2012年01月29日

「組織を強くする技術の伝え方」畑村洋太郎 講談社

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失敗学で有名になり、マスコミへの露出も著しい著者ですが、たくさん本出し過ぎて、最近はどうかなあ~といぶかっておりました。

でも、本書はいかにして自分が仕事のやり方やノウハウを伝えるか、どこの会社でも、どこの組織でも非常に大きな問題として脚光を浴びながら、なかなか実効性のある方法が提示できずに頭を悩ましている問題であり、それに対して一つの考え方として、大変参考になりました。

勿論、そうは言っても千差万別の事情を抱えて現場とは様々な違う点はあるものの、問題点を意識し、自らの場所で考え、実践していくうえでのたたき台には十分になると思われます。

本書を読むことで、基本的な問題意識や共通する問題点の認識を予め理解しておくと、次の段階へ出発がスムーズになりそう。決して本書を100%肯定する気は毛頭ございませんが、私の問題意識の比較・参考対照としては有意義な本でした。
本書における『技術』の定義:
「知識やシステムを使い、他の人と関係しながら全体を作り上げていくやり方」
「CAEによって形式化する技術伝達・・・前提条件に正確なデータが入力されている、欠けているものがないなどがある。」
本書で書かれている内容ですが、私の事務系の職場で言うならば、マニュアルや各種ツールやシステムが存在していても、それらを利用する前提条件を理解出来ていない人が、前提条件不備の条件下で規定通り作業してもそりゃトラブル発生するでしょうって感じですかね。

ノウハウも含めたその辺の暗黙知の取り扱いについては、どこの職場でもいやってほど経験してますしね。
ふむふむ。
技術というのは本来「伝えるもの」ではなく、「伝わるもの」なのです。
伝える側が最も力を注ぐべきことは、伝える立場で考えた「伝える方法」を充実させることではありません。本当に大切なのは、伝えられる相手の側の立場で考えた「伝わる状態」をいかにつくるかなのです。
まあ、本書内でも他のところで触れられていますが、今は、そもそも教わる側からもそれを覚えたいという意思がないところでやっている状況が存在し、教え手・教わり手共に不幸な状況下でそれらが実際には行われている、そういう事情がありますからねぇ~。

正直キツイ話です。
本当はその環境自体の改善を図りたいところですが、まずは所与の条件下で出来る事から、一つずつ変えていくしかないんでしょうね。

つ~か仕事の属人化は、絶対にいけないと強く思っている私自身の日々の仕事が、まさに属人化を加速させるような業務内容であり、それを会社から求められている、という大いなるジレンマ。更にそのブラックボックス化が日々、益々進み、悪化していく。

それが表面的には、会社の利益にかなっているというのは、未来への地雷を埋め込んでいるようではなはだ良心を傷つける仕事だけれど・・・それでも将来的に改善を目指し、良くなる事を希求し、目の前の事をやるしかないんだろうなあ~。

人は人であるだけはでは、自由になれないというのは真理ですね。
マニュアルというものは、最初は誰もが使い易いように、シンプルで薄いものであることが多いのですが、まわりの条件の変化などで追加される要求にすべて応えているうちに次第に分厚くなる”宿命”にあります。

ですから、意識して定期的に見直さないと、すぐに固定化して実態に合わないものがそのまま居座ってしまうのがマニュアルの特徴です。
少人数の場合、作業者にマニュアルの作成・修正もやらせることで、当事者意識を植え付け、否が応でもその内容を見ないではいられないように私はしていましたが・・・今の場所では、諸々あってそれが出来ないんですよね。

情けない・・・・。当然、自分が関与していないものなど、人は見ないし、理解せず、マニュアルに載っている事項さえ見逃して、トラブルに結び付く。当然、業務手順の改善などにまで意識が向上していくことも難しく、業務効率は下がる事はあっても上がることなどなく、熟練による作業速度の向上しかないようでは組織としてどうかと思うのだけれども・・・・?

更に悪い事に、マニュアルを作ることを担当する人が自分で作業としてその内容を体得しないうちに、ただヒアリングしただけで作成したものなど、誰が見るのだろうか???

マニュアルの形骸化はから、無用の長物への変化などは一瞬なんだけどね。
伝える為の5つのポイント
1)まず体験させろ
2)はじめに全体を見せろ
3)やらせたことの結果を必ず確認しろ
4)一度に全部を伝える必要はない
5)個はそれぞれ違うことを認めろ
マニュアルのところで、私が考えて実践したやり方と著者のやり方、共通点が結構ありました。もっとも、私も昔は若かったから、教わり手の『個』を意識することは出来ていなかったなあ~。それは、散々教えるのに苦労して、ようやく実感できましたが、考えれば、良い経験をさせてもらったんですね。私自身も。
野中郁次郎氏提唱のセキモデル(SECI)・・・ナレッジマネジメントの一つの手法
個人の知識の共有化を図り(共同化Socialization)、暗黙知を明示知(形式知)に変換し(表出化Externalization)、それを組み合わせて新たな知識を創造し(連結化Combination)、さらにその知識を新たな暗黙知として取得する(内面化Internalization)というプロセスを繰り返すことで組織的知識創造が行われる。
まあ、どこの職場でも普通にやっていることですけどね。勿論、私も日々やっていますが、それを明示的に意識し、それを促進することが出来るなら、そこの組織は日々改善に向かう可能性が高くなるかと思います。あくまでも高くなるだけですけどね。

他にも最近良く聞く「守・破・離」とか、初めて聞いた「裏図面」(出来上がった設計図に決して載る事ののない、設計者の設計過程を記した図面)は、勉強になりました。

私も仕事している最中に、試行錯誤したものは一部メモとして残してますが、それを共有するまでいってないなあ~。今後の大いなる課題ですね。

とまあ、いろいろと自らの経験や思いと重ね合わせることで、気付かされたり、再認識させられたりすることがたくさんある本でした。ご興味のある方には、一読をお薦めします。

ただ、あくまでも本書は契機であっても、そこから相当の苦労しないと何らかの成果物にまではつながりませんけどね。きっと。
【目次】
序章 「技術」とは何か
第1章 なぜ伝えることが必要か
第2章 伝えることの誤解
第3章 伝えるために大切なこと
第4章 伝える前に知っておくべきこと
第5章 効果的な伝え方・伝わり方
第6章 的確に伝える具体的手法
第7章 一度に伝える「共有知」
終章 技術の伝達と個人の成長
「技術を伝える」を巡るおまけの章
組織を強くする技術の伝え方 (講談社現代新書)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 12:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
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