
「西洋美術解読事典」ジェイムズ・ホール 河出書房新社より抜粋。いつも参照しているんですが、メモとして。
イタリア語ではチェチリア。キリスト教聖女で童貞殉教者。2~3世紀の人物と信じられている。ローマのサンタ・チェチリア・イン・トラステーヴェレ聖堂はきわめて早い時代の創立となり、聖女自身のものとされる聖遺物を蔵している。彼女の生涯と殉教は歴史的事実を見做すことはできないが、その記録は6世紀にはすでに存在している。
キリスト教徒として育てられたカエキリアは純潔の誓願を立て、ウェレリウスという名のローマ貴族と結婚するに際し、彼に性的交渉を放棄するよう説得した。ウェレリウスは妻の身を絶えず守っているという天使の姿を見せてもらうことを条件に、妻の申し出を受け入れる。その後、天使が二人の上に舞い降り、薔薇と百合の冠を彼らの頭上に置いた(これらの花は時としてカエキリアの持ち物になっている)。ウェレリウスは兄弟のティブルティウスと共に洗礼を受けてキリスト教徒となったが、その結果二人はローマ長官により処刑されてしまう。カエキリアは蒸し風呂で窒息死させられる刑を申し渡された(あるいは福音書記者ヨハネのように油の煮えたぎる大蝦蟇に投じられた)が、彼女は死ななかった。剣を3度振り下ろしても首に傷がついただけで、さらに3日間彼女は生き延びて、その間財産を貧者に分け与えていた。
(音楽の守護者としてカエキリアは当時まだ知られておらず、15世紀に初めて美術に登場する)
音楽の守護聖女:
音楽に対するカエキリアの守護の由来は、彼女の生涯(受難)に関する物語の一節に拠っている。「結婚の当日カエキリアが様々な楽器の音(cantantibus organis)に送られて婚約者の家へ導かれた時、彼女は心中神に念じて、どうか魂と体を汚さずに済む様に祈った。」ラテン語の「オルガヌムorganum」は諸楽器を含めてあらゆる精巧な道具類を意味したが、16世紀の美術家たちはこの言葉を同時代のオルガン(持ち運び可能なポルタティーフ・オルガン)と解釈し、これを彼女の持ち物とした。
ラファエロの作品に「聖女カエキリア」がある。
以前に調べた時の説明はこちら