2012年05月13日

「図説図書館の歴史」スチュアート・A.P. マレー 原書房

history_library.jpg

この本は値段も高く、分厚くて重いが、実にたくさんの図版やイラストが入っていて見ていてもとっても楽しい。更にこの手の本の場合、内容も普通なら、どうしても総花的なものとなり、ダラダラとした薄っぺらな文章が続くのですが、本書の場合、決してそんなことはありません。

勿論、私ももっと詳細に論述した本をたくさん読んでいた中世の写本関係については、少し疑問を差し挟みたいような記述がありましたが、それでも総合的に見て、本書の内容は、十分に満足のいく内容だと思いました。

例えば、古代より本は、宝石や貴重品同様の宝物であり、自ら資金を投じて生み出す方法もありますが、それ以上にポピュラーな獲得の方法として、戦争等に付随して略奪によって一気に質の充実と拡充を図るっていう方法が説明されていました。

その話は知っていましたが、本書の記述を読んで改めて、目から鱗でしたね、私にとっては。

チェコで作成された『悪魔の聖書』(devil's bible)がスウェーデンに略奪された実際の話は、うちのブログでも採り上げていましたが、それが実に普遍的な稀覯本獲得の方法とは!ねっ!
(う~ん、納得です。買って集めるなんて、所詮、たいしたコレクションにならないし、ルーブルしかり、大英博物館しかり、やっぱり力で奪わないとなのねぇ~。ウンウン!)

あと、普通ではあまり触れられないイスラム圏の図書館の話なども面白かったです。

図書館が果たす役割、求められた存在意義が時代によって、さまざまに変化していく部分もかなり興味深いです。著者がアメリカ人で、アメリカの図書館の普及について必要以上に紙数をとっているのは、個人的には少しもったいない気がしましたが、カーネギーの有名な慈善事業の一環として、アメリカ全土への図書館建設にも膨大な資金を出していたことは、初めて知りました。

しかもどっかの国の箱物行政とは異なり、地元でしっかりと運営する覚悟があり、相応の負担を含めて意欲のあるところへ建設資金提供という点は、今に続くアメリカの良識と見習うべき点を強く感じました。

そうそう、付録の世界の図書館。これがまたイイ! 
説明を読み、写真を見るだけでも十分に楽しいです。
基本的に私もいろんな国の図書館に行ってみたいと思っているだけに、こういうの大好き!

7月にイタリア行ったら、図書館とかも寄ってみたいな?

最後に、本書の著者はちょっと意外でしたが、学者さんではありません。歴史ノンフィクション作家さんだって。でも、よ~く調べて書かれていますし、勉強にもなります。何より、本好きには面白いと思う。

1ヶ月ぐらい前に借りて読んだ本ですが、これは購入しておいて損はないかと。
未だに、1回読んだ時の記憶だけでこれだけまだ書けるということは、それだけ印象に残った本でした。

部屋に本を置くスペース空いたら、買って手元に置いておこう。本が重いのが、いささか難点ですが・・・。
床が抜ける・・・・(涙)。
【目次】
第1章 古代の図書館
第2章 中世ヨーロッパの図書館
第3章 アジアとイスラーム
第4章 ヨーロッパの中世盛期
第5章 ルネサンスと宗教改革
第6章 啓典の民
第7章 戦争と黄金時代
第8章 北アメリカの植民地の図書館
第9章 黎明期アメリカ合衆国の図書館
第10章 図書館運動
第11章 知識の整理
第12章 図書館、図書館員、メディアセンター

付録 世界の図書館
図説図書館の歴史(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「本を読むデモクラシー」宮下志朗 刀水書房
「ヨーロッパの歴史的図書館」ヴィンフリート レーシュブルク 国文社
「世界の図書館」徳永 康元 丸善
バチカン秘蔵資料がインターネット上に公開
"LUX IN ARCANA"-THE VATICAN SECRET ARCHIVES REVEALS ITSELF
「図書館読本」本の雑誌社
魔女と錬金術師の街、プラハ
ストラホフ修道院図書館の映像
大英図書館、シェークスピア作品の原本画像をネットで公開
「物語 大英博物館」出口 保夫 中央公論新社
posted by alice-room at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック