
で、感想はというと・・・。
最初は確かにアーサー王がメインなんですが、想像していたのと違いあまり活躍していないんですよ。むしろ魔術師マーリンがいろんなとこに絡んで陰謀を企み、そっちの方が主役級の活躍してるし・・・。マーリンは何の為に、あんな行動をとるのか理由がいっこうに分からない?おまけに物語の中から、いつのまにか姿消して中盤以降は全然出てこないし、どこいったんだろう?
それよりも気になることが。アーサーの母イグレーヌは前の夫を殺したウーゼル王(アーサーの父)を何の良心の呵責もなく、受け入れているんですがそういうのあり?それと共に、理由も無く殺された前の夫は、無駄死に?騎士道がどうのこうのとか、キリスト教精神がどうのこうのいう以前に人としてどうかと思うんですが・・・冷静に見るとかなり異常な小説ですね。不可解なことが多いです。まあ、日本昔話とかにもあるようなfairy taleにそういう合理的な精神を求めてはそもそもいけないのかな、やはり。
で、「アーサー王の死」というのがタイトルにもかかわらず、アーサー王はただ、主君として存在するだけで何もしてないんだよねぇ~。ランスロットの武勇伝というか英雄伝みたいなんですけど・・・。でもいくら格好いいことして騎士だとか言っても、主君の妃に手を出して騎士の中の騎士というのもよく判んない論理。それでいて、意図しない女性に迫られても僕は、手を出しませんよ~というのが納得いかないんですが・・・。光源氏の積極性やどんな女性をも愛する心の広さを学んで欲しいくらいですよ~(狭量な器じゃいけません)
それ以上に、不倫をする王妃ギネビアってそんなにいい女なの?英雄であり、円卓の騎士の中でも指折りの騎士であるランスロットが命をかけて誓う女性であり、天下のアーサー王の王妃だけど、嫉妬しやすいし、短絡的で頭も悪そうな人で立派な良識ある騎士達がみんなギネビアに惹かれる理由が分からない??? 本当に謎の多い小説です。
そうそう、これも読んで初めて知ったんですが、この本の中でアーサー王がローマ皇帝に就任してたりするんですけど。たかだか偏狭のブリテン出身のアーサー王がどうやったら世界の中心ローマの皇帝になれるんだろう・・・。ましてや偉大なるシーザーにより征服されたガリアじゃん(ガリア戦記は名著だった)。ローマが属国に対して、貢物を要求するほうが正当な権利であり、何も逆切れしなくてもと思ったんですけどね。
いろんな意味で興味深い物語でした。そうだ、聖杯についてもここでは断片的に語られているので、メモしておくと。
聖杯には芳香があり、ありとあらゆる傷を癒す力がある。罪のない善人しか見えない。
「えもいわれぬ甘美な芳香に包まれて聖杯が近づいてきた。しかし二人ともすぐには誰がその聖杯を捧げているのか見えなかったが、パーシヴァルには薄ぼんやりと、聖杯及び聖杯を捧げている乙女が見えた。その乙女は完全無垢な乙女だった。あっという間に、二人とも今まで通りに皮膚も手足も健康体に戻った。」
「あれは乙女が捧げている聖杯です。そしてあれの中にキリスト様の聖なる御血の一部が入っているのです。キリスト様に祝福あれ。しかし、罪けがれの全くない善人にしか、聖杯はみえないのです。」
聖杯は狂気を正常に戻す力がある。
「聖杯の祀ってある部屋へ運び入れると、聖杯のすぐわきにランスロットを置いた。そこへ聖職者が入ってきて、聖杯のおおいをとった。すると、聖杯の奇跡と功徳によって、ラーンスロット全快した。」
なんか聖杯関係はやっぱり面白そう・・・。とっても期待しちゃう・・・・。
それなのにさあ~、本当は一番知りたかった聖杯探求がカットされているんだなあ~。チェッ!残念。それでも物凄く量があります。私が読んだのは筑摩書房の筑摩世界文学大系10「中世文学集」ですが、だいぶ時間がかかったもの。でも、これでやっとアーサー王と円卓の騎士の基本は押えられたかも。他の本に出てくる話もきちんと理解できるかも?それはちょっと嬉しいなあ。
聖杯探求の部分だけは、別な本を探しますか・・・。さてさてどの本がいいのやら???
あっ、そうそうもうすぐ映画も公開されるじゃないですか、「キングダム・オブ・ヘブン」。これも十字軍の騎士の物語だったはず、観に行こうっと!
アーサー王の死ちくま文庫―中世文学集(amazonリンク)
残念なことに、量が多いせいだと思うのですが、私が読んだ以上に相当量が省略されているようです。「中世文学集」から更に削って一般向けにしたようです。
関連リンク
アーサー王伝説とケルト伝説
妖精に関するサイト アーサー王についても書かれています
国際アーサー王学会日本支部 こ、こんなのあるんですね!まじに。サー・ティービングが会員名簿にいそう・・・。
アーサー王伝説への第一歩
アーサー王伝説
関連ブログ・・・今回はあまり意味無いです。
キング・アーサー(2004年) アントワン・フークア監督
「聖杯魔団」菊池秀行 実業之日本社