実際に見るまでは、かなり恣意的に作られた逆・大本営発表のような印象を持っていたのですが、見たうえでの感想は大幅に変わりました。
ブッシュが名門一族の落ちこぼれであり、ライス氏が家庭教師と言われてるのは周知の通りです。いくつもの会社をつぶしてたのも有名ですし、他にもパラパラと断片的な情報は日本にいてさえ入ってきます。カーライルグループの話も日本語で翻訳出てるし、それも軽く目を通していたのでそれほど衝撃的ではありませんでした。
ただ、タリバン一族との関係はほとんど知りませんでした。勿論、うがった見方であるのは否めませんが、一定の関連があったのも事実でしょう。そもそもフセイン大統領しかり、麻薬のノリエガ将軍しかり。みんな当時の反米政権等を転覆させる為にCIAがバックアップしたり、資金援助したり、テロ工作のノウハウを教えたりした広い意味での関係者ばかり。それが時間の経過に伴い、勢力を伸ばし、アメリカの思い通りにいかなくなると、また裏工作して別な傀儡を立てる。これが絶え間なく続けられているんですから…まさに「パックス・アメリカーナ」の覇権思想ですな。
それが脚色され、創作が多分に加えられてうえで映画になっています。それ自体は、ふ~んとうなずくレベルの話でした。
でも、それらを含めて生活の為、上の学校に行く奨学金を得る、軍隊に志願する(せざるを得ない)人々は可哀相でした。どこの国も一緒だし、階層社会のない社会はないんだなあ~とつくづく思います。
更にそういった人々が、少なくても彼らにとっては何の意味も持たない(=上の人々にとっては石油と戦後復興事業の利権がありますが)戦争に狩り出せれていく姿は悲しい。観る前はこんな映画と馬鹿にしていたのですが、不覚にも2・3度涙を流してしまいました(狙いが分かっていても真実は重い)。
兵士が証言していましたが、戦闘はリアルで生々しいものです。扇情的な目的でしょうが、日本のマスコミがカットする残酷な映像もパラパラ混じっています。(個人的にはネットで知っていましたが)兵士をイラク市民が襲い、火をかけて殺した後、高く吊るしあげる場面。多数の市民が憎しみを込めて、既に黒焦げになっているその死体をさらにみんなで叩く姿。一方で何の罪も無い市民の子供達が銃撃され、死んでいく姿。
この映画ではなく、BBCのニュースでも流れていましたが、市街戦においては、近距離で銃も使えず、ナイフで50センチ先の敵と殺しあったと証言している兵士などがいました。ゲリラは米軍に向けて発砲した後、銃をその場に投げ捨て市民に紛れ込むそうです。必然的に、発砲を受けた兵士は誰が犯人か特定できず、銃を撃ってきた方向を撃つしかない・・・。罪も無い市民が打たれ、年端もいかない子供の血が流れる。
撃った方の兵士もまじかで人を殺す恐怖、殺されかねない恐怖からドラッグに走る。ベトナム戦争の教訓を繰り返すのだろ???
その状況は、どうしょうもないけど、手をこまねいている訳にもいかないのでしょう。現実に治安の悪化が進み、イラクへの動員人数は日増しに増えるばかり。日本も戦後以来の悲願である常任理事国入りがかかっているので引くに引けない。現在の属国状況から抜け出すためにも、国際通貨基金や国連の費用を出すだけで国際社会でスポイルされている日本が変わる為に、どうすべきか?苦しい選択を迫られている。
そんなことを痛感させられました。しかし、いつの時代でも不変の真実は、「歴史は勝者によって作られる」ということです。
ただ、最後に一言。これだけ悪意に満ちた且つ恣意的な映画を圧力が加えられているにせよ、一般に公開しているアメリカは凄いですね。コレだけは尊敬に値する。日本ではできないだろうなあ~。大手新聞社が警視庁内に部屋を用意してもらい、おんぶにだっこで癒着し、報道を控えてというと一斉に自粛。しかも民間企業の世襲を否定しながら、新聞社やテレビ局の社主は未だに世襲。素晴らしい日本に乾杯!!(少々、自虐的か)
とまあ、あれこれ思うきっかけになりました。この作品を大いに評価します。決して、真実のドキュメンタリーではないですが・・・。
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そうそう、ハゲタカ・ファンドとしても有名なカーライルグループについて
カーライル・グループ 日本語サイト
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