2012年01月18日

「小説 楊貴妃墓の謎」三吉不二夫 葦書房

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以前、日本に楊貴妃の墓があるという伝承を知り、興味を持っていた為、タイトルに惹かれて読んでみました。

歴史上の謎を専門家以外の素人が既存の枠に捉われない発想で謎を解明する、非常によくあるパターンものです。

もっともその謎解きが説得力のあるものならば、それはそれで面白いのですが・・・・?

本書は、非常によくあるように正真正銘の素人が適当に都合の良い部分だけをパズルのように当てはめて解釈し、その論理的な根拠が一切示されていない、典型例で終わってしまっています。

残念ながら、語るべき言葉がありません。

いや勿論、ストーリー上、もっともらしく説明はあるのですが、この説明で歴史的事実として受け入れられるのなら、世の歴史学者さん達は、どんなにか楽なことでしょう。ダ・ヴィンチ・コードや聖杯伝説、あまたのとんでも研究者さんと同列のレベルです。
(歴史的事実として認識する為の、共通のルールや手法に従っていない訳ですから)

もっとも、題名に小説とはっきり銘うっているだけ良心的なのかもしれません。あくまでも、そうだったら楽しいな♪的な物語として書かれているわけでしょうから。

ただ、それを加味しても個人的には、証拠を別にしても説得力のある面白い仮説とも思えませんでした。

本書で中心をなしているのは、古代史の空想的解釈であり、タイトルとしての楊貴妃の墓・・・等は、キャッチーな思わせぶりな単語に過ぎず、ほとんど本書の中心には関係ありません。

最後にとってつけたような「楊貴妃の墓」の説明は、もうどうでもいい扱いで、そこに関心を持ったいた私的には、更に残念さが増す作品でした。だって、内容がないんだもん・・・読了しちゃったけど・・・さ。

少なくとも、もう少し「楊貴妃」自体についても説明しないと、物語としても成り立たないでしょう。小説としての面白さも感じられません。

読むだけ時間の無駄かと思います。以前、読んだ楊貴妃の本の方がはるかに面白くて勉強になりました。これは駄目。

粗筋。

探偵事務所に持ち込まれた依頼。
素人で歴史に関心を持っていた人物が亡くなり、「楊貴妃の謎を突き止めた」というメモが残っていた。身内の者達は、その人物が最後に関心を持っていたことを知りたいと思い、調査を依頼する。

調査の仮定で、古代史に秘められた謎が次々と解明されていく・・・・。

まあ、そんなことあったら、何の苦労もないのですけれどね。

シュリーマンやシャンポリオンとかと自らを同一視するってのは、悪くはないですが、それだけの努力や情熱を傾けているの?ってのが素朴な疑問だったりもする。

以上。

小説 楊貴妃墓の謎(amazonリンク)

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「楊貴妃」村山吉広 中央公論社
「楊貴妃後伝」渡辺龍策 秀英書房(1980年)
ラベル:書評 小説 歴史
posted by alice-room at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説B】 | 更新情報をチェックする
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