
カタリ派について書かれているというので、amazonで見るとマルコ・ポーロや聖杯まで出ているので興味津々で読み始めました。ただね、ご存知のように坂東さんのってこう日本の情緒というか、風土に血縁的なドロドロしたものがべったりついたものが多いでしょう。読む前から、それが気になっていたんですよねぇ~。さてさて、どうだったかというと・・・?
粗筋から言うと、これは前半と後半でかなり綺麗にサクッと分かれます。前半は元王朝に(中国)に仕えていたマルコ・ポーロ一行が苦難に耐えてヴィネツイアにようやく戻ってきたところから始まります。そして、この本の主人公は数奇な運命を経てこの一行と共に元からついてきた奴隷なのですが・・・。
大金持ちから犯罪者まで経験したこの奴隷は、非常に聡明であり、それ故、あえて何も知らないように装いながら仕えています。そしてある時、偶然にもとある秘密の品を手にしてしまうのです。それこそが、あの伝説の聖杯!!
やがて運命の導くままに奴隷はヴェネツィアを逃れ、とあるカタリ派の聖地へ・・・。そして明かされる聖杯の秘密とは?
確かに読ませるだけの力量を持っているとは思うんです。おまけに著者はこれを書くためにイタリアに滞在していたんだって・・・。そっ、それでこれか~い?(つ、つい心の声が)
なんていうか、これは舞台が海外であっても、本質的に「四国(死国)」であり、粘着質系の日本の小説以外のなにものでもない。個人的にはもう少し陽気なイタリア人を期待したいところなんですが、ベタベタし過ぎで辛い!良くも悪くもこの人のスタイル(文体)なんだろうなあ~。主人公も内省的で、思慮深いんだけど、精神的に枯れてる。いちいち心の中のことを丹念に書くものだから、本の世界観が非常に澱んでいるんだよねぇ~。これをどうとるかで評価が変わるかも?東洋的に言うと悟りを開いたものに近いところがあるから。
ストーリーもしっかりしてるんですよ。構成力や心理描写等も水準以上だと思うんですが、ある意味で絶対に女性にしか書けない作品でもあります。気付かれる人はすぐピンときそうですが。宗教に関するものは、興味深いものもあるけど、オーソドックス過ぎるなあ~。禅問答とかの公案の方が、僕は好きだけど。
以降、【ネタばれ有り】
ぶっちゃっけ、ダ・ヴィンチ・コードと同じオチです。あ~言っちゃった!!こっちの方が早いですのでパクリじゃないです。でも、結論に向けてのストーリーの盛り上げ方が全然違う。っていうか、盛り上がらないままに淡々と結論へ。一応、それなりに納得のいく結論なんですが、ただそこにポンっと、結論が置かれているのでリアリティーが全くないんですよ。それが即ち、読者を驚愕させるとか、怒らせるとかいった過激な反応につながらないんですね(まあ、ダ・ヴィンチ・コードで抵抗力がついてるからというのも一因ですが)。
これは翻訳しても海外で全く売れないでしょう。恐らく、書かれているのが日本人にしか分からない感性で書かれているから。ちょっと前に読んだ「オクシタニア」にも共通するかな?勿論、坂東氏の方が100倍以上もドロドロ粘着質だけど。その一方で「性」に関する捉え方があまりにも正統的で、これ以上ないってぐらいのパターンでのオチになっている。刺激が足りな~い???
と、マイナスっぽい書評のように思われますが、ダ・ヴィンチ・コードを読む前だとずいぶん違ったと思います。こちらが先なら、結構楽しめるかも。でも、それだとカタリ派の説明が足りなくて理解できないかな??? 相当調べて書いているのはよく分かるんですが、いきなりこれ読んでも分からないだろうなあ~。
あとは好みの問題だと思います。「オクシタニア」よりは、面白かったもん。設定が国内だったら、確実に面白いと思うんだけど、海外モノはやっぱりこの人のでは辛いなあ~。という独断と偏見に満ちた、私の感想でした。あっ、でも独自のアイデアもあったから、そういう意味では読む価値が別にあるね。(個人的にこのネタぱくって小説書いちゃおうかな…笑)
旅涯ての地―DOVE UN VIAGGIO TERMINA(amazonリンク)
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中国語に翻訳させていただきたいと思いますよ。
中国でもこの手の作品に需要があるんですね。私は、坂東氏の作品が翻訳される可能性というのは、想像もしたことがなかったのですが・・・。
読み手の受け取り方は、それぞれの国の方によって異なるでしょうし、面白そうですね♪
コメント有り難うございました。