人の『性格』というものを決定する要因として、人間が生まれながらにして持つ「素質(気質)」が重要な位置を占めるとする考え方と後天的な「環境」が重要であるとする考え方の二つがあるが、著者はあの(!)偉大なるクレチェマー氏の影響下、気質を中心に置きながら、環境による影響を考慮する立場をとる。
幾つかの事例を挙げながら、非常に簡明に性格を決定する要因と思われるものに解釈を加えていく本書は、大変勉強になります。私自身も物心ついた学生の頃に、クレチャマーの「天才の心理学」を読んで天地が動転するほどの衝撃を受けましたから、本当に納得してしまったりします。
未だに私が人を見る目は、この立場ですもん。自らを冷ややかに見つめながらもあえて表面的には不合理そうでいて、実は当事者的には合目的っぽい理性的な思考や計算があったりするのも、周りからは理解されなくても自分で自分を理解できるだけでも嬉しいかも♪ (たとえ自己満足、いや自己欺瞞でさえあっても・・・)
一読するだけでも分かり易い本です。でも、本書を読んで改めて感じるのはクレチェマーの非凡さですね。本書の著者もいいんですが、そもそも「気質」を考慮するときに重要な遺伝的な要素へ言及が足りないのがやや不満。
クレチェマー読んで、夢野久作の「ドグラマグラ」読んで、鈴木清順の映画でも見れば、人間の精神の玄妙さ・可笑しさを少しは感じられるかも? 鈍い人は一生気づかずに幸せに生きていける『あの』感覚を分かる方は、読んでみられてはいかがでしょう。私的には好きな本でした(笑顔)。
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