さて、内容なんですがもう正統派中の正統派ともいうべき推理小説です。この二階堂さんのは何冊か読んでますが、そのきっかけになったのもコレ読んで面白かったから! でも他の作品はこの水準を越えていないのが悲しいかも?
舞台は湖畔に佇むベネディクト派女子修道院。製紙産業華やかなりし時代に、大儲けした大実業家にして大富豪が金に糸目をつけず、海外から中世の教会を運び込ませたその建築物で惨劇が起こります。ひたすら神のみを信じる清らかな子羊達の中で、忌まわしき殺人事件が!いきなり、少女が塔より落ちて死んでしまうとこなんか、薔薇の名前ソックリ。最初、読んだ時には気付かなかったんですが、他の部分でも完全にあのノリを踏襲してるんだよね、今回読んで初めて気付いた!!
だって、東洋一といわれる貴重な古文書を蔵書するいわくありの古文書館が出てくるし…。さらにこの図書館が50年に一度しか開かれない、となればもうあれっきゃないですネ。一つ間違えれば、舞台を日本に変えただけで盗作かい?とでも言われそうな状況ですが、これがまた、作者の力量に脱帽します。確かに道具立ては、ソックリなんですが、その背景がいかにも日本的。戦後の混乱期等をうまく取り入れながら、舞台のリアルタイムは昭和40年代の設定。これまた、巧みに時代背景を生かしつつ、全く新しいものに作り上げています。犯人が明らかになっていく間で、ドンデン返しがこれでもか、これでもかっときて、最後の最後まで結論が分からない。特にラストはもう、日本人にしか書けないし、理解できない秀逸さです(内緒)。
しっかり、満開の桜の咲き誇る中、逆さ吊りで首無し死体は出てくるし、殺人はいわゆる「見立て殺人」タイプ。横溝正史さんの「犬神家の一族」ばりですね(ニコニコ)。生糸で金儲けた所とかもそっくりだし。その見立てがなんと、あのヨハネの黙示録だもん、パクリやん(爆笑)。おまけに密室殺人やら暗号文やら、盛り沢山の大サービス!!ここまでやるかってカンジだし。
すっごく面白いんだけど…、これ実は欠点があったりする。この人の本全てに共通するんだけど。著者がすっごい推理小説マニアらしく、探偵役の女子大生も推理小説研究会みたいなのに所属しててやたらとそのウンチクがクドイ&鼻につく。エラリー・クィーンの○○の小説の××だね、とか言われても分からんって!端的に言うと、狭い仲間内にしか分からないような台詞が頻繁に見られるのが、イヤ。それで初回の時に、何度か読んでる途中でイライラしたもん。読書にこういう感情を湧かせるのって果たしていい作品でしょうかね?
これを乗り越えられれば、すっごく面白いんだけどなあ~。そこが残念!まあ、逆に推理小説マニアというかミステリマニアだったら、かえって面白いんでしょうね。雰囲気は想像できるけど、違和感を強く感じたなあ。
薔薇の名前のような、格調高い(難しい?)のとは違いますが、総合的に推理小説としては一級作品でしょう。う~ん、何度読んでもこれは結構イケル作品だね。
聖アウスラ修道院の惨劇講談社ノベルス(amazonリンク)
これはなんとなく気になる一冊でした。
とはいえ二階堂氏の本はいまだ読んだことがないのですが・・・。
近いうちに手にとってみることにします。
図書館とかにあれば、是非お手にとってみて下さい。これは結構お薦めできるかも?私の仲間内では、結構評価が良かったです。最後が特に、やられた!って感じでしたよ~(笑顔)。
私のうちにある二階堂黎人の本はこれだけです。ミステリの舞台とか雰囲気とかは素晴らしいのですが探偵役が鼻に付くんです。
その欠点は正統派の本格ミステリには程度の差こそあれ、どれにでもあります。専門家同士の思わせぶりな(あまり意味のない)会話と思ってしまえば。
蘭子に言われるのは確かにいい気はしませんが。
ご無沙汰しています。
ようやく『聖アウスラ修道院の惨劇』読了しました。
我ながらノンビリしていますね。
ミステリマニアだった過去をもつ(小中学生のころですが)私は薀蓄の部分も「話が通じる状態」で読みました。
> でも他の作品はこの水準を越えていないのが悲しいかも?
そうですか!
そうなると、この作者の他の作品に手をだすかどうか迷いますね・・・。(^_^;)
他の作品は、微妙ですね。そこそこ面白いのもありましたが、私としてはこれ以外はあまりお薦めしないです。また、何か面白いと思えるのがあったら、ブログに書いていきますネ。
そうそう、本は自分の読みたい時に、読みたいペースで読むのが一番だと思いますよ。今は、いささか憑かれたように濫読してますが、読まなくなると半年で2,3冊なんて時もありますし、私も。結構、ムラがあって忙しいと仕事関係の本だけでいっぱい&いっぱいになってしまって…。
バランス感覚に欠けていますなあ~我ながら(反省)。喜八さんは心身共にバランスとれていそうですね!見習いたいです。