2012年03月18日

「スペイン・ロマネスクへの旅」池田健二 中央公論新社

spainromanesque.jpg

ロマネスク建築というと、どうしてもフランスの片田舎の寂れた教会をイメージしますが、スペインにもあるんだよねぇ~。そういえば・・・!

カタルーニャ・ロマネスクとか部分、部分はモノの本とかで知っていたものの、本書で扱っているロマネスクは、ゴシック建築に先駆ける純然たるロマネスクに限らず、むしろプレ・ロマネスク時代ともいうべきカール大帝以降の地方的特殊性にあふれた教会建築を多分に紹介しています。

ただでさえ、イスラム勢力圏に長年に渡って組み込まれ、その支配下でイスラム建築の影響を色濃く受けた土地柄に、サンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼路として、クリュニー修道院の影響が混在として一体化し、フランスのものとは近いようでいて、明らかに異なる建築物を生み出しています。

幾何学文様的な装飾や浮彫のデザイン、強烈な色彩感覚のもので描かれ、表現される壁画等、やっぱり明らかな差異を感じます!!

ロマネスクはローカル色豊かで、個々に独自性を有する建築・美術ではありますが、本書の中でも紹介されるものもこれまた、そこでしか無い、っという一品物で非常に好奇心をそそられます。

本書で紹介される写真も大変興味深いものが多くて、目を奪われるのですが・・・問題点もあります。
写真に番号が振られておらず、本文中の解説と写真がなかなか一致しないのです。

おそらく・・・文章は別に書かれ、本としてのレイアウトを考えつつ、写真の取捨選択、サイズ等が編集サイドでやっていて連携が取られていないのでしょう。

正直、写真自体は良くても、文章とは分離しているうえに、レイアウトだけで写真のサイズ等を勘案しているのか、文章で力点を置かれているものが写真として出ているとは限らず、出ていてもサイズが小さくて良く分からないなど、多大な考慮すべき出来上がりとなっています。

かなり勿体無いという感じがしてなりません。
本を買った人向けに、写真をWEB上で閲覧したり、取得出来る様にとか工夫してもらってもいいような気がしますけどねぇ~。

とにかく、本書は見るべき価値がある内容ですが、見せ方というか本としては、不満足な点が多いのも強く感じました。すっごく惜しいです!!

是非、生で見てみたいけど、ロマネスクって交通が不便なところが多く、公共交通機関ではたぶんなかなか行けないんだよね。国際免許で海外で車運転することも考えるけど、国内でもペーパードライバーなのに・・・・。

大都市にあるゴシック建築を働いているうちに見ておいて、時間が出来たら、周ることにして残しておくしかないかなあ~。行きたいな~♪
【目次】
カタルーニャ地方
アラゴン地方
ナバラ地方
カスティーリャ・イ・レオン地方
アストゥリアス地方
ガリシア地方
スペイン・ロマネスクへの旅―カラー版 (中公新書)(amazonリンク)

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「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展~国立西洋美術館
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「中世が見た夢」小佐井伸二 筑摩書房
「スペインの大聖堂」菅井日人 グラフィック社
「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社
posted by alice-room at 13:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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