【目次】
セザンヌ 考える眼………小島英煕
ルノワール 幸福を描く職人………浦田憲治
ミケランジェロ 神か人か………土谷英夫
ボッティチェリ 線の詩人………名和 修
ヒエロニムス・ボス イメージの錬金術………阿部 良
サルバドール・ダリ 神話を駆け抜けた奇才………原田勝広
シャガール 20世紀の漂流者………浦田憲治
マレーヴィチ 黒い正方形の神話………原田勝広
パウル・クレー 瞑想する絵画………河野 孝
徽宗皇帝 風流天子の素顔………竹田博志
伊藤若冲 孤独な奇想………宝玉正彦
私自身の好き嫌いで個人的にはしって、好きなとこだけ読んでるので感想も偏っていますが、まずはミケランジェロ。システィーナ礼拝堂に描かれた大傑作の一部、「最後の審判」では裸体が数多くかかれ、それが神聖な場所にふさわしくないとされ、後世に腰布を加筆修正されたのは有名です。また、それが近年明白になり、加筆部分が取り除かれ、元のオリジナルに戻されたというのも知っていたのですが・・・。全部ではなかったんですね。新鮮な驚きです。だって、普通全てを元に戻したと思うでしょ。既に無くなったヴァチカン美術館の館長の指示で一部しか戻されていないそうです。その理由は・・・。
歴史的な宗教会議での決定事項であり、それを無視する事になるので出来ないそうです。それを聞いてなるほど~と、思いましたが担当者も苦しい立場なのでしょうね。いつの時代でもそうですが、正論が常に正しく評価されるわけではなく、当然いろんなしがらみ(=政治的駆け引き等)の結果でしかないのを痛感させられます。難しいものですね!ミケランジェロほどの天才でも、ブラマンテの陰謀でシスティーナ礼拝堂の天井画を描く事になったり、たくさんの苦労を抱えながら、意に染まぬ逆境を生き抜いてきた人でもあるんですね。
そこで腹は胸の下へぐっと引きつられ、ヒゲは天を向き、うなじは肩にくついている。わたしはまるでアルピア(ギリシア神話の怪鳥)のようだ。そして、頭の上にある筆が滴を落として顔を彩られた床模様にするのだ。~『ミケランジェロの生涯』~
これがあの有名なシルティーナ礼拝堂の裏側の姿です。初めてヴァチカンで見た時に、感動のあまり上を見上げたまま、息を止めて目を見張り、胸がいっぱいになった光景は、そんな苦労と努力から産み出されていたんですね。この話そのものは他の本で聞いていましたが、その時に受けた衝撃が鮮やかに思い出されます。この本を読んで改めてそう感じました。
そうそう、サン・ロレンツォ聖堂にあった地下室。フィレンツェが反動派により降伏し、革命派の軍事司令官までしていたミケランジェロが隠れていたという噂の部屋。この話にも触れられています。人生にはいろんなことがあるもんです。生きるということは大変ですね。
で、次は伊藤若冲。相当に斬新な画家で、奇想の画家とか呼ばれているそうですが、絵は躍動感があって鮮やかでいいんですよねぇ~。あちこちで何度か見た覚えがあります。でも、隠棲者とは知りませんでした。絵が全てという、その人生。凄いなあ~。フラフラと悩みつつ、よろめきながら雑学ばかりが増えていき、光り輝く人生の生き方を見出せない私には憧れと尊敬、以外の何物でもないです。まあ、泥をかぶりながらでも前進するしかないか。立ち止れば、それは即ち「終わり」であり、「死」に他ならないわけだから・・・。そんなことを感じながら見てました。
・・・・・・後はまだ途中・・・・・
「美の巨人たち」日本経済新聞社 感想2(快楽の園の画像有り)