
冒頭から値段の話ばかりで恐縮ですが、黒江氏の本ってどれも高い!半端じゃなく高いです。その代わりに非常に大判の大型本で写真がこれでもかって入っています。もっとも、ステンドグラスに関してはどんなに大きい素敵な写真があっても実物の素晴らしさの1%にも及ばないとは思うのですが、でも、見るならばやっぱりこういう本が間違いなくイイです。
本書は中世以降のゴシック大聖堂などに作られたステンドグラスを中心にしているが、中世のみに限定されることなく、最近の作品までを視野に入れた幅広い観点からステンドグラスを採り上げている。
しかも、オーソドックスなサン・ドニ修道院長シュジェール以来のゴシック建築におけるステンドグラスの歴史的・宗教的意義付けをも踏まえてきちんと解説し、同時にそこに描かれた図像学的な説明や技術的な説明まで過不足なくされている。ステンドグラスに関していうならば、私が知っている数少ない本の中では一番総合的且つ包括的に捉えた本であり、ステンドグラスの基本書的な存在と言ってもいいのではないかと思います。
目次を丹念に見てもらうと、本書の内容をいくらかなりとも伺い知ることができるのではないかと思いますが、現代的な課題であるステンドグラスの修復にまできちんと解説してくれているのは、正直あまりありません。
西欧各国でどのようにしてステンドグラスが用いられ、どのような歴史的・社会的状況下であったのかなど、実に興味深い限りです。
私は、あくまでもシャルトル大聖堂に代表されるフランスのゴシック建築のステンドグラスについて調べるという目的があり、そこに重点を置いて読んでいたのでそれ以外の部分については、量が多いのでざっと流して読みましたが、ステンドグラスについて知りたいならばまず本書にあたるべきでしょう。現代的なインテリア装飾としてのステンドグラスには、私の場合、全く興味がありませんし、その意味では本書も役に立ちませんが、中世のステンドグラスについてなら、本書は外せません!!
購入するのは仕事で使うなら別として、ちょっと難しいでしょうから、是非図書館で探して見てみて下さい。きっと満足がいくものだと思いますよ~(満面の笑み)。シャルトル大聖堂についても「大聖堂の時代」のところで大きく何頁かにわたって採り上げられていました。
ステンドグラス(朝倉出版)~メモ
勉強になる点が多いのでいつものように抜書きはこちらに。
【目次】Stained glass(amazonリンク)
ステンドグラスの世界
素材としてのガラス
古代のガラス
芸術的な形のはじまり
教会堂とそのプラン
建築的挑戦
光による絵画
石の綱
円とバラ窓
霊感の源泉―聖書
霊感の源泉―聖と俗
善と悪の霊
象徴の言語
聖者とその表徴
キリストの家系樹
キリストの顔
寄進者―自己保身と信心
ガラスの縁飾り
自然の世界
紋章学の伝統
ガラスの紋章の芸術
時代の反映―建築
時代の反映―ファッション
変貌する肖像芸術
ステンドガラスの捧げ物
芸術と芸術家
ステンドグラスの歴史
11、12世紀 大聖堂の時代
13世紀 ゴシック芸術の時代
14世紀 騒乱と改新の時代
15世紀 過渡期
16世紀 衰退の時代
17、18世紀 不毛の歳月
19世紀 復興の時代
20世紀 広がる地平の時代
ステンドグラスの窓の製作と修復
関連ブログ
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
他にもかなり分厚い本がありましたけれど、持ち上げるだけで気が萎えてしまった位の本でした。
友人がステンドグラスの工房で働いていたのですが、この世界中々厳しそうです
大変なんですね、やはり生活していくのは。古くからある職業であってもそれぞれの時代を生き抜いていくのは、技術的な難しさとは別な困難さがありそうですね。う~ん。