2012年03月10日

「民衆本の世界」ロベール マンドルー 人文書院

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フランスのアナール派の著作物。

17・18世紀のフランスで民衆(庶民)に向けて発行された粗末な印刷物で、雑貨同様、行商人によって販売されていた『青本』を対象にした研究書。

イギリスでいうところのチャップ・ブックとかあの手の類いですね。

比較的文献資料の残っている貴族等エリート層の研究と異なり、資料等があまり存在しない民衆を対象とした研究ということになるんだそうです。

使い古された活字を使い、どっかからぱくった版画を適当に差し込んで、有名な話をこれまた適当に概略だけまとめて(あるいは割愛し)印刷することで廉価版の印刷物を作成し、それを地方の隅々まで行商人が販売する。

そういう仕組みがあったんですねぇ~。

本書ではほとんど残らないであろう、そういった印刷物の貴重なコレクションを元に、内容をジャンル分けし、それぞれの分量の比率やジャンル毎の内容の特徴などを説明しています。

あと青本の印刷業者がどのように民衆の好みを取り込み、また業者間の競争も激しく、成功すると相応の財産を築き上げることが出来たことなども説明されます。

挿絵も少々載っていますが、物足りないですね。

私的には、あまり面白くなかった本です。
表紙はそそられたけど・・・ね。

研究者には興味深いのかもしれませんが、それ以外の人にはあまりお薦めしませんね。
【目次】
はしがき 民衆文化とアンシアン・レジーム
序章 青本と民衆文化
第1章 トロワの行商本
第2章 妖精神話―異教的な不思議の世界
第3章 「世界の認識」
第4章 信仰の世界
第5章 芸術と民衆の感性
第6章 社会の表象
第7章 結び
補論―19世紀の青本
解題(マンドルーの歴史学、民衆本の世界)
文献目録
青本作品名索引
民衆本の世界―17・18世紀フランスの民衆文化(amazonリンク)

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ラベル:書評 歴史 書籍
posted by alice-room at 07:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史B】 | 更新情報をチェックする
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