2006年12月08日

「西洋古代・中世哲学史」クラウス リーゼンフーバー 平凡社

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最近、結構はまっているゴシック建築に関連して調べ物をしていて見つけた本。サン・ドニの修道院長シュジェールがゴシック建築を生み出す思想的背景となったものとして”光の形而上学”があったそうなのですが、それを唱えた人物として挙げられているのがこのディオニュシオス・アレオパギテス。

本書では新プラトン主義を引き継ぎ、「アウグスティヌスの思想」という章の中でディオニュシオス・アレオパギテスが紹介されています。以下、本書から引用メモ。
ディオニュシオス・アレオパギテス:

 中世にディオニュシオス・アレオパギテス(Dinysios Areopagites 五世紀末)の著作として重んじられた「ディオニュシオス文書」と言われる一群の著作がある。
 ここではギリシア教父たちの神秘思想が総合され、特にプロクロスの新プラトン主義哲学からの影響に基づいて神秘的神認識の理論にまで深められた。

 「ディオニュシオス文書」の著者については、480年頃活躍し、おそらくシリアの修道者であったということ以外には何も知られていない。というのは、この人物はアテナイの評議会(アレオパゴス)での使徒パウロの説教によって改宗した評議会員(アレオパギテス)の聖ディオニュシオス(「使徒行伝」第17章第34節)の名を擬してその著作を著しており(そのため現在では「偽ディオニュシオス・アレオパギテス」と呼ばれるのが普通ある)、実はこの著者が一世紀の聖ディオニュシオスよりはずっと後の人物であるということがはっきりしたのは、ようやく19世紀後半になってからだったからであう。

ディオニュシオスの思想は強く新プラトン主義的である。万物の根源ないし神は超越的な一者であり、その充溢する善性から万物が成立する。この神について語ろうとする時には、まず感覚的な象徴によって名指すことができる(「象徴神学」)が、概念を用いるならば、一方で神は我々が認識するすべての有限的完全性の起源として、それらを表す概念を用いて肯定的に語ることができ(「肯定神学」)、他方では神は我々が認識するあらゆる有限的な在り方を持たないものとして、それらを表すすべての概念が除去されるという形で否定的に語られることが可能である(「否定神学」)。

 この中では否定神学が神の語りに最もふさわしいものであるが、端的には精神の脱自的な純粋の超越によって、沈黙のうちに認識が達し得ない隠れたる神へと神秘的に一致することこそが、究極的な道なのである。人間が神へと近づくためには第一に「浄化」を経て感覚的なものに対する欲求と認識におけるあらゆる執着から開放され、第二に「照明」の段階に至って実在の英知的原像を直観することが必要であるが、最後には「一致」の状態において思惟の次元をも超えて神の闇の内に入っていき、認識を超える仕方で完成に至るのである。

 ディオニュシオスの思想は東方教会の神学を規定し、また西方の十二世紀から十四世紀までのスコラ学や神秘思想、さらに十六世紀のスペイン、十七世紀のフランスの神秘思想に深い影響を与えていくことになる。
ここで説明されている第二の「照明」の段階が”光の形而上学”につながるのでしょうか?う~ん、私その辺について不案内でよく分からないのですが、「実在のものを通して神の世界に至る」という点では対応しているように思うんですけどね。

後ほど、他の本にも当たって調べてみることにしようっと。調査課題として保留。

他にもスコラ学とはそもそもどういったものかとか、ギリシア以来の哲学がキリスト教との間でいかに整合性を持ちえるようになっていったかなど、興味深い内容が書かれています。

ただ、正直私にはいまいち分かりにくい。これって放送大学の教材が元だという話ですが、だいぶレベル高くないかなあ~。表面的には読めば分かるのかもしれませんが、どうしても心底納得いく説明ではないので(紙面の制約もあるだろうし、私の理解力の限界とかね)、もうちょっと知りたい。

ただ、他にも読むべき本があるのでその兼ね合いが難しいなあ~。よくまってまっているけど、私的には説明がまだまだ足りない感じでした。

(注:ちなみに本書は拾い読みしかしてません。哲学史全般には興味ないんで。その程度の感想なので全体を読み通したら感想が変わるかもしれません。あしからず。)

【目次】
古代哲学の誕生
ソクラテス以前の哲学
ソフィストとソクラテス
プラトンの哲学
アリストテレスの理論哲学
アリストテレスの実践哲学
ストア学派
新プラトン主義
キリスト教哲学の起源
アウグスティヌスの思想
十二世紀の初期スコラ学
十三世紀のスコラ学とアリストテレスの受容
トマス・アクィナスの哲学
十四世紀の後期スコラ学
中世の神秘思想と近代への移行
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ラベル:哲学 書評
posted by alice-room at 23:05| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
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