本書の場合も新聞記事だけあっていかにもジャーナリスティックな視点から、アートというものを捉えている。逆に一般読者への関心を誘い、敷居を低くするメリットもあるのだと思うが、美術に関する文章としては、正直たいしたものではない。
基本的に一話読み切り形式で一つの絵が出てくるが、絵そのものの説明をしていることはほとんどない。画家や絵にまつわる周辺情報というか、いかにも人間を扱っています的な俗っぽいお話がほとんどある。
それゆえ誰でも読み易いし、とっつき易いのだが、肝心の絵はどうでもいいような取り扱いになっている。せいぜいが美術にまつわるエッセイとでもいうべき内容です。
ボティチェリの「春」に描かれた花々がフィレンツェに実在する植物だった話や最後の晩餐の修復の話とか、以前にもっと詳しい本で知っている内容も多く、読んでも別に・・・という感じのものが多かった。TV番組の「美の巨人たち」とかの方がはるかに内容が深くて面白いです。NHKスペシャルなんかもイケルね!
脱線する話自体は悪くはないが、脱線した話だけで絵画を語られてもだいぶ不満が残る。これと一緒に購入したフランス編も同様でした。
もうちょっと絵だけを楽しませてくれぇ~という声が聞こえてきそうな本でした。
世界名画の旅〈3〉イタリア編(amazonリンク)
【目次】
豹の墓―エトルリア壁画
ディオニソス秘儀図―ボンベイ壁画
東方三博士の礼拝―ジオット
東方三賢王の礼拝―ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ
聖母子と天使―フィリッポ・リッピ
狩り―ウッチェルロ
ウルビーノ公―ピエロ・デルラ・フランチェスカ
春―ボッティチェルリ
ビーナスの誕生―ボッティチェルリ
最後の晩餐―レオナルド・ダ・ビンチ
1498年の自画像―デューラー
嵐―ジョルジョーネ
デルフォイの巫女―ミケランジェロ
小椅子の聖母―ラファエロ
聖ヨハネの斬首―カラバッジオ
サンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂への行進―グアルディ
金枝―ターナー
十一月―フォンタネージ
街角の神秘と憂鬱―キリコ