2012年03月19日

「ガリア戦記」カエサル 講談社

何度か読み直しているが、一向に色褪せることなく、読むたびごとに『人を統べる』難しさ、リーダーシップ他、考えさせられること・気付かされることが非常に多い本です。

最初に読了した時の感動や興奮こそ無いですが・・・・(もう、4、5回読んでるから)、それでもやっぱり凄いとしか言いようのない、まさに古典中の古典と言えるでしょう。

大昔の、しかも外国の、翻訳の本であるにもかかわらず、これだけ簡潔且つ的確な描写、記録、説明を含めた素晴らしい文章で、しかも内容自体も一級品である作品が読めるのは、人類の大いなる遺産と言えるでしょう。

これを原書で読むためだけにラテン語の勉強をしてみたいと切に感じてしまいましたよ。ホント!
(その前に、エミール・マールの原書を読むために始めるはずだった、フランス語をなんとかしないと・・・涙)

実際、しょうーもないビジネス雑誌の経営論やらリーダー論読むよりも、本書を熟読して、自らの置かれた環境を整理し、そこに置き換えて考えるだけでも十分に自分の日々の生き方、仕事に役立つと思います。

部下や上司、協力者、敵対者。

自らを取り巻く環境における利害関係者は、信頼しつつも、常に裏切りや予期せぬ行動等、不断の警戒と監視を必要とし、更に偶然から生じる諸要因が様々な影響を及ぼして、事前の想定を越える状況が日々、刻々と発生していく。

そのまさに不確実性下のもとで、自らが求める成果(結果)を出そうと行動することは、『政治』であり、『経営』であり、まさに人間が人として生きていく姿そのものでもある。

アメとムチと言ってしまえば、それまでだが、ローマ帝国の植民地支配で属国毎に格差があるのは有名であるが、そんなの今の国際政治を見ていても同じでしょう。古いものならば、関税の最恵国待遇なんてのもあったが、今はTPPとかでも違うじゃん。

あの北朝鮮ごときでさえ、アメリカと日本では対応が全く違うでしょ。
もっとも昔の日本なら、自国領域内にミサイル打ち込まれて、戦争もせず、まして占領さえしないなんて有り得ない話ですけどね。アメリカだったら、そんな事態を今でも絶対に許さないでしょうし・・・。

企業の経営においてでも、社員間でしっかりと格差があるのは当然です。
能力的なもので差をつけるか、派閥的な社内政治力で差をつけるか等、尺度はさまざまではありますが、『平等』というのは日本の学校で先生が語る絵空事の話か、民主党議員の先生方の頭の中にある、次の選挙で落選するまでの空手形の中だけでしょう♪

本書を読んでいると、本当に人を扱う難しさを痛感します!
表面的に良く従っていて信頼できるかと思い、それなりの恩恵を与えていても、ちょっと監視が緩み、機会があると攻撃しだす、『面従腹背』の輩がいかに多いか・・・。

表面的にさえ、一向になびく気配さえない敵の攻略も大変でしょうが、正面で敵と戦っている背後で、観方と思っていたものが、裏切って攻撃してくるのは、戦略的にも大失態以外のなにものでもありません。

遠く離れた本国ローマでは、政敵が常にカエサルの失態を待ち望み、引き摺り下ろそうと虎視眈々と狙う中、足元では正面の敵、自軍の中でも統率が往々にして乱れ、意のままにならない場合もあり、どこかで起きた一つのミスは、次々と連鎖を促します。

ガリアの地では、複数の部族がそれぞれの思惑で行動し、互いに牽制し合う一方で、反ローマでは一体化するわで内部・外部共に四面楚歌になりかねません。

我が身の一部として信頼する部下達も、思わぬ奇襲や裏切りで死亡していく中、自軍をいかにまとめ、兵士達の忠誠ややる気を維持させるか。

どんな組織でも、これが出来ないリーダーには、トップの資格がありません。
戦争という極限状況だけに、すべての事象が極端に現れるが故、リーダーシップの発揮もより一層、強烈に発揮されねばなりません。

いかに部下に接し、心を掴むか。
ハーバードのビジネス・スクールに通わなくても、カエサルの下にいれば、身に付きそうです。

また、裏切ってちょっと状況が悪くなると、平然と謝罪して寛恕を求めるふてぶてしい連中。
ケース・バイ・ケースでそれを許容する場合もあれば、必要に応じて徹底的に完膚なきまでに撃退し、みせしめ的に厳罰(処刑や奴隷にして売り飛ばす等)で対処するなど、必要な要素はすべてありますね。

そうそう、同時に適材適所。
能力のある人間を十二分に評価し、使いこなして成果を挙げること!

それは、新しい技術やノウハウの積極的な採用とそれを実行して、大きな戦略(ないし、戦術レベル)に組み込んで比較優位を確保したうえで、勝率を可能な限り向上させたうえで勝つべくして勝つ。

個々の戦術に奇策はあっても良いのでしょうが、戦略的な優位を確保しない限り、長期的な戦争は無意味ですからね。

兵士の移動や物資の兵站関係、ロジスティクスの重要性は現代の企業活動なんか以上に考え抜かれています。その為のローマ街道であり、その為の技術でもあります。

戦術レベルでも大きな川にかける渡橋技術や、トンネルを掘って城を攻略する技術、高い櫓を建てて上から、火矢を放つ手法等、いつの時代でも戦争こそが最新の技術の最初の使用例となるのは、不変の原則ですねぇ~。

アメリカが無人戦闘機の実用化を進め、実際に実戦配備で経験値を稼いでいる現状を見ても、中国が最新の技術をドンドン軍事利用しているのを見ても、全く現代と変わりませんね、ホント。

現在のEUでさえ、この当時のローマ帝国の支配領域の先進性と比較すると見劣りするのだから、そりゃ当時の英雄、カエサルの著作が素晴らしいのも当然ですかね。非凡としか言いようがありません!!

ちなみに言うまでもないことですが・・・。
当時のローマ帝国支配領域内で通用するのは普遍的なローマ法で、支配層の言語はラテン語、道路の規格は全て統一され、通貨はローマ金貨。ローマ市民権さえあれば、どこに行ってもそれに相応しい対応を受けられたわけで、今のEUも当時のローマ帝国の一部をやっと実現しているのが実際のところだったりします。

『暗黒の中世』なんて、無知蒙昧が使う言葉がありましたが、それを言うなら、5世紀のローマ帝国崩壊以後は、未だにヨーロッパは暗黒のままのような気さえしますけどね?

人は進化ではなく、退化していたりして・・・?いささかシニカル過ぎますか?(笑)

でも、本書は面白いよねぇ~。大好き♪

あとカルテーヌ族の聖地、後のシャルトル大聖堂の井戸(サン・フォール)のことも本書で書かれているし、ドルイド僧のことも面白いこと書かれていました。

後でメモしておこうっと。
ご興味ある方、一読をお薦めします♪

ガリア戦記~読書メモ
【目次】
第一巻 1年目の戦争(紀元前58年)
  1.ガリアについて(1節)
  2.ヘルウェティイ族との戦い(2-29節)
  3.アリオウィストゥス(30-54節)
第二巻 2年目の戦争(紀元前57年)
  1.ベルガエ人との戦い(1-33節)
  2.沿岸部族の征服(34-35節)
第三巻 3年目の戦争(紀元前56年)
  1.アルプス山岳戦の失敗(1-6節)
  2.ウェネティ族とウネッリ族の反乱(7-19節)
  3.アクィタニ人への遠征(20-27節)
  4.モリニ族とメナピイ族への遠征(28-29節)
第四巻 4年目の戦争(紀元前55年)
  1.ウシペテス族とテンクテリ族の虐殺(1-15節)
  2.最初のゲルマニア遠征(16-19節)
  3.最初のブリタンニア遠征(20-38節)
第五巻 5年目の戦争(紀元前54年)
  1.第2回ブリタンニア遠征(1-23節)
  2.エブロネス族の反乱とローマ軍の上官の敗死(24-37節)
  3.ネルウィイ族によるキケロ陣営の襲撃(38-52節)
  4.セノネス族とトレウェリ族の反乱(53-58節)
第六巻 6年目の戦争(紀元前53年)
  1.ガリアの反乱広がる(1-8節)
  2.第2回ゲルマニア遠征(9-10節)
  3.ガリアの制度、習慣(11-20節)
  4.ゲルマニアの制度、習慣(21-28節)
  5.エブロネス族への復讐(29-44節)
第七巻 7年目の戦争(紀元前52年)
  1.全ガリアの共謀と首領ウェルキンゲトリクス(1-13節)
  2.城市アウァリクム占領(14-31節)
  3.城市ゲルゴウィアの攻略放棄(32-53節)
  4.ガリア人の総蜂起(54-67節)
  5.城市アレシア占領(68-90節)
第八巻 8年目と9年目の戦争(紀元前51年と50年)
  1.ヒルティウスの序
  2.ビトウゥリゲス、カルヌテス、ベッロウァキ諸族の反乱(1-31節)
  3.城市ウクセッロドゥヌム占領(32-47節)
  4.カエサル

解説
専門語略解
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「ローマの歴史」I. モンタネッリ 中央公論社
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posted by alice-room at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史B】 | 更新情報をチェックする
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