTERTA..
Weblog: Weblog/Generation
Tracked: 2005-04-08 18:10
「薔薇の名前」
Excerpt: 1986年/フランス・イタリア・西ドイツ 監督/ジャン=ジャック・アノー 出演/ショーン・コネリー クリスチャン・スレーター ショーン・コネリー主演作品。1986年作品で..
Weblog: It's a wonderful cinema
Tracked: 2005-04-29 00:48
『薔薇の名前』 文庫化してくれっ
Excerpt: ハードカヴァーの難点は、3つある。 まず第一に、収納に困ること。本をため込むタチの者にとって、これは重大な問題なのだ(笑)。占有するスペースも、重量も、ハードカヴァーは、..
Weblog: 手当たり次第の本棚
Tracked: 2005-04-30 13:09
「薔薇の名前」
Excerpt: 小説: 薔薇の名前〈上〉 DVD: 薔薇の名前 特別版 ..
Weblog: ◆Ahaha堂おばはん本舗◆
Tracked: 2005-05-01 17:34
213.『薔薇の名前~The Name Of The Rose~』みちゃった!(^^)!
Excerpt: {/kaeru_fine/} 今夜は 古い作品『薔薇の名前』です。 いつかはBLOGしたいと思っていた作品… ちょっと、ボリュームのある奥の深い作品です。 1986年 フランス・イタリア・西ドイツ..
Weblog: 徒然なるままに・・・?
Tracked: 2005-05-03 22:33
映画リスト
Excerpt: 映画。 私は多分かなり映画を観ている方なのだと思う。それも何でも見てしまう雑食的映画鑑賞型。 B級フイルムもそれなりの見方をすると楽しいのだ。 最近では映画館で観るばかりではなく、ぼんやりしているとも..
Weblog: 散歩絵、記憶箱の中身
Tracked: 2005-05-30 18:34
薔薇の名前
Excerpt: 先日読んだジャック・ル・ゴフのインタビューの中で、中世の時代で目を見張るものとして、大聖堂、城壁、僧院(の回廊)の3つをあげていた (27 mai 2005)。図書館 (la biblioth&eg..
Weblog: フランスに揺られながら
Tracked: 2005-06-02 20:36
ショーン・コネリー、好きなんです。
Excerpt: ショーン・コネリーという俳優を、初めて「いいな」と思ったのは、映画「薔薇の名前」を観た時だった。 薔薇の名前 特別版 公開時に映画館で観たから、かれこれ……15年ほど前になるだろうか。..
Weblog: 小さなことを喜ぼう! ~女40歳の「ちょいハピ」な日々~
Tracked: 2006-02-19 19:49
読書記録-[May 14,2006]
Excerpt: 薔薇の名前〈上〉 ウンベルト エーコ, 河島 英昭, ウンベルト エーコ 薔薇の名前〈下〉 ウンベルト エーコ, 河島 英昭, ウンベルト エーコ 歴史小説の最高傑作、と言っ..
Weblog: Megurigami Nikki
Tracked: 2006-05-16 17:48
フーコーの振り子 ウンベルト・エーコ
Excerpt: ウンベルト エーコ, Umberto Eco, 藤村 昌昭 フーコーの振り子〈上〉 ウンベルト エーコ, Umberto Eco, 藤村 昌昭 フーコーの振り子〈下〉 ..
Weblog: Favorites Lab.
Tracked: 2006-09-18 21:23
TBありがとうございました
やはり、原作おもしろそうですね。
ベルナール=ギーが実在の人物だとは!! 驚きです。
せっかくこの映画と出逢ったので、原作のほうも読んでみようと思います。
それでも映画見てからだと筋が分かるから、なんとかなると思います。すっごい知識というか情報の宝庫でもあります。
いろんな意味で感動しちゃいました、私は。じっくりと読むには、味わい深いですよ~。
独特の雰囲気を持った、おもしろい映画ですよね。
原作も読んだら、本当にどっぷり浸かってしまいそうで、逆にこわいです(笑)
また遊びに来てやってください
いい言葉が見つからないんですが、徳丸はこの映画が醸し出す“時代の空気”が大好きです。それは、製作陣の緻密な研究と努力によるものだったんですね。
ストーリーよりどうしても映像の方に気をとられてしまい、事件が起こった背景をイマイチ掴めてなかった徳丸には大変勉強になりました。分かりやすく解説してくださってありがとうございます。
いやあ~私もそうですよ。あの重々しい、且つ神聖でありながら、中世的な暗さが漂う独特の雰囲気、もうゾクゾクしちゃいます(満面の笑み)。
わざわざ写本まで本当に作っていたり、DVD付録の解説もすっごく勉強になりました。もう、大好きです!!
辿ってこちらにお邪魔したら、凄いブログなので驚きました。いろいろ勉強させて頂きます。
「薔薇の名前」の原作本は、当時ブックランキングの上位にあって、あんな難解な本が何故こんなに売れているのかと不思議がられていたように記憶しています。
映画を見てからだと少しは理解しやすいとのことなので、今度挑戦してみようかという気持ちになって来ました。
先日、TBお礼のコメントを入れたのですが、削除なさったんでしょうか・・・?
私のコメントで、嫌な気持ちにさせてしまっていたらごめんなさい。
自分では、ウキウキの気持ちで書き込んだんですけど・・・。
おそらく、その際、前後でコメントを頂いていて誤って消してしまったんだと思います。本当に、本当に申し訳ありません。
わざわざコメント頂きましたのに、今後はこんなことが二度と内容、よく注意します。本当にごめんなさい、不愉快な気持ちにさせてしまいまして。
もしお許し頂けるならば、誠に勝手ではございますが、時々コメントとか頂ければ、すっごい嬉しいです。本当に失礼致しました。ごめんなさい。
よかったです~。
トラックバックして頂いてこのブログを拝見して、alice-room様とは趣味がかぶってるところがあったので、すごくうれしかったものですから・・・。
またお邪魔させていただきます。
こちらのブログは情報量がすごいですね!
何か面白い本か映画ないかな~と思った時には、ぜひ参考にさせていただきます。
とりあえず「薔薇の名前」、図書館で借りようと思ってましたけど、買っても損はなさそうですかね?
上下巻ですから、外れたときにイタイですので。
また、遊びにいらして下さいね~。でわでわ。
おかげさまで こういう素敵なお部屋を知ることが出来ました
ときどき お邪魔させてくださいませ
ベルナール=ギーが実在の人物、というのは驚きました。
宗教にあまり詳しくないので、この映画で知ることも多かったです。知的な作品ですね。
私もダ・ヴィンチ・コードと薔薇の名前で刺激を受けて調べるようになった、門外漢ですので驚くことばかりありますね。勉強になります。
ブログの左側にある「ストラホフ修道院図書館」にしばらく見入りました。
記事にも書きましたように、私は映画だけを見て原作のスゴサを推測しているものの、まだ読んでいない・・・のですが、この順番がいいと伺って、(^^vの気分です。
充実したくわしいお話も伺えて、うれしゅうございました。
どなたかもコメントに書いておられましたが、私もときどき伺えればなあ、と。
私も映画を見てとりこになってしまい、DVDも出るやいなや買ってしまったり、結構大変でしたが本までチャンレンジしてしまいました。
でもそれぐらい大好きです! 中世の修道院&図書館って本当にすごいですね。実際にストラホフ修道院図書館を見た時もやはり感動しちゃいました(笑顔)。
本も大変ですが、やはり良かったですよ~。
この度はTRBありがとう御座いました♪
『薔薇の名前』と言う作品に出会ったのは数年前。
古典的な作品か?と思いきや
ショーンコネリーやクリスチャン・スレイターが
出演していて
難しそうに思えるテーマなのに、興味深く鑑賞できました。
こちらのBLOG拝読させていただき非常に勉強に
なりました。
なるほど・・・原作も面白そうですね。
チャンスが有ればゼヒ読んでみたいと思います。
こちらからもTRBさせていただきました♪
原作は、私の場合、相当読むの大変でしたが、興味深いことがすっごくたくさん書かれてました。時間のある時に、じっくるチャレンジすると面白いですよ! 但し、読破するのは結構大変かも?
TBありがとうございました。
レビューにも書いたとおり、20年前を思い出しました。あの時は原作を読破することができませんでしたが、今度はがんばってみようかと思ってます。
今は「グノーシスの薔薇」を読んでいます。
それが終わったら「フーコーの振り子」に取り掛かる予定。これは古本屋さんで見つけました。
こちらのブログ、まだ全部読んでいないのですが、大変興味深い内容ばかりですね。
これからも度々お邪魔いたします。
「グノーシスの薔薇」「フーコーの振り子」どちらも興味深いですよね。私は未読で心の中の読書リストには入っているんですが、それ以前に続々と本が部屋に山積みになっていまして(自分が買うのがいけないのですが・・・)、その山に追われる日々です。
で、きっと気がつくとその山の中にこれらも含まれていそう。その時が来るのを、気長に待って読みたいです(笑顔)。コメント有り難うございました。
実は記事を書く前、ここを参照させてもらいました。情報満載で、大変参考になりました。今後も更新楽しみです。
フーコーの振り子を映画化する人現れないのでしょうか。して欲しいなあと思うんですけれど。
フーコーの振り子ですか、実はまだ読んでいないんですよ~。読みたいリストには入っていながら、何故か読んでいない。怠慢の故です。でも、映画になったら、絶対に私も観たい作品です。観る前にあわてて本を読みそうですけど(笑)。
ここ1週間くらいの間、ジャック・ル・ゴフさんのインタビュー記事を読んでいるうちに中世への興味が湧いてきたばかりですので、ほんの初心者です。この映画のドイツ版のドキュメンタリーに若い時の彼が出てきていたので、感激しました。
興味深いお話が詰まっていそうなので、また訪問させていただきます。
私の方も浅い理解でしかありませんが、いろいろと情報を集めていきたいと思っております。少しでも面白いと思って頂ければ、幸いです。
このたび、livedoorからseesaaへ越してまいりました。どうぞ、ご贔屓に。
エーコつながりでTBさせて頂きました。
フーコーの振り子はかなり難解でした。
エーコは本当に博学ですね。
エーコの知識に圧倒されつつ、これは澁澤龍彦さんの世界だ、とも感じました。