2005年03月31日

「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社

本の表紙出版している新潮社のサイト

大聖堂関係は結構好きで何冊か本も読んだし、写真集も見ましたがコンパクトな本なのにこれでもか、これでもかと素晴らしい写真が入っているのは初めて!ちょっと感動しちゃいました(ウルウル)。勿論、実際に行って経験しない限り、ゴシック大聖堂の持つ、あの独特な空間美・空間感覚・ひいては世界観まで感じさせるような「神の意思の現われか?」とさえ、非キリスト教徒の私に感じさせる感動は伝えようがないが、一度でも経験したことのある人ならそれを呼び起こすきっかけになる、そんな本です。

フライング・パットレス

大聖堂の建築に関する知識も、分かり易く(それでも結構、難しいけど)図示して書かれていて勉強になるし、何よりも大聖堂の空間をとってもうまく写真として切り取っている。構図がすごくうまいと思う。また、ポイント、ポイントごとに彫刻や飾りについてもいいものを選んで撮っているし、説明がイイ! 専門家の木俣氏のは正直言って単なる説明に過ぎず、読ませる文章を書くという点ではイマイチなのが玉に傷だが、編集者をされていた都築氏の文章はやはりうまい。何よりも率直に、大聖堂を目の当りにした時の感動を表し、思わず自分の記憶にある感動とオーバーラップして大変心を動かされた。なんか、写真見て文章を読んでるだけで感動が甦ってくるカンジ。

gothique1.jpg

まさに目で楽しみ、目で理解する世界(秩序)。天使や悪魔や怪物が、そこでは生き生きと息づいていて人々と共に生活しているのを感じる。パリのノートルダムのガーゴイルもいいが、プラハの聖ヴィート大聖堂も良かった!これには是非行きたいと思っていたアミアンやサン=ドニ、シャルトルの大聖堂も採り上げられている。いやあ~もうヨダレがジュルジュルでそうなくらいに、私のツボにはまってるかも。この下から仰ぎ見た神の神聖な空間感覚がたまらなくスキ。

ステンドグラス「ソロモン王」

薔薇窓の美しさもさることながら、ステンドガラスの読み方もすっごい為になった。実際に信者が見易いように下から上へ、左から右へ、ちょうど漫画の読み方の逆というのは知らなかったなあ~。今まで漠然と見るので終わってしまっていたのに…。

それ以外にも塔には、自分の足で登って見なければというのは、まさに私の持論でもあり、すっごく共感できる部分。私もどこの国に行ってもきちんと歩いて上ったもの。サクラダ・ファミリアしかり、フィレンツェのジョットーの塔しかり。何でも自分の五感を使って体感しないと、それはモノを自分のものにできないカンジというのかな?うまく表現できないけど…。逆に言えば、まさに登る為のものが塔であり、京都の南禅寺の大門にも登ってみないことには、何も理解できないのと一緒かな(どんな例えだか?)。

でも、これは大聖堂好き(いるのかそんな人?には、押えておくべき本ですね。でもこれ見てるとまたフラフラと旅に出たくなるなあ~。今年はそんな暇ないのに…。
【目次】
プロローグ ゴシックを味わうために 木俣元一

アミアン AMIENS Cathdrale Notre-Dame ようこそ、ゴシックへ
サン=ドニ SAINT-DENIS Basilique de Saint-Denis ゴシック生誕の地は王家の墓所
シャルトル CHARTRES Cathdrale Notre-Dame 800年前の巨大タイムカプセル
ランス REIMS Cathdrale Notre-Dame 聖処女ジャンヌは大聖堂を目指す
ストラスブール STRASBOURG Cathdrale Notre-Dame アルザスに咲いた哀しのバラ
ボーヌ BEAUNE Htel-Dieu 施療院に秘められし
ファン・デル・ウェイデン
ディジョン DIJON Claus Sluter 中世屈指の彫刻家 リューテルに会いに
ブールジュ BOURGES Cathdrale Saint-tienne 三層式の聖なる空間
ヴァンドーム VENDME glise Abbatiale de la Trinit 燃えあがるゴシック最後の炎
中世のパリをもとめて GOTHIC in Paris 都築響一
ゴシック美術談義 木俣元一

中世美術を見るヒント 木俣元一
1 ゴシックの大聖堂はこうなっている
2 ステンドグラスを読んでみよう
3 天空へのらせん階段
4 マリア様はどう変わったのか?
5 フライング・バットレスの離れ技

旅案内 MAP & GUIDE
パリ・ゴシック・ガイド
本書で紹介したゴシックたち
とんぼの本 フランス ゴシックを仰ぐ旅(amazonリンク)

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posted by alice-room at 04:30| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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