2006年11月13日

「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房

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ゴシック建築も興味深いのですが、それに先行するロマネスク美術もまた知れば知るほど面白かったりする(笑顔)。

ロマネスク彫刻が写実主義を否定して人間の概観の中に宿らないものの美、精神的な美を追求したものであると書かれているが、物質的なものを通じて人が神の国へと到達する、としたゴシックとの対比を考えるとなんとも対称的である。

また、シャルトル大聖堂の西正面扉口の人物円柱についての解説は、ロマネスク彫刻のもっとも純粋且つ頂点であると同時に、ゴシック彫刻のまさに始まりという重要な意義を有するものであることを知りました。

お約束ともいえる<黒い聖母>もしっかりと出てくるし、著者の「シャルトル大聖堂」の本と完全に内容的にはかぶってしまっていますが、何度も読むうちにようやく理解できるものもあり(私の理解力が足りないのでしょうが)、大変勉強になります。

これも読んでおいて間違いないでしょう。ちょっと睡魔に襲われることはありますが、複数の本を読むことで同じ内容であってもそういう意味であったのかと納得させられることが多々あります。一見無駄なようでも頑張って読みまくり、メモしまくってみましょう。絶対に理解は深まると思います。

だって今日、改めて「スティグマータ」(映画)を見直して、最後の最後にしっかりとトマス福音書を明示して説明しているのに気付きました。なんども見ていたのに、本を読むまで全然気付いていなかった自分のお間抜けさにビックリしてしまいましたから。

人は見ようとしないものは、見えていても認識しないということを改めて実感しました。これって、全てのことにおいて当てはまりそうです。
【目次】

 1世なるものの表現とキリスト教美術ー芸術の二大根源
 2地中海文明圏における表現
 3中世美術と現代ー中世美術の二元性

Ⅰロマネスク美術とは
 1一般的特徴
 2ロマネスクへの道ーその語源
Ⅱロマネスクへの道ー聖堂建築の場合
Ⅲ「神の国」の実現ーロマネスク聖堂建築
Ⅳ天国への門ーロマネスク聖堂扉口彫刻
Ⅴロマネスク扉口彫刻(タンパン)の図像学
 1多様性から統一性(統合)へー図像学的側面
 2ロマネスク扉口彫刻の多様性
Ⅵロマネスク彫刻の形態原理ー聖堂建築が提案する「枠組」
Ⅶロマネスク聖堂壁画の問題
 1ロマネスク壁画の図像配置
 2ロマネスク聖堂壁画の技法とその表現
 3ロマネスク聖堂の特徴
Ⅷ<聖母子>彫刻と<黒い聖母>の謎
Ⅸロマネスクの唐草模様
Ⅹ異教美術の遺産
ⅩⅠロマネスクからゴシックへーサン・ドニ修道院長シュジェールと新しい美意識

おもな聖堂所在地
参考文献
あとがき


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「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「黒い聖母」柳 宗玄 福武書店
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
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「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
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posted by alice-room at 00:30| 埼玉 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんだか時間差ですが連投みたいですみません。
つい先日Nuechatelという町に遠足に行きました。
聖コレジアル教会というのがなかなか良かったんです。
12世紀に建てられたもので、後期ロマネスク~ゴシックだそうです。
中で天井とかみるとゴシックかなあとも思えます。
(このあたりの乏しい知識はケン・フォレットの「大聖堂」で仕入れました・笑)
どちらかというと地味系ですが、私には非常に好ましく思えましたね。
スイス国内の遠足はあまりしませんでしたが、けっこういろいろあるものです。
因みにここの美術館にはアンカーの傑作があります。それほど興味のある作家でもないですけれど、本物は良かった!
Posted by OZ at 2006年11月13日 18:57
やっぱり実際に見れるのはいいですよねぇ~。ロマネスクやゴシック建築は、絶対にその場で見ないとですよね。写真は文章では、こればっかりは伝えることできませんし。羨ましい。

>因みにここの美術館にはアンカーの傑作があります。
すみません。私はよく知らないのですが、どのような作風の方でしょう? 私って偏った知識しかなくて・・・(アセアセ)。
Posted by alice-room at 2006年11月15日 01:00
http://4travel.travel.msn.co.jp/e/msn/traverler/4nobu/album/10098068

こちらでヌシャテルの美術館のレポートがあり、中でアンカーの絵もみることができます。
写実的なきれいな絵です。
パリで長いこと働いていたにもかかわらず、パリの画はありません。故郷の村の市井の人々が主なテーマみたいです。
写実画はあまり興味なかったんですが、年をとってきたら、いくら芸術でも汚いのは見たくなくなった、というのが本音のOZでした(笑)
Posted by OZ at 2006年11月15日 08:40
連投すみません。
スイス国内ってあまり動かなかったんですが、
けっこういろいろあるもんです。
ドイツ語圏からフランス語圏に行くと雰囲気も全く違いますし、お手軽海外旅行気分にもなってなかなかです。(笑)
そうですね、ゴシック建築手じかに観られるのはいいです!でも、年とって(再び!)温泉の方が自分の中では価値が高くなったような・・・・・
Posted by OZ at 2006年11月15日 08:44
OZさん、情報有り難うございました。あ~なんかいい感じですね。まず雰囲気が良さそう(笑顔)。私は、未だに写実よりも宗教画とかの怪しげな(?)方が好きかもしれません。

スイスって、つぶれる前のスイスエアーを使っていたときに経由地でチューリッヒ空港に寄っただけで降りたことないんですよ~。ただ、日本から行くときにヒマラヤ山脈かな、そこを抜けるときに非常に美しいことだけ印象に残っています。スイスも行ってみたいかも? ドイツも行ったことないし、行きたいところはまだまだたくさんあるなあ~。その前にシリアかな?スペインの巡礼も行きたいけど・・・。

温泉もいいですよね。なぜか、明日、温泉に行く予定ですが・・・日帰りですけど。道楽者の私です。温泉も旅行もどちらも捨てがたいですネ。

Posted by alice-room at 2006年11月16日 02:47
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