2005年03月28日

「魔女の鉄鎚」ジェーン・S ヒッチコック 角川書店

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内容は、稀覯本コレクターの医師がとある書物を入手したことがきっかけにして、医師が殺され、その本だけがいつのまにやら書斎から姿を消す。父の殺人事件を追う一人娘がその本の持つ、歴史的宗教的価値を知っていくにつれ、その身に降りかかる暗黒の秘密結社による陰謀の魔の手・・・。果たして結末やいかに?

いやあ~、懐かしい勧善懲悪のドラマみたいですね。仮面ライダーとかでやってもいいかな?悪の秘密結社がメインだし。基本的なストーリーはかなり安っぽい。しかも全くのひねりが無いうえに、ラストが相当にお粗末で二流の推理小説でペーパバッグもの、ってところでしょうか。だって、世界にまたがるような大組織のくせに、たかが小市民且つ、人間としても矮小なタイプのヒステリー性女性を扱い兼ねるなんて、どう考えても話に無理があるなあ~。

この本は以前読みかけたことがあったんですが、その時はなんかつまらなかったので半分ぐらいで挫折したんです。なんでかなあ~って思っていたんですが・・・。今回新たに入手して読んで、何故読了しなかったが分かりました。ストーリー的なものを別にしても、主役である父の死の謎を追う娘がどうにも我慢できないほど、嫌いな性格で描かれているんです。これほど嫌悪感を催させる主人公も少ないのでは?というくらいイヤ。

まず、潔癖症なくせに、時によっては尻軽で、さらに二股をかけてプラトニックなものまで入れると三股をかけています。そのわりに中途半端に善人ぶるし、カトリックなのに教会を疎んじるという、人として一番信用できないタイプ。明らかに以前はやったウーマンリブ運動に共鳴していそうな、思慮の浅いフィミニスト路線。学歴はあるが、本質的に無知で頭の回転はそれほど切れなさそう、おまけに強情で多情タイプ。いやあ~辟易しますね。

ちなみに悪役の方じゃないですよ、これが主役なんです。NYのオフ・ブロードウェイで舞台の脚本を書いている女性作家さんの作品だとこんなもんなんでしょうか?正直ガッカリです。そんな女性に運命の女神を見る男も男で、思いっきり身を挺して女性を助ける騎士として描かれています。偏狭な平等主義者の小説ってとこでしょうか。(私の偏った感想にしても、それ以上に本書は偏った思想を感じます。意図的に狙っているのでしょうが、嫌悪感を覚えます)

こんなに嫌いなんですが、小説的には途中までかなり惹き込まれてしまいます。それは背景たる道具立てがいいんですねぇ~。ネクロマンシー(死者復活)や悪魔を呼び出せるという魔法書が、まさにこの話のキーになる存在。しかもそれにはテンプル騎士団の○○が隠されているとも・・・。また、魔女裁判の純然たる裁判手引書である「魔女の鉄槌」を今も忠実に信奉し、実践する謎の秘密結社。バチカンにあるという、特殊な種類の本ばかりを集めたという秘密図書館。元バチカンに勤めていたという怪しいオカルト専門の稀覯本書店の店主。どれもどれもが、私の関心を惹いてやまないんですもん・・・悔しい、この小説嫌いだけど、読了せずにいられなかったし・・・。

要素的には相当いいし、部分部分はしっかり調べて書かれているのが分かるんですが、それが有機的に結びついていかない。バラバラの断片的な知識のみで、それが絡み合って素晴らしい作品になっていかないんです。途中まではグイグイ引きずりこむ魅力があるんですがねぇ~。どこまでが必要か分かりませんが、性描写もくだらなくて陳腐な売れ線狙いでむしろ唾棄すべきノリに感じました。そんなことに頁をさくなら、もっとテーマを掘り下げてくれてもいいのに・・・。

魔法書と魔女の鉄槌に関しては、知識的にも十分に面白いですが、それ以降の小説としての部分は2流以下だと思いました。これが売れたというのは・・・まあ、嫌らしいまでのバチカン批判が受けたのかな? どちらにしても前半のみで終わって欲しい作品でした。後半はヒドイ内容でした。もう読まなくていいなあ~、コレ。

ただ、個人的にすっごく感銘を受けたのが、ココ。
「・・・・・魔法書に関する限り、そっくり同じものというのは存在しません。製本業者がそうしたんです。余分なページをはさみこむ、或いは抜き取る、または印刷された本文のそこかしこに手書きの単語を加えるとかして、どれもがこの世で一冊きりの本になるようにしてあります。・・・・・」
この部分読んで、即座に映画のナインズ・ゲートを思い浮かべてしまいました。やっぱ、コレですよコレ!この世に一冊の本というアイデアが素晴らしいですね。あの映画では、悪魔との共著でしたが。また、教皇の名前がこの手の本に使われているのもそそられます。聖なるものと邪なるものは、両極端でありつつ、ある意味一番近しい存在でもあるらしいですし。

もう一度、主人公変えて、ストーリーも練ったうえで同じ舞台で書いて欲しいなあ~。パーツ的にはいい素材なのに。全体では、読む価値を著しく落としてしまっている一冊でした(ちょっと憤りを覚えてしまい、感想としては冷静でないかも???)。特に最後のラストが大いに不満!あまりにも現代的な小説に仕立て上げられてしまい、せっかくここまで引っ張ってきた怪しげな味わいある雰囲気に、水を差し、興ざめなものにしてしまっています。やっぱ、もう読まないな、この本。メモしておきたい事項はいくつかありましたが・・・。

魔女の鉄鎚(amazonリンク)

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バチカン図書館(英語) 写本があります(満面の笑み)
posted by alice-room at 15:26| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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