
具体的に言うと、ダ・ヴィンチ・コードに出てくる背景的なもの(マグダラのマリアに対する教会の姿勢、ヨハネが教会から不当に軽く扱われている、シオン修道会等々)に焦点を当てて、あれやこれやと百花繚乱のごとく、仮説を紹介してくれるんですが…説得力が無い。
それもそのはず、議論をするんだったら、誰もが納得できる事実を積み上げていき、仮説を構築するか、或いは事実の積み重ねで仮説を実証していくかの方法があるわけ(演繹法、帰納法ってやつ)ですが、この中ではそういった手法がとられていなかったりする。可能性があるというだけの推測やある有力な学者の論文の主張から、といった実体のない仮説(虚構?)のうえに、仮説を積み重ねて屋上屋を重ねるような説明が随所でなされている。
当然、それらの前提となる根拠はほとんで示されていない。
もっとも、ある程度この話題が好きで、関連本を読んでいると分かる話題も非常に多く、そうした人にはあれにはこういう解釈もあるんだ、なるほど~とか肯けるものもあるんですが、それって対象が違ってない?たかだか一小説の解説(のはずの)DVDを見るのに相当量の前提知識を要するのって完全に間違っていると思う。普通の人がこれを購入して見たら100人中、95人は確実に無駄使いしたと思うでしょう。だって、これを見ることでダ・ヴィンチ・コードがよりよく分かったり、楽しめたりするのではなく、果てしもなく広がる疑問の中で????を永遠に繰り返す事になるでしょう。買う前に一度レンタルして内容を一度確認することをお薦めします。
だって、冒頭はいきなりマトリックスのノリですよ。で、続いて出てくるのはこのDVDのプロデューサーでダ・ヴィンチ・コード便乗本を書く一方、超常現象とかを扱う雑誌「フェノミナ」の編集長もしているサイモン・コックの顔が大写しに。すっかり専門家気取りであちこちの本に書かれていた情報(モドキ)を説明して頂けます。しかも、このDVDはほとんどがこの人と 「マグダラとヨハネのミステリー」の著者ピクネットとプリンスの3人のインタビューばかり。最初だけかと我慢してたら延々と出てきて、最後まで引っ張るんだもん。苦痛というか見ていてイタイ。
映像はたまに出るんですが、ほとんどがインタビューで彼らの対談ばかり。なんの為の映像なのか不明。自意識過剰の目立ちたがり屋さんなのかなあ~としか思えません、サイモンさん。さらにピクネット女史は、全身が黒づくめでまるでサバトに出掛ける魔女のようないでたち。おまけに根拠無しの自説が、無謬の真実かのようにとうとうとご説明されるそのお姿は、まるで狂信的などこぞの信者のよう。見ていて段々怖くなってしまいましたもの、私。
内容的には、ある程度は知っていることも多かったですが、ヨハネ絡みのことはあまり知らなかったので興味深いのも結構多かったです。但し、その根拠があやふやなのは変わりません。仮説というより、それ以前のような感じだったのが、やはり残念!
基本的にこのDVDはダ・ヴィンチ・コードファンの為というよりは、ダ・ヴィンチ・コードマニア(オタク)の為のオタク入門書といった程度かな?欧米のサイトやブログによくある陰謀マニアの特殊な嗜好の持ち主向き。普通の人は、ちょっと説明されただけでは十分に理解できないと思うし、タイトルからするとかなりおかしい内容です。製作サイドが趣味に走って、ついでに便乗して儲けられれば幸いという姿勢がチラホラ(私の偏見でしょうか?)
で、唯一良かったのがロスリン礼拝堂。これは初めて映像として見たんですが、すっごく面白そうな所です。話しには聞いていましたがあの奇妙な彫刻は一見(必見?)の価値有り。私の絶対に行ってみたいリストに入れました! ただ、惜しむらくはTBSの世界遺産を作っている人が一人でも混ざっていたら、この100倍以上素晴らしい映像が撮れそうだと思われたこと。このDVD映像も下手です。
レンヌ=ル=シャトー&突如金持ちになった神父ソニエールにも触れていて、映像もありましたが全然使えない感じ。映像が主体のDVDで何故、インタビューばかりなのか、疑問が果てしなく続く・・・。テンプル騎士団についてもさらっと述べていたが、内容はほとんどなく、触れるだけ無駄のようでした。ちょっとした関連本にその一万倍も詳しく書かれています。
あっ、でもシオン修道会に関しては、サイモン・コックス氏は実在するような説明をしていましたが、他の方ははっきりと捏造と断言していたり、また別な人は、存在するかのような説を挙げたりと、対立する見解も述べていて良心的であり、好感が持てました。でも、根拠が示されないのは変わりませんが・・・。まあしょうがないかな?サイモン氏は「神の刻印」で有名なハンコック氏と一緒に仕事をしたこともある方ですから、胡散臭いのは筋金入り(?)でしょうし。
でも、本当にもっとダ・ヴィンチ・コードを楽しめるような意味での解説DVD出てこないですかね?さまざまな仮説をもっと整理して、事実を積み重ねて分かる所と推測しかできない所を明確に分けたうえで、説明してくれればいいのに。謎に満ちた歴史的な風景や建物、古文書とかをしっかりと丹念に映像化すれば、余計な人物なんて映す必要ないのに・・・う~ん、残念です。それっぽいものをDVDに期待していたのに見事に裏切られてしまいました(涙)。心の底から思うんですが、誰かそういう作品を作ってくれないですかねぇ~。お金に余裕があれば、全部自分でやりたいぐらいですが、カメラマンが必要だなあ。求むボランティアカメラマン、な~んてね。
ダ・ヴィンチ・コードの謎(amazonリンク)
関連ブログ
「ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く」サイモン・コックス PHP研究所
「マグダラとヨハネのミステリー」三交社 感想1
関連リンク
ロスリン礼拝堂(英語)
レンヌ=ル=シャトーの謎
テンプル騎士団