2006年12月09日

「ぼくはこんな本を読んできた」立花 隆 文藝春秋

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本書は田中角栄氏の金脈問題で名を馳せた立花氏が仕事に関連して読む本について書かれたものである。まず、私自身の偏見として立花氏のことを好意的に見ていないのを述べておくべきでしょう。あちこちで名前を見るものの、特に専門もなく良くも悪くもジャーナリスティックな表面的な事象を追いつつ、適当にお茶を濁しているマスメディアの人と思っていました。実際にこの方が出ている記事は、読まずに頁をめくってきた覚えが多々あります。

この点も含めて本書を読んで私が勝手な思い込みをして間違っていることに気付かされました。確かに対象とする範囲は広くとも、それなりの事前準備をしたうえで、ジャーナリズムの持つ良い意味での門外漢としての視点を保ちつつ、しっかりと取材をされたうえで書かれているのだろうと思います。

本書を読破した時点でも、個人的な好悪の感情としては嫌いなのですが、やっぱり凄い人ではないかと思います。著者が書かれている主張(やノウハウ)には、納得のいくものと納得ができないものがありますが、仕事における調査や資料としての本の扱い方には非常に学ぶべきものがあります。くだらない経済紙に書かれているような情報整理のハウツーなんかでは絶対に太刀打ちできない素晴らしいノウハウが書かれていると言ってもいいのではないでしょうか。

およそ仕事でも趣味でも、本を読む必要がある人なら読んで損することはなく、必ずや得るところのある本だと思います。効率良く本を読む事や大量の本を読むこと自体には必ずしも首肯できませんが、知っていてあえてそういう読み方をしないという選択肢ができるので、やっぱり本書を読んでおくと今後の読書生活などに大いプラスでしょう。でも、僕は嫌いですけど・・・ネ。

感情としては複雑なのですが、『読書』それ自体を扱った本としてはこれ以上有益な本は今まで読んだことがありません。一読書人としてよりも、一社会人(一ビジネスマン)として押さえておくべき情報収集のポイントが凝縮されています。

具体的には、書店でパラパラと5分立ち読みすれば、本書の価値が分かると思いますが(分からない方は、本書を読まない方がいいです。合わない本だと思いますので)、いくつか私がまさにその通りと感銘を受けた点なども挙げておきますね。
だいたいどんなジャンルでも、専門家というのはインタビュアーがする質問によって、その問題に関してその人がどれだけの基礎事項を持っているかということをすぐに見抜きます。それでその質問があまりにも浅い、表層的なものだと、専門家というのはものすごくいい加減な答えしかしてくれません。これはもう、呆れるほどいい加減な答えしかしないものです。どの専門かも忙しいですから、愚劣な質問につきあっている暇はないわけです。この人はこの程度の答えで満足するだろうという見極めをつけたら、それ以上のことは時間の節約のために全部省略してしまうわけです。専門的なことを素人にいくら説明しても分かってもらえるはずがないから、余計な説明は時間の無駄と思うわけです。
 ところが質問の仕方をちょっと変えて、こちらがある程度ちゃんとした予備知識をもってインタビューしているんだということが相手にわかるようにすると、答えのレベルがさっと変わります。
これって、まさしくその通り!! 別にインタビューではなくて仕事のときにもこれは当てはまることをどなたも実感としてわかるのではないでしょうか? 私が商談していて、このことを嫌ってほど実感したことがあります。営業マンと話しをしていて、いくつか話題をふってそれに対して的確に答えられない人物には、その後まともな話をしなくなり、決して仕事を発注しないばかりか商談さえ理由をつけて出来る限り回避しようとしましたもん。時間の無駄だから。

また、値段の交渉などの場合だとお互いに更にそれが露骨になります。ある物を購入する場合、その物の材料費・加工費・流通経費・販促費等々まで加味して原価を丸裸にし、相手の利益率まで把握したうえで交渉しますのでいい加減な価格を持ってきたら見積もりに至る前に却下です。まじに。

相手の事情を理解したうえであいみつをとり、最後の最後の支払い段階で判を押す前に更に支払いサイトとキャッシュで落とす。ビジネスの情報戦というのはごく当たり前のこういうことだと思います。

著者の場合、職業柄形が違うわけですが、人と人との交渉や対談とはすべからくそんなことでしょう。形は違えどまさに本質として、押さえているところからして、私は著者を評価しちゃいます。少なくても仕事ができる人であることは間違いないでしょう(まあ、わたしなどが言わなくても分かっていると言われちゃうでしょうけどね)。

実際、著者はインタビュー前に対談相手の著書や関連するジャンルの本を数十冊は読んで基本を理解したうえで仕事をされているようですし、当たり前のことですが素晴らしいと思います。そこまでいかなくても、やれと言われてもしない奴たくさん見てきたしね。仕事できない人だったけど、やはりその人たちは。

そうそう、他にも外国語の習得のところも実に興味深い。4週間あれば、基本のところはマスターできるというのは、まさに真実!! 私は外大に少しだけいたことがあるのですが、あそこは入学して3ヶ月で文法を含む基本はすべて終わりで後は乱暴にいうと、ひたすら本を読むだけ。専門家になるにはその後が大切ですし、長い&長い時間がかかるのですが、基本は本当にそんなものらしいです。

大学で勉強したと言っても、よっぽど真剣に寝食を忘れて学問したのでもなければ薄っぺらな知識など、すぐに身につけるどころか追い越してしまうというのは、まさに実体験に基づいた著者の言葉でしょう。率直であり、また体験から出た言葉は何よりも説得力があります。

他にも学ぶべきところが多いので、是非、本を読むなら一度手にとって欲しい本です。もっとも著者も参考文献や索引は評価するものの、書評には懐疑的なのも私には素直にうなづけます。結局は自分が読んでいいか悪いかしか、評価はないのだから。

ただ、自分の関心のある分野と重なる人で、自分と(大きな視点で)感性的な一致を見出せる人なら、私は書評も役に立つと思うんですけどね。これは著者と異なります。

まあ、他にもいろいろあるんですが、これは読むべき本です。知り合いに嫌いだけど、読んでみろと薦めてみよっと。
【目次】
1 知的好奇心のすすめ
2 私の読書論
3 私の書斎・仕事場論
4 ぼくはこんな本を読んできた
5 私の読書日記
ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論(amazonリンク)


ラベル:書評 ハウツー
posted by alice-room at 17:36| 埼玉 ☔| Comment(6) | TrackBack(1) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさんは立花隆お嫌いですか。
私も特にファンというわけではないので、それほど沢山読んでもいませんが、「宇宙からの帰還」には感動しましたねえ。
彼の書き方なのかテーマなのかはわかりませんけれど、
でも、アメリカでも書かれていなかった着眼点が素晴らしいと思いました。
事前準備はきちんとする人だと思ってました。
それと「臨死体験」
この人は基本的にはパラサイコロジカルな世界は否定派でありながら、それでも一方的に決め付けない姿勢にはすごく好意を持ったし。
この本も存在は知っていましたが、彼に好意的ではない管理人さんのような人でも、他人に進めるほどの価値があるなら一読してみようかと思ってます。
ここへきて本に散在することが多くなってしまいました。
どうしてくれる?!(笑)
(やっぱり他力本願時住職はやめられない)
Posted by OZ at 2006年12月10日 05:41
OZさん、こんばんは。個人的な相性とかの問題かもしれませんが、いま一つ好きになれません。でも、そういうものとは別次元で素晴らしい点がある方だと思います。他の本にも、そういうものがたくさんありそう・・・。う~ん、心情的に複雑な気持ちです。他の本も読んでみたいような・・・読みたくないような・・・???

少なくてもこの本は、私には良い本でした。目を通すべき本の一つと思います。是非、機会があればどうぞ。

ちなみに・・・散財の責任は持てません(笑)。私の場合は、できる限り読んだり、買うのを後回しにして逃れようと努力してますが、なかなか功を奏しません(苦笑)。
Posted by alice-room at 2006年12月11日 19:58
ははは、失礼しました。
でも、ここを覗きだして、かつこのブログから他(Takさんのところ、Lapisさんのところなどなど)のブログにもお邪魔するようになって、欲しい本が増えたのは事実です(笑)
紹介の仕方が上手だからでしょうか。
そして自分が興味がある分野にも関わらず、乏しい知識もまた豊かになって非常に感謝しております。
ちょっと私信になってしまいましたね。
不適当なら削除お願いします。
ここのブログにたどりつけたのは、私にとっては僥倖でした。
Posted by OZ at 2006年12月12日 01:45
OZさん、もったいないお褒めの言葉を頂きましてどうも有り難うございます。ちょっと恐縮しちゃいますね(笑顔)。

でも、私の趣味のままメモしているだけのようなブログでも少しでも他の人のお役に立っているなら、本当に嬉しいです♪ これからもよろしくお願いします。
Posted by alice-room at 2006年12月13日 21:21
はじめまして!こんにちは!
内容がとても興味深かったので、トラックバックさせていただきますm(__)m
Posted by 涼微 at 2007年01月24日 16:39
涼微さん、初めまして。TB有り難うございます。本書は本当に興味深いですよね! いろんな意味で大変勉強になりました。良い所はどんどんマネしていきたいですね(笑顔)。
Posted by alice-room at 2007年01月25日 17:23
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