2005年04月07日

「マグダラとヨハネのミステリー」三交社 感想1

magdra.jpgとにかく、本の厚さに比して盛り込まれた情報量は莫大です。とにかくこれでもかっていうくらいの情報が積み込まれています。おまけに整理されていないのと各種文献等からの手当たり次第の引用が相俟って、分かりづらい。意味が分からないのではなくて、個々の説明で著者が言いたい事自体は分かるのですが(それが合理的か否か、真実であるか否かは別に)、本を通じて何を言いたいのかがいまひとつ明確に伝わってこないのが残念! 

但し、そういう点を除けばとっても興味深いと思います。端的に言うと、ある程度知識があり、好奇心が強い人にはかなり面白いかも?ダ・ヴィンチ・コードのような分かり易さや小説としてのノリは期待できませんが、私は創作として楽しめました。著者達が自称研究家というのは、あくまでも自称なのにご注意! それぞれ基本的にオカルトマニアであって、学者でも研究者でもないので彼らの説自体はなかなか愉快に読めますが、リアリティーという点ではほとんどありません。

それでいて彼らは思いっきり根拠を挙げています。○○の本にはこう書かれている、××の学者の論文には、こう述べたところがある等々。これでもか、これでもかという量で。どこからそんなに探し出してくるんだろう?と本当に驚愕するほどの量の根拠です。自分がしっかりしていないと、「そんなに根拠があるんだ。じゃあ、その仮説は事実なのかも?」って読んでいくうちに思いますよ、きっと!! 私自身もかなりそういう感じになりつつありましたから。

ただ、私の場合はそこで引用される元の文献をある程度、事前に読んでいて内容が分かっているので、そもそもいい加減な妄想で書かれた本(イエスのミステリー)とか、仮説はともかく真実性の怪しい本(レンヌ=ル=シャトーの謎)とかからの引用や仮説を前提にして、あたかもそれが通説や事実のようにして自分の仮説の根拠とする姿勢には、相当疑惑の目で見ざるを得ません。他のブログでも感想をちょっと書きましたが、自己正当化に邁進する狂信者的な側面が見られます。

でもでも、それなのに・・・。
なんか、筋が通っていそうで「もしかしたら?」と思わせてくれるのは、最高の娯楽かも?(分かって読むならば) ダ・ヴィンチ・コードは意図的に真実と虚実を混ぜているように思いますが、この本は著者達が信じているカンジがします。逆にいうとその怪しい情熱が書かせた迷著の一つ。物書きを生業にする人なら、ネタ本としても使えそうな、一冊です。面白いよ〜。

では、いよいよ具体的な内容を少々。マグダラのマリアについては丸々一章を割いて説明しています。イエスの復活を最初に目撃し、伝えた弟子であり、彼らが見出した限りでは、グノーシス派福音書(ナグ・ハマディ文書)でイエスが自分の次のリーダーに選んだのはマグダラのマリアとされている、と述べてます。ペテロじゃないんだって!へえ〜としかいいようがないですね。派閥争いで負けたんでしょうか?で、次にはあの「黄金伝説」から説明している。

ちょっと興味深いのは「黒い聖母」かな?この辺りは、割合正統派っぽいですね。異教のイシス崇拝と聖母マリア崇拝が混交する一方で、性の豊穣を象徴するイシスの代わりが処女性のマリアでは、共感が得られないのでマグダラのマリアと混交していったというのは。それなりに論理的だし、いくつかのまともな本でもそういう仮説は出ていたなあ〜。

あとは・・・。そうだねぇ〜、この本にはありとあらゆるオカルト的な要素詰まってるからなあ〜。あちこちのオカルト本の(パクリ)ベスト版みたいなもんで、シオン修道会やらテンプル騎士団、錬金術、ソロモン神殿、バフォメット等々きりがない。

テンプル騎士団が潰された陰謀の理由が少し面白いかな?内部で秘儀伝授位階制度が行われ、まさにシオン修道会のような中核組織が裏にあり、そこでヨハネ崇拝やマグダラのマリア崇拝が行われていたらしいから・・・というそうです。その根拠の一部にハンコックの「神の刻印」を使う時点で終わってますけどね、根拠(笑)。さらに話が進んで、これらは全てグノーシス主義に基づくヨハネにたどり着くらしい。

そこで聖書に隠された最大の秘密が暴かれる!イエスはヨハネの弟子で後継者候補だったが、内部紛争で分裂して独立した。本来のこの上下関係を隠し、ヨハネを単なる洗礼者として歴史上から抹殺してきたのがポイントらしい。当初あったヨハネ教会を侵食し、圧迫し、蹂躙して横取りしていったのがイエスとその後継者たるローマ教会だそうです。

おまけにイエスはヨハネの弟子である間に、魔術師(ヒーラー)としてのノウハウや性的秘儀も学んでいたそうで、ラザロの甦り(=死者の復活)とかもヨハネ先生のおかげなんだって。そして性的秘儀の司祭(伝授者)こそ、マグダラのマリアという位置付けなんだって。おお〜納得しました、皆さん?素晴らしいですね(拍手)。本の中では、そこをうま〜くもっともらしく説明してくれています。読んでみたい?(笑)

だから一見しただけでは分からないが、イエスも実はグノーシス派の流れを汲む異教の要素が中核だったそうです(ユダヤ人でさえない、とか言ってるし、彼らの話では。魔術を行うのでエジプト人では?と言っています)。 ただ、それは位階とかで下位者には見えないようにしていたから、分からなかったのだし、ヨハネとの差別化を図るための宣伝ではないか?との事です。いやあ〜これが立証できればノーベル章も取れるでしょうね!絶対にないけど。

とっても楽しいfairy taleって、とこですね。実際、面白いもん。思考しないで、与えられた情報だけをうのみにすると・・・。まだまだあるけど、ずいぶんと長くなったので、続きは別のブログで。

マグダラとヨハネのミステリ(amazonリンク)

関連ブログ
イエスを偽預言者、嘘つきとみなす「マンダ教徒」
「ダ・ヴィンチ・コードの謎」DVD 感想
「レンヌ=ル=シャトーの謎」 柏書房 感想1
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想1
「神の刻印」グラハム・ハンコック著 凱風社
黄金伝説 Golden Legend コロンビア百科事典による
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ
posted by alice−room at 02:22| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 【書評 宗教A】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
arice-roomさん、うざいくらいこんにちは。
イシス、テンプル騎士団なんかの話が出てたので・・・。
「フーコーの振り子」読んでみると面白いと思いますよ。これでもかこれでもかって感じでカルトの世界をぶつけられて、嫌でも知識が身につきます。
小説ですし(←ストーリー性のない話は嫌い・・・)!!
文庫で手に入りますし、カルトの文献を手に入れるヒントにはなると思います。

それにしてもalice-roomさんのおかげで、「ダ・ヴィンチ・コード」死ぬほど読みたくなってきました・・・。
Posted by 雨宮 at 2005年04月11日 00:18
雨宮さん、たくさんコメント有り難うございます。
「フーコーの振り子」ですかあ〜気になるんですよねぇ〜。すっごく…。薔薇の名前も本良かったけど、ちょっと気合入れないとエーコ氏の本って大変だからとまだ読んでないんですよ。お恥ずかしいことに。
改めて意識しちゃいました。ちょっと探してみて読んでみますね。情報有り難うございます。
Posted by alice-room at 2005年04月11日 05:12
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